min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

津本 陽著『鉄砲無頼伝』

2013-09-04 10:25:31 | 「タ行」の作家
津本 陽著『鉄砲無頼伝』角川文庫 2000.2.15 第一刷 

オススメ度 ★★★☆☆

1996年に刊行された単行本の文庫化。

西暦1543年にポルトガル船によって種子島に鉄砲(火縄銃)が持ち込まれ、数年の内にそれを模倣して国内生産を開始した事は中学生の歴史の教科書にも載っているほど我々には馴染みの深い歴史的事実である。
この“鉄砲”という飛び道具がその後の日本の歴史を大きく変えた事も事実である。
しかし、一番興味深いのは、当時の世界の先端技術(最新式銃ではなかったものの)の一端を素早く取り入れることが出来た日本の当時の鍛冶、製造技術は大したものであった。ただ一点難しかったのは銃の尾栓と言われる部分のボルトのねじ切り技術であったと言われる。本書では残留したポルトガル人船員が後に中国にいた同国人の鍛冶職人を連れてきてその加工法を伝授させた。
いずれにせよ日本の高度な日本刀を製造していた鍛冶技術があってこその国内生産であったことは間違いない。
その先端技術を最初に目を付けたのが紀州根来の津田監物の兄であった。その兄の命で監物は密かに種子島へ渡り種子島領主時堯より鉄砲を譲り受けた。その銃を元に根来の鍛冶屋に量産させ、300人の鉄砲隊を作ったのであった。
かくしてその後雑賀衆と肩を並べる最強の鉄砲集団となり、群雄割拠する大名たちの傭兵となり大活躍したのであった。
ところで先に触れた雑賀衆と根来衆の大きな違いは、雑賀衆が熱烈な浄土真宗の信者であり、金の為の傭兵稼業というよりも“義”の為に戦ったと言ってもよいだろう。一方の根来衆は真義真言宗の“僧兵”とは言え、経文ひとつ唱えることのない完全な戦闘集団であり、自らと根来寺の為に金稼ぎにまい進した。
本作の主人公津田監物と彼が率いる鉄砲衆の戦う目的はもちろん金であった。そのあっけらかんとした金銀獲得第一主義の生きざまはある意味小気味よいほどではあるが、やはり虚しさを感じる。
津本陽氏による雑賀衆を描いた『雑賀六字の城』や『天翔る倭寇』の方が圧倒的に読み応えがある。
あと雑賀衆を描いた小説で最も有名なのは司馬遼太郎の『尻啖え孫市』であろうが、地元和歌山出身の作家神坂次郎氏による『海の伽耶琴― 雑賀鉄砲衆がゆく』も大変興味深い作品である。




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