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min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

再読:高橋克彦著「竜の柩(1) 聖邪の顔編」

2015-03-14 11:47:12 | 「タ行」の作家
高橋克彦著「竜の柩(1)」講談社文庫2006.7.14第1刷¥762+tax

おススメ度 ★★★☆☆

この作品はノン・ノベルとして1993年8月に、祥伝社文庫として1997年7月に刊行されました。


今から十数年前に本書を読んだ際に、いわゆるトンデモ本かとは思われたのだが、基本的にはこのストーリーを受け入れていた。なにせ龍=ロケット、神=エイリアンであることを証明するために津軽、信濃、出雲を巡る調査に出るものがたりなのだから。
こんな途方も無い話をにわかに信じろと言っても難しいではないか。しかし、「古事記」、「日本書紀」に語られる神話、伝承の中には著者の解釈の方が自然でむしろ論理的ではないか?と思われる点がいくつもあるのだ。
この竜の一族が残したでであろうロケットを巡り、最初に調査に向かったアクト・ナインの九鬼虹人を追う謎の組織があった。古代日本の謎解きの外この組織との諜報戦ともいえる戦いの他銃撃戦をも交えながら九鬼たちはロケットらしきものが埋設されているのでは?という場所をとうとう特定したのであった。

さて、この物語を読んだ十数年前からこの手の情報量が飛躍的に増え、今や著者高橋克彦氏の妄想に過ぎない!などとは考えていない。
この地球の古代文明を築いた過程において宇宙人が関与したであろうことはほぼ確実であることを自分的には強く信じている。
日本人の市井の学者とも言えるはやし浩司氏による一連の「ナスカ理論」(youtubeで見られる)でこの古代史はほぼ解明されている。是非ご覧頂きたい。



ジェフリー・ディーヴァー著『ゴースト・スナイパー』

2015-02-02 12:12:19 | 「タ行」の作家
ジェフリー・ディーヴァー著『ゴースト・スナイパー』 (原題:The Kill Room)2014.10.30
文藝春秋 初版 2,400円+tax

おススメ度:★★★★☆


訳者あとがきによると、ライム・シリーズは本作で10作目となるそうだ。第一作目の「ボーン・コレクター」の上梓が1997年で邦訳が1997年とのことだから、シリーズが我々の眼前に現れてから17年ほど経ったわけだ。
本編の最大の特徴は殺人現場が米国外のバハマで起きたことと、犯人が国家諜報運用局(NIOS)という規模はCIAなどに比べると小さいものの、れっきとしたお役所なわけである。そこの長官が首謀者で雇われた実行者及び協力者がいるらしい事が判明した。
ある日ニューヨーク市警のセリットー刑事がライムの事務所に同行して来たのはナンス・ローレルというニューヨーク州地方検事補であった。
彼女は自らの職責をかけて本件を立証すべく意気込んでライムの協力を仰ぎにやって来た。国家機関が自国民を対象として、秘密裏に暗殺指令を出し、実行した。
もしもこの件の捜査が開始されたことが相手側に知れると、当然ながら猛烈な証拠隠滅、もみ消し工作が行われるばかりか、ナンス・ローレルのキャリアも消えうせる可能性が大であった。。
しかし、前述の通り現場は海外、証拠品の一切が入手できない状況であった。ライムが現地の王立バハマ警察に協力を要請するも、のらりくらりとした態度を取り、一向に協力の姿勢を取らないのであった。業を煮やしたライムは介護士のトムとNY市警のプラスキーを伴い現地バハマへ飛んだのであったが・・・・
いかんせん相手組織は諜報のプロ。携帯電話の盗聴はするは、国のデータベースは存分に駆使するはやりにくいこと極まりない。一体ライムとアメリアはどうやって犯人を追いつめることが出来るのであろうか!?
いつもの最終場面でのドンデン返しは今回はあることはあったが、ささやかな部類と表現してもよいのではなかろうか。ま、とにかく著者の熟達したストーリー・テラーとしての力量を認めざるを得ない。楽しめました。

