min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

フォックス・ストーン

2005-09-07 12:28:29 | 「サ行」の作家
「フォックス・ストーン」
笹本稜平著 文春文庫 2005/08 第1刷 667+tax

かって硝煙と血に満ちたアフリカでフランス外人部隊の傭兵として共に戦った、アメリカ人の戦友が東京のホテルで変死した。傭兵時代には自らがジャズピアニストであることをそぶりにも見せなかった戦友ダグ。今や天才的ジャズピアニストとして世界に知られる存在になっていた。
ヘロインを過多にとっての死亡、ということに不審を抱いたかっての戦友であり親友であった檜垣はダグの死を自殺あるいは事故死とは思わなかった。
親友の死の真相を求めて米国へ渡った檜垣は、ダグの死の背後にある北米とアフリカ大陸を股にかけた巨大な「国際的陰謀」の存在に気付くのであった。
真相に近づこうとすればするほど周囲の大切な人々が殺され、いよいよ真実を確かめる為アフリカへ赴く檜垣。物語は一種のミステリー・サスペンス仕立てで展開され最後の最後まで陰謀の黒幕が明らかにされない。最後に檜垣の心を奈落の底に突き落とす真実とは?
ビアフラ戦争を彷彿とさせる飢餓と殺戮の暗黒大陸を描きながら、そこに蠢く権力への欲望、新たなダイヤモンド鉱脈にからむ巨額な富への欲望が交錯する。
最後まで愛と友情のため命を惜しまない行動を貫く主人公の檜垣。今や著者笹本稜平は国際的スケールの冒険小説をかかせたら当代随一の書き手になったのではなかろうか。

遭敵海域

2005-09-07 12:09:55 | 「ナ行」の作家
C.W.ニコル著/村上博基訳
文春文庫 2005/05 820(税込)

新鋭巡洋戦艦金剛の建造をめぐっての海軍上層部と受注者(ドイツとイギリスのメーカー)の贈収賄問題が発覚し、銛一三郎の上司であった藤井大佐は忽然と姿をくらます。ある日三郎も海軍本部に呼び出され査問を受けることになった。てっきり処分を受けるものと覚悟して出頭した三郎であったが待ち受けていた任務はなんと生まれ故郷であるカナダのバンクーバー行であった。
ここでの三郎の任務は暗躍するドイツ人スパイたちの監視と情報収集であった。その後舞台はシンガポール、イギリスへと広がり三郎のイギリス海軍との幅広い人脈、流暢な英語能力をいかんなく発揮し大活躍する。なかでもドーヴァー海峡を遊弋、潜行しては民間船への攻撃も辞さないUボートに対して、甥の敵討ちという意味合いもあって敢行した洋上のゲリラ戦はイギリス海軍内で密かに喝采をあびた。いよいよ本格的な大戦に突入しようとしている欧州の暗雲を後にして日本に帰国した三郎はある場所で思わぬ女性に再会するのであった。
やがて彼女と結ばれる運命となるのだが…。そんな三郎に戦争の影がぴたりと貼り付いてはなれない。いよいよシリーズのクライマックスへと導かれるところで本編は終わる。乞う次回作「特務艦隊」!ということか。