穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

群盲、村上春樹を撫でる3

2009-08-05 08:41:06 | 村上春樹

総合小説というのは野暮ったい語感だが、総合小説を目指すと言うんだね。

むかし総合雑誌ってなかったっけ。

村上春樹本人も前述モンキービジネスのインタビューでも言うし、いまここで俎上に上げている本でも何人かが言っている。

総合小説とは、村上の言うところでは、社会の様々な人の意見を小説に取り入れて、全体として読者に時代の感じ(掴み)を与えたいということらしい。本人の言うところではドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟のような小説ということらしい。ま、おなじみの手あかのついた言葉で言えばポリフォニーだな。

それはそれでいい。しかし、この言葉は小説の手法上のアプローチでもある。そう捉えたほうがこの言葉は、彼の作品を見ていると分かり易いのではないか。

つまり、SF風味であり、サスペンス味あり、ハードボイルド・タッチあり、要するにエンターテインメント調のサービス怠りなく、そして寓話風あるいは寓話臭を前面に押し出したものといえる。人物の名前を記号か、記号的なもので表わすのも寓話ならある程度あり、かもしれない。

何種類ものスパイスを入れたカレーライスみたいな、ごった煮みたいなものと言えばいい。それが総合小説だ。

以上が河出書房新社の値1260円也および単行本「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を百ページほど読んだところでの感想である。


群盲村上春樹を撫でる2

2009-08-05 07:56:48 | 村上春樹

「村上春樹1Q64を読み解く」という本には無慮数十人が書いているが、これはモノグラフなの。

本の売り方、宣伝の仕方からすると一般の本のつもりらしいが、そうであれば読むに値する文章は一つもない。

もし、モノグラフとすれば、甘く見て数人の文章が合格かな。


群盲村上春樹を撫でる1

2009-08-05 06:20:42 | 村上春樹

出版前重版決定!! という広告に驚いて書店に走った。「村上春樹1Q84をどう読むか」河出書房新社刊1260円なりである。

これから1260円を回収する。

小生は彼の本を読んだことがない。しかし、最近の騒ぎである。NHKのニュースが原因か、本自体の魅力が原因かよく分からないが、とにかく、これを読まないと「教養」にかかわるんじゃないかと不安になった。

当ブログに書評カテゴリーを持つ下拙としても、上辺だけでも撫でるかなめるかしとかなければなるまいというわけである。

ハナ書いたように彼の小説になじみがないからいきなり読むのもどうかな、と思ったわけ。もちろんそれもありなのだろうが。

この前に、モンキービジネスというあまり書店に置いていない(ポピュラーでない)、たしか不定期発行か季刊の雑誌に村上春樹本人のインタビューがのっていた。これを読んだが、座談だが、村上の話し方はなかなか要領がよい。頭のいい男と見受けた。

彼の初期の作品から当時(今年の春刊行の雑誌だった)完成直前らしい題名の明らかにされていない作品(おそらく1Q84のことらしい)まで自作を解説している。

しかし、もっぱら手法についてであって、人称の問題とか、リアリズム的な手法とか非リアリズム的な手法への転換の工夫とか、そういった話だった。それなりに彼の語り口は興味があった。

その後の1Q84ブームで「解説本、攻略本」が雨後の筍のように出てきた。

本体をいきなり読むのはシャク?だから、なにか一冊と思ったら「出版前重版決定」にガーンとやられたわけである。

つづく