月村了衛著『土漠の花』

2014-10-30 15:06:30 | 「タ行」の作家
月村了衛著『土漠の花』 幻冬社 2014.9.20第1刷 \1,600+tax

おススメ度:★★★★★

ソマリア沖海賊対策で派遣された自衛隊PKO部隊に、連携して作戦に参加している有志連合軍の連絡ヘリが墜落しその救助を要請された。
ソマリア国境近くのジブチ領内に墜落現場はあった。その野営地に突然3人のソマリ女性が駆けこんで来た。いわく敵対する氏族の民兵に追われている。追いつかれたら殺される、助けてと。
そうこうするうちに、その民兵どもが現れた。歩哨のふたりの自衛官は即座に射殺され、捜索隊の隊長も抗議した途端射殺されてしまった。
残りのソマリ女性を含めた自衛隊員が並べられあわや処刑される寸前、小銃を持って小便に行った隊員が事態を変えた。
そこから自衛隊の基地までの約70kmに渡る、追撃と逃走の狂騒が開始されたのであった。
逃げる自衛隊員は徒手空拳。武器も通信手段も、食料、水も一切なし。果たしてこんな状況で追手の民兵から逃れられるのか?
事態は敵対する氏族の民兵に加え、テログループの戦闘部隊も合流し、逃げる彼らを追い詰める。
自衛隊の隊員側にも内部事情を抱えながらの逃走であった。一番致命的なのは指揮官亡きあとに残された二人の曹長友永と新開の確執であった。実力が拮抗するのと、寄せ集めユニットのため指揮権委譲が明確ではなかったのだ。

今、我が国の国会で「集団的自衛権」を巡り論議がなされようとしている。この法案が可決されれば、今後自衛隊は海外に置いてこのような事態に間違いなく遭遇するであろう。
その時に果たして我々国民は、政府は、何よりも当の自衛隊員たちに覚悟はあるのだろうか!?
作中でも様々な思いが隊員の胸中を駈けめぐる。人を初めて殺してしまった隊員の動揺と狼狽。敵を目の前にしてどうしても銃の引き金を引けない隊員。将来絶対に起こる状況想定である。
戦闘はそんな日本人自衛隊員の逡巡などお構いなしに激化していく。何もせず座して死ぬよりもあらゆる可能性を求めて帰還するんだ!という全員の願いが、思いが彼らの戦いを先鋭化していく。

さて、本作をエンタメ的にどうかと評価した場合であるが、のっけから戦闘場面がジェットコースターのように続く。このスピード感と内容てんこもり感(戦闘場面の多彩さにおどろくのだ。土漠の徒歩による逃走。小型トラックや軍用トラックを使用した渡河作戦。村落での野戦。捨てられた都市での市街戦。ドラグノフ狙撃銃での狙撃。RPGの発射。そしてクレイモアを使用しての大量対人地雷の設置。更に合気道による接近格闘。最後の息詰まるカーチェイスなどなど)がこの手の冒険活劇フリークにはたまらないのだ。
戦闘場面が多彩なのは陸自の隊員が習志野空挺団の所属であることが理由であろう。これが普通科連隊隊員ではこうはいかない。それと隊員のキャラをしっかり描くことによって夫々への思い入れが可能となった。
それに忘れてはならないのはソマリアの少数氏族のスルタンの娘の存在だ。こんな彼女のためなら命を賭けようというものだ。
政治的な意味を度外視して、自衛隊の男たちを真の男にしてくれた著者月村了衛氏に拍手喝采を送りたい!




リー・チャイルド著『アウトロー 上・下』

2014-09-14 12:31:53 | 「タ行」の作家
リー・チャイルド著『アウトロー 上・下』 講談社文庫 2013.1.16第1刷 

おススメ度:★★★★☆

Amazonの本の紹介文によれば
「平和なダウンタウンで起きた、ライフル狙撃による無差別殺人。容疑者は6時間後に特定された。証拠はこれ以上ないほどに揃っており、誰もが容疑者の有罪を確信していた。だが容疑者は黙し、たった一言だけを発した―「ジャック・リーチャーを呼んでくれ」。全米ベストセラー・シリーズ、待望の最新刊。」

ということなのだが、このジャック・リーチャーとは一体何者なのであろうか?
彼は陸軍における元軍警察の捜査官であった。現在は何も持たず(持たない物;運転免許証、クレジットカード、携帯電話、連邦給付金、税還付金、扶養家族)、米国内の好きな場所を放浪?中、といった極めて特異な人物である。「どうやって食っているんだろ?」という素朴な疑問が涌く人物である。

