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min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

森詠著『燃える波濤第5部 冬の烈日』

2016-12-05 11:29:11 | 「マ行」の作家
森詠著『燃える波濤第5部 冬の烈日』徳間書店 1989.5.31 第一刷 1,200円


おススメ度:★★★★★

本の帯には次のような一文が記されている

「九州戦争から五年、右旋回を成し遂げた日本は、軍事大国を目指していた…。アジアに戦乱の暗雲が拡がる。そして、あの風戸大介が成田に降り立った。」

自衛隊内に組織された右派グループ「新桜会」の軍人たちによって敢行されたクーデターによって維新政府が樹立され、それに対抗するかたちでNRF(国民抵抗戦線)がつくられ日本は事実上内線状態になった。しかし、維新政府は見せかけの民主投票を行い自らの率いる国民党が圧勝した。
その後憲法第9条を廃棄し維新憲法を発布。
自衛隊は国防軍として正規な軍隊に昇格された。
また秘密保護法を成立させ戦前の治安維持法と同じ法案を可決し、治安警察(昔の憲兵隊に相当)を設置し、NRFを初めとした抵抗勢力を徹底弾圧した。
また国民に対しては秘密裏に核武装をもくろんでいた。核兵器なかでも中性子爆弾の研究開発に着手したのであった。維新政府の無敵は日本が核保有国の一員となり国際的プレゼンスを高め、東アジアにおいては米国に代わって覇権を持つ。要は昔の大東亜共栄圏の構築を目指すものであった。
ところでこの作品は四半世紀前に書かれたものであったのだが、著者森詠氏には今日の政治状況を的確にとらえていたようだ。
クーデターという極端な手段を取るわけではないものの、今や一党独裁に近い安倍自民政権が目指す日本の姿と本作品で描かれる近未来の日本の歩む姿が見事にシンクロしてくるではないか!
一方NRF内部でも国際派、国内派で微妙に軋轢を生じはじめ、今回風戸大介が帰国した目的のひとつは双方の関係改善であった。その中で喫緊の課題は維新政府による核兵器開発の阻止であった。風戸とNRFの特殊部隊はその開発研究拠点のある青森県六ケ所村に乗り込んだのであったが・・・
またパリの亡命政権の中枢にいる天城の元にある日かっての恋人であるシンガポール財閥の娘リーからある重要な情報がもたらされる。それはかって天城の上司であった武田情報部長が生きており、現在維新政府の秘密監獄に囚われているというものであった。
天城はリーの元夫の協力を得て彼の救出作戦に自らも参加志願したのであった。本編ではこれらの作戦を軸に息詰まるような物語展開となっている。




第一部から第三部の感想は拙ブログでも取り上げている。興味のある方は是非ご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/snapshot8823/e/0fb108705171cbcafac34caff0

本編の前に第4部「明日のパルチザン」があるのだが、これは九州における維新政府に反抗する若者たちと元フランス外人部隊出身の枚方俊治(このシリーズの3人の主人公のひとり。実は個人的には一番好きな人物である)の壮絶なゲリラ戦を描く作品なのだが敢えて申せばシリーズの中では番外編であり今回の再読では割愛した。

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