sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

ウィリアム・アドルファス

2024-11-14 | 本とか
赤毛のアンのシリーズは、アンの成長の見られる1〜3巻が好きだけど、アンの話ではなく、
アヴォンリーやその周辺の人々を描いた他の巻も、おやつみたいにちょこっと読むのにいい。
牧歌的な世界はすっかりすっぽり気持ちが安らぐ。
アンだけでなくアンの子供たちや村の多くの人々の小さなエピソードも
「赤毛のアン」から10巻にわたって書かれているのだから、
これはもうアヴォンリー・サーガと呼んでいいのでは、と思う。
この時代の古い価値観の古風で牧歌的な日常の話なんだけど
人々はやや類型化されてはいてもそれ以上にイキイキと描かれ
美しい村や町の木や花や自然の描写もとても楽しく、引き込まれながら読んでいる。

この前の休みの朝に猫に起こされて、ベッドの中でぼんやりした頭のまま
枕元のKindleを手に取って読んだのは男嫌いの中年女性の話。
勝ち気で、男なんてろくでもない、必ず騒ぎを起こす生き物だと決めつけて避けて生きてきて、
そのお陰で良い人生になったと思ってる。問題が起こってもなんでも自分で対処できるし、
女性がみな「オールドミス」にだけはなりたくないと思っている時代に、
人目を気にせずはっきりとものを言う性格の、とても自立した強い女性。
日曜学校で男の子たちを教えることになりビシバシとしつけるけど、来ない子が1人いて、
ある日その子が仕事してる家に話をしに訪ねていくことに。
(この時代10代の子供もどこかの農場に預けられて働いたりしてました)
 
主人公は5匹いる猫のうち一番お気に入りの気高い猫ウィリアム・アドルファスをお供に
馬車に乗っていきます。彼女の横に座るのにウィリアム・アドルファスほどふさわしい相手はいない。
さて、通学してこないその子供が働いてたのは有名な女嫌いの中年独身男とその犬の住んでいる家。
(もうここでベタにロマンスの匂いはしてきて、話の先もまあわかるんだけど、それでも読ませます)
その男は、街で天然痘の出た店で食事をしてたせいで隔離されてたのに、
それを知らない主人公が家に入り込んでしまったので、彼女と猫も一緒に隔離されることになるのです。

2人ともたいそうな皮肉屋なので無愛想で辛辣な言葉の応酬をしながらも、
汚い家の我慢できない主人公は猛然と家をきれいにして、美味しいご飯を毎日作る。
男は反発し、時に怒りながらも仕方なく受け入れていき、そうしてるうちに1、2週間が過ぎ、
(その間に当初毛嫌いしていたお互いの猫や犬にも慣れていく)
隔離期間が終わって主人公は家に帰る。

主人公、家に帰るとなんだか気が抜ける。つまらない。そしてある日男が来て、
もうがまんできん、いつ結婚してうちに来てくれるのかね、と言い・・・
とあらすじを書くと、100年前の話でもあり古臭く陳腐で紋切り型でありきたりなようで、
たしかにそうかもしれないけど、読んだ後に声を出してハハハと笑って愉快になり、
1日をなんとも温かい気持ちでスタートできるのですよ。なんだろうこの魅力は。
今と比べてうんと堅苦しい宗教的なモラルの時代で、男女の役割は固定され、
(特に女性には)自由がなく、閉鎖的なところもないとはいえない人々の話だけど、
そんな中でも優しく善良でユーモアを解し、夢と情熱と想像力、
そして愛のある人が出てくるからかな。

主人公はアヴォンリーの人で、日曜学校で教えるのに男の子のクラスを選んだのは、
女の子のクラスには「生きた疑問符」のようなアン・シャーリーという子がいたからで、
その子を嫌いではないけど面倒を避けたのだというようなところがあって、
赤毛のアンを読んできた人は皆クスッとする箇所でしたね。

そしてこの猫のウィリアム・アドルファスという名前がいい。立派な猫なんだろうな。
うちのクロちゃんには、野良の三毛猫らしくクロちゃんという名前が似合ってるけどね(?)
(本名はクロシェです)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