さて、本編であるが、紹介文にもある通り、有る者軍人が起こしたと思われる無差別殺傷事件であったのであるが、この男ジャック・リーチャーが登場することにより、事件の背後には極めて大がかりな陰謀が隠されていることが判明する。
この陰謀を影で操る不気味な謎の組織があることも徐々に彼の手によって解明されていく。
このあたりはサスペンスの謎解きと言ってもよい。上巻では謎の部分の深化が進み、下巻中間あたりから一気に流れが収斂される。その間読者はページを繰る手を止められない。

さて、そんな本編を読みながら、主人公リーチャーが謎を解きながら最後に一挙に暴力的、それもかなり強烈な手段によって解決する様はどこかでみた記憶がであると思い始めた。195cmの大男、鍛えられた強靭な肉体そして明晰な頭脳。そして元軍人。

そう、スティーヴン・ハンターによる「ボブリー・スワガー」シリーズに登場する伝説的スナイパーのボブと、彼の父親アール・スワガー(元警官)のことを!
アメリカ人はこの手のヒーロー像が極めてお好きなようであるが、著者は英国人とのこと。
このJ・リーチャーシリーズは今までに17作も上梓されているようだが邦訳は本編を含めて5作品とか。本編は邦訳の5作目にあたるらしいが、この作品が一挙に脚光を浴びたのは昨年公開された同作品の映画化によるものではなかろうか?映画も原作同名の「アウトロー」で何とトム・クルーズが主演。
そういえばこんな映画のポスターを見た記憶がある。だがリーチャーをトム・クルーズが演じる?今原作を読んだ後では相当の違和感を抱くのは僕だけではないはず。
でも逆にこのイメージのギャップをどう処理したのかが興味深い。この後DVDを観たくなった。観てみよう!






津本 陽著『鉄砲無頼伝』

2013-09-04 10:25:31 | 「タ行」の作家
津本 陽著『鉄砲無頼伝』角川文庫 2000.2.15 第一刷 

オススメ度 ★★★☆☆

1996年に刊行された単行本の文庫化。

西暦1543年にポルトガル船によって種子島に鉄砲(火縄銃)が持ち込まれ、数年の内にそれを模倣して国内生産を開始した事は中学生の歴史の教科書にも載っているほど我々には馴染みの深い歴史的事実である。
この“鉄砲”という飛び道具がその後の日本の歴史を大きく変えた事も事実である。
しかし、一番興味深いのは、当時の世界の先端技術(最新式銃ではなかったものの)の一端を素早く取り入れることが出来た日本の当時の鍛冶、製造技術は大したものであった。ただ一点難しかったのは銃の尾栓と言われる部分のボルトのねじ切り技術であったと言われる。本書では残留したポルトガル人船員が後に中国にいた同国人の鍛冶職人を連れてきてその加工法を伝授させた。
いずれにせよ日本の高度な日本刀を製造していた鍛冶技術があってこその国内生産であったことは間違いない。
その先端技術を最初に目を付けたのが紀州根来の津田監物の兄であった。その兄の命で監物は密かに種子島へ渡り種子島領主時堯より鉄砲を譲り受けた。その銃を元に根来の鍛冶屋に量産させ、300人の鉄砲隊を作ったのであった。
かくしてその後雑賀衆と肩を並べる最強の鉄砲集団となり、群雄割拠する大名たちの傭兵となり大活躍したのであった。
ところで先に触れた雑賀衆と根来衆の大きな違いは、雑賀衆が熱烈な浄土真宗の信者であり、金の為の傭兵稼業というよりも“義”の為に戦ったと言ってもよいだろう。一方の根来衆は真義真言宗の“僧兵”とは言え、経文ひとつ唱えることのない完全な戦闘集団であり、自らと根来寺の為に金稼ぎにまい進した。
本作の主人公津田監物と彼が率いる鉄砲衆の戦う目的はもちろん金であった。そのあっけらかんとした金銀獲得第一主義の生きざまはある意味小気味よいほどではあるが、やはり虚しさを感じる。
津本陽氏による雑賀衆を描いた『雑賀六字の城』や『天翔る倭寇』の方が圧倒的に読み応えがある。
あと雑賀衆を描いた小説で最も有名なのは司馬遼太郎の『尻啖え孫市』であろうが、地元和歌山出身の作家神坂次郎氏による『海の伽耶琴― 雑賀鉄砲衆がゆく』も大変興味深い作品である。




