アメリカの国力が長期低落傾向にあることを、トランプ大統領は貿易赤字の長期にわたる蓄積にあると認識している。
中国への累積赤字の解消に向けては、北朝鮮の核武装の完全放棄問題をからめて、中国政府の出方を見るために揺さぶりをかけている。
またEUに対しても、膨大な貿易赤字の削減を図るために、関税の引上げを検討して揺さぶりをかけ始めた。
EUは対抗措置として、同額の関税引上げ策を打ち出したが、どのような展開になるかは、まだ予想もつかない。
トランプ大統領は、この貿易赤字の削減交渉の促進策として、今回の欧州歴訪を機会に、NATOの軍事費負担の不公平を持ち出した。
アメリカの負担に比較して、NATO諸国の負担を増やし、国家予算に占める軍事費の負担比率を大幅に引き上げるように、強行に主張した。
この措置は、EU諸国にNATOの将来と負担責任の議論を引き起こして、将来的には、アメリカがNATO体制の主役から退出する算段である。
特にEUS諸国を牽引するドイツに対して、経済的にアメリカを窮地に追い込み、EUの安全保障にはアメリカに負担させる不合理を主張した。
現状のNATO体制を維持するつもりならば、ドイツが応分の経費負担をするべきである、との合理的な論法である。
その気がないなら、アメリカはNATO体制の経費縮小に向かうのだ。