総合小説というのは野暮ったい語感だが、総合小説を目指すと言うんだね。
むかし総合雑誌ってなかったっけ。
村上春樹本人も前述モンキービジネスのインタビューでも言うし、いまここで俎上に上げている本でも何人かが言っている。
総合小説とは、村上の言うところでは、社会の様々な人の意見を小説に取り入れて、全体として読者に時代の感じ(掴み)を与えたいということらしい。本人の言うところではドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟のような小説ということらしい。ま、おなじみの手あかのついた言葉で言えばポリフォニーだな。
それはそれでいい。しかし、この言葉は小説の手法上のアプローチでもある。そう捉えたほうがこの言葉は、彼の作品を見ていると分かり易いのではないか。
つまり、SF風味であり、サスペンス味あり、ハードボイルド・タッチあり、要するにエンターテインメント調のサービス怠りなく、そして寓話風あるいは寓話臭を前面に押し出したものといえる。人物の名前を記号か、記号的なもので表わすのも寓話ならある程度あり、かもしれない。
何種類ものスパイスを入れたカレーライスみたいな、ごった煮みたいなものと言えばいい。それが総合小説だ。
以上が河出書房新社の値1260円也および単行本「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を百ページほど読んだところでの感想である。