ジェフリー・ディーヴァー著『追撃の森』

2013-02-18 21:18:45 | 「タ行」の作家
ジェフリー・ディーヴァー著『追撃の森』文春文庫 2012.6.10 第一刷 1000円+tax

オススメ度:★★★☆☆


米国ウィスコンシン州ケネシャ郡保安官補のブリン・マッケンジーに上司から電話があった。先ほど911緊急通報に妙な電話があり「こちら」だけで切れてしまったという。
携帯の持ち主を調べたらミルウォキー在住の社会福祉局職員で妻は弁護士。彼らはモンダック湖湖畔に別荘を持っていることから週末を利用して滞在していると思われた。そこで非番ではあるが現場に一番近くに住むブリンにちょっと様子を見てきて欲しいと頼んだ。
単なる間違い電話かいたずら電話だろう程度に考えていたブリンは単身湖畔の別荘へ向かったのであるが、これが彼女にとって悪夢のような一夜になろうとは知る由もなかった。
彼女を待ち受けていたのは別荘を持つ夫婦の射殺死体と二人の殺し屋であった。更にこの殺し屋どもからからくも逃れた夫妻の友人とおぼしき女性が一人いた。
逃走する女性二人とそれを追う二人の殺し屋の間で繰り広げられる追撃戦が見もの。追われる保安官補ブリンと“職人”と呼ばれる殺し屋のひとりハートは互いの持てる知識と技能の限りを尽くし相手の行動の裏の裏を読み合う。
この二人の“丁々発止”とした戦いは小説全体の四分の三を費やしている。だが息もつかせぬほどの緊迫感がありけっして退屈はしない。このあたりの心理戦を含めたアクション描写はさすがディーヴァだと唸ってしまう。
物語は一応の結末を迎えようとしているのだが残ページがある。我々はこの著者がすんなり物語を終わらせない事はかの「リンカーン・ライム」シリーズで嫌と言うほど思い知らされているので、このままストーリーエンドとなるとは思っていない。案の定結末は思いもよらぬ展開を見せるのだ。

オススメ度が星3つにとどまったのは実はこの思いもせぬ“結末”があまりにもあっけない事と、犯人の動機とキャラがかなり非現実的であったことによる。
本作は著者の数少ないノン・シリーズの一作である。




マイケル・デイ著『奪還』

2012-06-06 00:01:57 | 「タ行」の作家
マイケル・デイ著『奪還』ヴォレッジブックス 2005.4.20 第1刷 


おススメ度:★★★★★

本のカバーの紹介文から引用

200X年、インドネシアに生まれた新政府の野心的な独裁者による、中国系インドネシア人の弾圧がはじまった。彼らを強制収容所送りにする背景には暗号名「インデラ」と呼ばれる、世界を戦争に巻き込みかねない鉱物の採掘が隠されていた。やがて、その採掘の謎をめぐり、息子と父の命を手にひとりの女性が、いやおうなく戦いの場に巻き込まれていった。英国、米国、中国など国際間の勢力争いは、情報合戦の域を超え、やがて環境兵器使用の危険領域へと足を踏み入れていく…津波をも兵器に変える現代戦の恐るべき姿を描いた、迫真のエンバイロメント・サスペンス。



この紹介文を読んでも中々手に取らない内容かも知れない。自分がそうであった。何度かブ○○クオフで手に取りながらも購入しなかった。なぜならインドネシア政府の陰謀?女性がその陰謀を阻止?環境兵器?著者は英国の現役高校教師?、といった?マークがいくつも頭をよぎって読む意欲を阻害したからだ。
数か月後再び本作を手にした時、環境兵器が台風ばかりか「人工津波」を兵器として使用という所に“ひっかかり”を覚えた。
あの3.11東日本大震災災の後であったらこの作品は世に出ていなかったかも知れない。
本作の中で起こされる「人工津波」は多少発生状況は違うものの、原爆を使用して地層をスライド(まさに本作の原題が“SLIDE”なのだ)させて想定外の大きなツナミを発生させるもの。
実は3.11の大津波は日本に対する某勢力による「人工津波」テロだと執拗に訴える人々がいるということを僕は知っている。その真偽は別として、本編で米国の西海岸を大津波が襲うシーンはあまりにも我々がTV画像で見せられた三陸海岸の大惨事シーンとかぶってくる。3.11の前だったら全然現実味のない描写だろうが今読むと震えが来るほどリアルだ。

話が「人工地震」にばかり行ってしまったが、本作は冒険小説としての要素が満載で、この方面からの読者の期待をけっして裏切ることはない極上のエンタメ小説であることを記しておきたい。



