min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

谷克二著『黄金の報酬』

2008-07-28 08:35:13 | 「タ行」の作家
谷克二著『黄金の報酬』徳間書店 1988.12.31  1,200円

谷克二氏は今ではドイツを中心にした紀行文作家としての活動が多いと聞くが、同氏はかって狩猟小説・冒険小説作家としてその辣腕をふるった時期があった。
本作は経済サスペンスものとしての色彩が強い。扱った内容が国際的なM&A、いわゆる企業買収であり、今ではすっかり我々の耳にも慣れ親しんだ言葉となってしまった感があるものの、当時(1988年頃)ではまだ馴染の無いテーマであったと思う。
日本が円高ドル安を背景に一挙に世界の金融業界に進出しようとした時期であり、本編はある米国の企業(乗っ取りのプロとも言える企業)が同国の石油企業を乗っ取ろうと画策、その資金的バックアップに日本の銀行が関与しようというもの。
そのM&Aの水面下で行われる企業間の壮絶な攻防戦を描くと共に、陰で進行する殺人を含めた謀略があり物語は月並みな表現ではあるがスリルとサスペンスに満ちた展開となる。
この辺りは並みの経済小説作家とは違う谷克二氏であり、あたかも冒険小説のマイスターの如く鮮やかにエンターテインメント小説に仕上げてくれる。
約20年前の作品とは思えない、というよりも企業買収の何たるかを身近に感じられる時代となった今読んでこそ、面白みのある作品となっている。