min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

四十七人目の男 上

2008-07-18 17:25:02 | 「ハ行」の作家
スティーヴン・ハンター著『四十七人目の男 上』扶桑社ミステリー 2008.6.30  819円+tax
オススメ度 ★★☆☆☆
注)この評価は同シリーズ未読の方向け。シリーズ追っかけ組には★4つ!


うわぁ、ハンターさんはサムライとカタナのオタクになっちゃった!というのが第一印象。

巻頭にて、「日本映画に登場するサムライたちへの感謝と敬意、そして賞賛をこめて。」と題して日本の監督16人、俳優27人を列記している。
俳優陣で三船敏郎や勝新太郎に混じって上戸彩が入っているのがご愛敬!
何の作品?ああ、『あずみ』かな?うへぇ、こんなもんまで観ているの!?

とにかく2年間にわたって300本以上のチャンバラ映画のDVDを観たというのだから恐れ入る。
まさに米のタランティーノ監督が少年時代から夢中になったチャンバラ映画を2年間に凝縮して漁りまくった、という感じである。
サムライとともにサムライの魂とも言えるカタナへの想いいが高じ、古刀、新刀に関する文献をも読み漁った様子が伺える。

そもそもハンター氏が日本の時代劇にのめり込んだきっかけというのが山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』を観たことだそうだ。
同氏はもともと新聞社勤めをしていた時代には映画批評を専門としていたそうであるから、映画への造詣は深いに違いない。そんな氏が最近のハリウッド映画の質に落胆していた折の『たそがれ清兵衛』との邂逅であったらしい。
確かに最近のハリウッド映画はネタが枯渇した感じで、世界中から、とりわけ香港映画や日本映画から題材を求めそのリメイク版を制作するという、往時のハリウッド全盛時代からは想像できない状況となりつつあったわけだ。
そんな低迷するハリウッド映画から目を転じて『たそがれ清兵衛』を観たとしたら、確かに斬新なイメージを抱いたに違いない。
山田洋次監督にとって初の時代劇といわれた同作品は、日本人の僕の目からみても素晴らしい時代劇であった。
黒沢映画の作品群とはひと味もふた味も違った作品作りで、赤貧洗うがごとき一介の田舎侍の生き様を描いているのであるが、その内容は時代を、人種を超えて我々に訴えるものがあった。それはまぎれもなく万人に共通する“ヒューマニズム”と“ロマン”を描ききっていたからである。

サムライ映画に関して言えばつい2,3年前の『ラスト・サムライ』があまりにも有名で、米国製ニンジャものの後にサムライ映画ブーム到来か?などと思ったりしたわけであるが、日本のサムライばかりではなくむしろ日本のアニメから題材を取るケースが増えていくのかも知れない(つい最近の事例では「マッハ!Go Go」から「スピード・レーサー」の制作など)。

本編はあくまでも欧米の読者を想定した上での上梓であって、著者自らDVDを観て、たった2週間足らずの日本取材で“まともな時代劇”が書けるとは思っていない。
一目でサムライへの片思いに陥ってしまった著者が、恥も外聞もかなぐり捨てるようにしてまで サムライが登場する時代小説を書きたくなった。
だが、封建時代を舞台にした小説は無理であろう、だとしたら、身近の?ボブ・リー・スワガーをサムライにしたかった!彼にカタナを持たせてチャンバラさせたかった!という次第。
本作品を読むとハンター氏の熱情がひしと伝わってくるわけで、それはそれで微笑ましいではないか!
ボブ・リー最後の戦場が我が日本であったことを、我々日本のハンターファンは喜ぶべきであって安易な批判ばかりを彼に浴びせるべきではない。



うわぁ、全然読書感想になってないじゃん!
でも、このブログのタイトルは“読書メモ”だよね、まっ、いいか。
さて、『四十七人目の男 下』では多少中味に触れてみましょうか?