min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

海燕ジョーの奇跡

2005-09-21 18:26:05 | 「サ行」の作家
佐木隆三著 新潮社 昭和55年2月発行 ¥980

沖縄の本土復帰直前、沖縄におけるヤクザ達は本土の巨大極道組織に対抗するために大同団結をはかり「琉球連合」を結成した。
同連合の三番手についた島袋組は同連合の理事の姦計にはまり、解散させられたばかりか捕まれば抹殺される立場に追いやられる。島袋組の若き構成員ジョーは意を決し理事長暗殺を敢行する。
全島くまなく張られた同連合の監視の目をかいくぐり、沖縄の南、フィリピンへ脱出を試みる。フィリピンは幼き頃別れた父の住む島であった。アメリカ軍属のフィリピン人と同じく基地内のPXで働いていた日本人の母親の間に生まれたジョーは“あいの子”として幼い時から周囲の子供たちに差別されいじめられた。
そんな屈折したジョーの未来もまた幸せにはほど遠い血にまみれた人生しか残されなかった。
果たしてヤクザの手をのがれ、恋人である陽子に明日はあるのか?
未だに基地問題が尾を引く沖縄であるが、その原点とも言える戦後そして復帰を迎える沸騰した熱気をはらむ沖縄を舞台に、そして南の島々、更にフィリピンに舞台を移して混血ジョーと仲間の波乱の青春群像を描いた秀作。

ゼーランジャ城の侍

2005-09-21 17:46:49 | 時代小説
新宮正春著 新人物往来社刊行 1989.4.15 第1刷 ¥1,350

17世紀台湾の台南、安平にオランダ人によって築かれたゼーランジャ城は鄭成功の軍船に包囲されていた。オランダ軍側と鄭成功側にそれぞれ日本人侍の傭兵がおり、鄭成功の暗殺をもくろむ勢力とそれを阻止せんとする勢力、同じ日本人傭兵同士が繰り広げる暗闘を描いた異色の作品。
全般的に著者新宮正春の文章に堅さが目立ち、構成が荒削りに感じるところがあり、せっかくの小説の素材が生かされなかった気がしてならない。

尚、余談ではあるが鄭成功に加担した日本の侍によって構成された「鉄面人隊」の活躍を描いた好書に 高橋和島著 『朱帆』『怒帆』がある。