ジェフリー・ディーヴァー著『007 白紙委任状』

2012-05-20 22:55:33 | 「タ行」の作家
ジェフリー・ディーヴァー著『007 白紙委任状』文芸春秋 2011.10.15 第1刷 
2,380円+tax

おススメ度:★★★☆☆

イアン・フレミングの007シリーズの大半は中学3年の頃にまとめて読んだ、早川書房ので。その後、原作に沿ったあるいは原作にない内容で次々と映画化されたのはご承知の通り。
フレミング亡き後にも幾人かの作家がボンド作品を書いているようだが大して興味が湧かないので読んだことがない。しかし、我が敬愛してやまないJ.ディーバーがこのシリーズを書くと聞けば見逃すわけにはいかない。しかし、何故に今ボンドなのであろう?またどのような経緯で彼が書くに至ったのかは分からない。

本作を読み始めて直ぐに気づくことなのであるが、時代は現代であり、ボンドの属する組織はロンドンにある。
フレミングの原作ではボンドはMI6に属する女王陛下のスパイであったが、今はMI5やMI6とは別組織のODG(海外開発グループ)におり、そこでもOOの殺しのライセンスを与えられている。
9.11以降に創設されたいわばより現代の状況に即応できる対外破壊工作部隊ともいえ、情報はMI5やMI6から情報を得て動く実働部隊だ。
MI6にはボンド・ファミリーといえるMやマニーペニー、そしてQが存在するのだ。

肝心のボンドの風貌とキャラであるが、作品中では年のころ30才代前半、身長183cm、よく鍛えられた肉体に端正な顔立ち、と描かれている。
性格は正確には把握できないものの、スパイたる冷酷さはもちろんあるが、印象としては随分と真面目な性格に映る。もちろん女好きは定番。
読者の大半がボンド映画を観ているはずで、いくたのボンド役の中ではピアーズ・プロスナンに一番近いかも知れない。けっしてロジャー・ムーアのような軟派のイメージではない。
いや、ボンドシリーズ以外の映画で言えば「M.I」のイーサン・ハントにキャラ造形が一番近い気が個人的にする。

物語の内容であるが、ある電子メールが傍受されたことから全てが始まる。メールには『・・・20日金曜日夜の計画を確認。当日の死傷者は数千人に上る見込み。イギリスの国益にも打撃が予想される・・・』とあった。
5日後のイギリス国内かどこかの国で数千人が犠牲となるテロが計画されている、らしい。
同じ送信者と思われるメールがもうひとつあり、そこにはセルビア共和国のとあるレストランで仲間と落ち合うような内容であった。
ボンドは急遽単身でセルビアに飛ぶのだが、そこでからくも列車脱線事故を防ぐことが出来たものの、彼らの目的とターゲットは別にあることが判明する。
果たしてボンドは限られた時間の中で、この大規模なテロを阻止できるのであろうか!?

ストーリー及び主役は「M.I」のイーサン・ハントの活躍をみているようだが、敵のモンスターはどことなくリンカーン・ライムシリーズに出てくるような印象で、そのモンスターの壊れぶりは正にディーヴァー独特の世界観と表現描写に重なるところが面白い。
もちろん著者がディーヴァーなのだから最後のドンデン返しが無いわけがない。読者はいつも通り最後の最後まで気を緩めることが出来ないことを付記しておく。
Qの作り出す小物やアクション場面も荒唐無稽なものではなく、どちらかと言えば地味なもので好感が持てる。
オススメ度としては★の数が少ないのは最後のどんでん返しに納得いかないから。あ、これは蛇足でした。ま、続編は多分書かないでしょう。



