穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ロンググッドバイ17章のトリヴィア

2017-08-14 23:07:30 | チャンドラー

最初の段落にYou’re not even betting table limit four ways on Black 28.

とある。その次の文章にNick the Greek 云々とある。いずれも頼りない手掛かりで人探しをする徒労感を表現したものだが、清水訳ではこのところは全く訳されていない。

 Nick the Greek というのはクラップの名人だったらしい。村上訳によると。さて村上訳によると最初の文章は「出る当てもない目にせっせと金を張っているようなものだ」とある。意訳としては間違っていないと思うが、僭越ながら私は「大穴に(確率の最低の目に)目のくらむような大金を賭けるようなものだ」と訳したいがどうだろうか。

 いずれの例えもカジノの博打を例に引いているとみると、Black 28というのはルーレットの目だろう。ルーレットで一番の大穴狙いは単独の目に張ることである。28番は黒である。文章通りに訳すと「黒の28にテーブルリミットの上限の四倍も賭けるようなものだ」くらいであろうか。「出る当てのない目」ではない、「出る確率の非常に少ない、したがって当たれば大穴で配当は一番高い掛け方」すなわち一か八かの大博打ということになる。「出る当てのない目」ではない。「出る確率の小さい目」なのである。

 ちょっと引っかかるのはfour waysというところで、four timesならそれでいいと思うのだが、英語力が未熟で自信がない。

 

 

 

 

 

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