穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ベンスン殺人事件

2015-06-14 06:51:31 | 犯罪小説

創元文庫、半分ほど読んだ。いいんじゃないか。なぜこれを本格物というのか分からない。「本格」と言うのは後付けのレッテルなのか。たとえばハードボイルドと区別するために。

チャンドラーに「簡単な殺人法」という文章があるが、その基準でいくとベンスンは合格である。拳銃が凶器だから。 

不必要にペダンチックだが、読飛ばせばさして気にならない。叙述はしっかりしているし、話の運びもよろしい。

まだ半分しか読んでいないが、これってひょっとして「密室もの」?ヴァン・ダインも馬鹿みたいに最初から密室だとか不可能犯罪とか叫ばないから分からないが。帯やインターネットの評でも密室とは書いていないようだが。 

ヴァン・ダインはクリスティを酷評したそうだ。どういうふうにか、読んだことはないが、クリちゃんよりは数段勝る作家であることは間違いない。デビュー年次は6年しか違わない(栗のほうが先)が。

どうも小説にも旬というものがあるらしい、あらゆる芸術のジャンルには旬という物があるというのが私の従来からの自説である。たとえばオペラならせいぜい19世紀半ばまでとか、ま、これは個人の嗜好の問題では有る。

ハードボイルドも旬は20世紀前半だったんだろうな。いわゆる「本格もの」も旬はそのころではなかったか。大体小説というものも盛期は19世紀と言う気がしてならない。アメリカだけはすこし遅れて20世紀半ばまでということだろう。ヘミングウェイもフィッツGもそうだし。理由はつけられないが、小説にも旬があるんだな。

クライムノベルも読むなら100年くらい前の物を集中して読めば外れはすくない。北欧ミステリーは、そうすると、遅れて来た旬ということになるか。

 


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