sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:愛、アムール

2013-03-29 | 映画


タイトルが恥ずかしいようなひどいタイトルですが
原題は「アムール」、つまり、愛、です。
それなら素直に「愛」か「アムール」だけにしとけばいいのに
なんで「愛。アムール」ってするかなぁ・・・(笑)

まあ、どんな安っぽいタイトルでも、ハネケ監督ですから
誤解されることもないでしょうが。

この映画は先日アジアン映画祭で見た
小林政広監督の「日本の悲劇」との類似点をよく耳にしてきたので
苦手なハネケ監督でも見てみなくては!と行ってきたのです。


ハネケは、本当にいや~な感じの映画を撮る人ですが
(見てる最中も居心地悪く、見たあとも後味最悪!の名監督)
この映画は、誰が見てもそんなにいや~ぁな感じではないです。
普通に感動するような話。
でも、やっぱり彼特有の、
寒いような冷たい画面なのに
どこかぬるっと気持ち悪い雰囲気は、まだある(笑)。

音楽家の老夫婦の
妻が半身麻痺になり夫が介護を始める、という話。
やはり、端正な画面できちっと細部を静かに描いて行きます。
でも、そういう細部も退屈させないのがお見事。

この日わたしは映画を3本見る予定の2本目で
静かな映画ならうとうとしながら見ちゃえ、くらいの気持ちだったのに
しっかり見てしまいました。

妻は元ピアニスト?かピアノの先生で
優秀な弟子を育て、慕われていて、夫も音楽の仕事をしてたらしく
調和のとれた生活を楽しんでいたけど
ある日妻の意識が数分なくなることがあり、
その後、発作や手術の失敗で半身麻痺になる。
妻は誇り高い女性で、まだ意識もあって半身は動き
食事も自分でできるし本も読める、という時点でも
世話をされないといけないことに傷つき
死にたいというようなことを言います。
気持ちはわかるけど、あれだけ意識がしっかりしてたら
まだ死ねないだろうな。
でも、その後容態はどんどん悪くなり、全身麻痺、
発話もうまくできなくなって、やがて意識も混濁してくる。
そうなってくると、もう死にたいと思うことさえあやふやになってしまう。

思いやりのないヘルパー
パニックになる娘、などの相手をしながら
毎日介護に明け暮れる夫は、おそらくものすごい葛藤の中にあったでしょう。
彼自身、老人で、体もどこまでもつかわからない。
彼の見ている妻の姿は自分の姿でもあるだろうし
妻と自分の今のつらさと将来の自分の姿、人間の尊厳の問題など、
一日中考えない瞬間はない、という状態で淡々と介護をしていて
結末はすでに見えていましたが、そこでわたしは突然の嗚咽に襲われてしまった。
泣いた、とか、感動の、とか
トップに貼った予告編動画でも、至高の愛の物語とか言ってるけど
そういうヒューマンな映画じゃないとわたしは思いますね。
厳しい厳しい映画です。ひたすら、
老いというのはやるせないものやなぁ。
やるせないけど避けられないものやなぁ、と重い映画です。

さて、
映画「日本の悲劇」との共通点ですが
これが本当に、驚かされた。
老いと死を扱ってはいるけど、強い決意で自ら死を選ぶ「日本の悲劇」と
そうするしかない行動をとった「愛、アムール」のテーマは微妙に違います。
向いてる方向も違うと思う。
だから重なっているわけではないのに
多くの面で交差しているところがあるのですねぇ。
ディテールが似ているところもあるし、
切実さにおいては、すごく似ているのかもしれない。
よけい難しくなる気もするけど
ぜひ2本立てで見てほしい気がします。

冒頭でかかるシューベルトのピアノはわたしもCDを持っていて
ものすごくこの映画に合っています。
もうこれ聴くとこの映画を思い出さずにいられないくらい。
完璧な映画だと思いました。
Zimerman plays Schubert Impromptu Op. 90 No. 1

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