ジェフリーディーヴァー著・『ロードサイド・クロス』

2012-03-09 22:00:43 | 「タ行」の作家
ジェフリーディーヴァー著・『ロードサイド・クロス』文藝春秋 2010.10.30 第1刷 

おススメ度:★★★★☆

本編の主人公はあのキャサリン・ダンス。リンカーン・ライムシリーズのひとつ「ウオッチ・メーカー」においてゲスト捜査官として登場し、彼女の特殊技能“キネシクス”(一種の尋問テクニックで対象者のボディ・ランゲイジを読み取り瞬時にウソを発見する捜査法)を駆使し容疑者、証言者のウソを次々に暴いては捜査を進める専門家。
そんな彼女の本拠地であるカルフォルニア州モンテレー半島で発生した連続殺人事件を追う内容。
事件というのがこれまた妙なモノで、高校生男子が運転する車が事故を起こし同乗していた3人の女子高生のうち2人が死亡した。
この事件がある人物のブログにアップされ、運転していた男子高校生の個人情報がたちまち暴露され、ブログが炎上。いわゆる“ネット”いじめ”の状況が雪だるま式に拡大されていく。
そんな中、ブログのスレッドで男子高校生を叩いた女子高生が襲われ一命をとりとめた。彼女の証言により犯人はネットで叩かれた男子高校生トラヴィスであると証言。この犯行前には近くの路上に十字架とバラの花びらが置かれ事故・事件が起きる日時が記されていた。すわ!男子高生の予告殺人の反撃か!?とブログ上で大騒ぎとなる。
そのトラヴィスが姿を消し、十字架が置かれては次々と事件が発生しモンテレー半島に住む住人を震いあがらせた。

しかし、物語はこのトラヴィスの犯行を未然に防ぎ彼を逮捕する、といった単純なものであるわけがない。何故なら著者がJ.ディーヴァーであるからだ。
絶対に真犯人は別におり、その“どんでん返し”があることを我々読者は知っている。我々の想像する真犯人と著者が用意する真犯人の落差が大きければ大きいほど楽しいのだ。

ゲームおたくの連続殺人劇を本編の縦糸とするならば、ダンスの捜査を妨害しようとするカルフォルニア州司法局検事ハーパーの横槍が物語の横糸として織りなされる。その横槍はなんとダンスの母親を“安楽死犯”として検挙しようというものであった。
更にダンスの良き相棒でもある保安官事務所のマイケル・オニールとの「恋の行方」に立ちはだかるように登場するジョン・ボーリングというカ大教授の登場。この“恋の糸”がダンスに絡まって物語りは進行する。

さて、本編中で起こる“ネットいじめ”の状況はインターネットが全世界に普及された今、洋の東西を問わず陰湿、陰惨に繰り広げられる。SNSヤブログで不用意に発言する恐ろしさが胸に沁みる。
またゲーマーオタクと称されるゲーム中毒患者を全世界中に生み出した要因の大半が日本のゲームソフトにあり、アニメの浸透ぶりには呆れるばかりだ。



高野和明著『グレイブディッガー』

2012-01-08 11:28:10 | 「タ行」の作家



高野和明著『グレイブディッガー』新潮社 2005.6.15 第1刷 

おススメ度:★★★☆☆


本編は逃走と追撃の物語だ。それにサスペンスとカルト風味が加えられ、サクサクと読み進めることが出来るエンタメ小説である。
主人公八神は小悪党であるが、或る時何を思ってか(ある種の罪滅ぼしか)骨髄移植のドナー登録を行い、今まさに骨髄移植手術を受けに病院に向かうことになっていた。
そんな彼に降って湧いたような殺人事件に遭遇し、正体不明の4人組に追われ、その逃走の最中に4人のうちの一人が転落死してしまう。それで更に警察からも追われることになり、都内北区赤羽から目的地である大田区六郷までの大逃走劇を繰り広げる。
さて、殺人事件であるがこれが連続猟奇殺人で「Grave Digger(墓堀人)」と称される殺人犯。中世暗黒時代、魔女狩りが盛んであったヨーロッパで英国に出現した伝説的な殺人犯であった。このグレイブデッガーなる殺人者は魔女狩りを行った異端審問官を狙ったか“処刑人”であり、そのいでたちは分厚い黒いマントを羽織り頭部を覆ったフードの陰では、二つの目だけが妖しくひかっている。両腕にはボーガンと戦闘用斧を持つというオドロオドロしい姿だ。
中世暗黒時代に跳梁跋扈した“処刑人”が現代の日本に蘇えり連続殺人を始めた。
八神は正体不明の集団と警察、更にはこのグレイブディッガーにまで追われるハメになる。
一体何故に追われるのか?そして無事目的地の病院にたどり着き、自分の骨髄を必要とする少女の命を救うことが出来るのか?
一昼夜逃げ回る逃走と追撃が待つ結末とは!?

本書は高野和明氏の『ジェノサイド』を読んだ契機で過去作品は?との思いで読んだもの。正直に書けば、もし本書を先に読んでいれば『ジェノサイド』は読まなかったかも知れない。
それは高野和明氏が大幅に作家としてここ数年で“進化した”と言えることだ。