老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

「障害者差別解消法」について

2016年04月30日 21時43分30秒 | 福祉・障がい 関係
 この4月から、障害者差別解消法が施行されました。
この法律は、正式名は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」という長い名前ですが、国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、“全ての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障がいを理由とする差別の解消を推進する”ことを目的として、平成25年6月に制定されたものです。

 この法律の大きな特徴は合理的配慮という聞き慣れないことをほぼ義務化していることです。
障がい者への差別撤廃や自立支援のために今までも数多くの法律が制定されてきました。この結果、建て前や一般的な意識として、就職や就学にあたり障がい者に対する不当な差別的取扱いはかなり少なくなったとように思われますが、実際に仕事や勉強を障がいのない人と同じように対応するにはまだまだいろいろな障壁があるのが事実です。
そのため、いろいろな職場・教育現場・公共交通機関・役所の窓口などあらゆる場面で、対象者一人ひとりの障がいの種類や程度、ニーズに合わせて、可能な範囲で配慮を行うこと(これを「合理的配慮」と言います)が必要とされ、この合理的配慮の不提供を法律で禁止したのが、今回の法律です。

  私は、公共施設や色々な障がい者施設などでの花壇作りや園芸管理に当っていますので、この法律の趣旨は良く理解できるのですが、今各地の公務員や公共事業に関連する人たちは、この法律の勉強と具体的な対応策の検討に大変なようです。

  また、障がい者問題にあまり関心のない方も多いかと思いますが、実は非常に身近なものです。少し例を挙げて見ますと、
・障がいのない人も、その人自身が持つ心身の機能や個人的能力だけで日常生活や社会生活を送っているわけではなく、日常生活や社会生活を営むにあたり、様々な場面で人的サービス、社会的インフラの供与、権利の付与等による支援を伴う待遇や機会が与えられています。
しかし、こうした支援は、障がいのない者を基準にして制度設計されており、障がい者の存在が想定されていないことが多く、障がい者はこれを利用する、或いはその支援の恩恵を受けられないといった事態が発生することになり、社会的障壁が発生します。
障がい者が利用できるように合理的配慮を提供しないことは、実質的には、障がいのない者との比較において障がい者に対して区別、排除又は制限といった異なる取扱いをしているのと同様ではないでしょうか。

・大きなホールなどでの講演において、聴衆に対するサービスとしてマイクが使用されますが、聴衆はこのサービスがないと講演内容を聞くことができません。即ち、障がいがない人々に対しても、人的サービス、社会的インフラの付与などの支援(配慮)があり、障がいのない人々はこれらの支援(配慮)を受けて日常生活・社会生活を送ることができます。しかし耳の聞こえない人々にはこの支援を利用することができない状況が発生し、これが社会的障壁となるのです。

・また、視力の弱い子には眼鏡やコンタクトレンズ、食物アレルギーのある子には特別食が認められるように、見た目で障がいがわかりにくい子にも合理的配慮は必要なのです。

・更に、入学試験の制度が改善されて、車椅子を使用する学生が一般の学生と分け隔てなく入学を認められても、校舎にエレベーターがなければ、2階以上の教室から閉め出されているのと同じだし、市役所の窓口で目や耳の不自由な人が手話通訳や点訳の資料なしで説明されても、十分に理解できないことが多いでしょう。
また、これらの事例は、現在は障がいのない人でも、加齢に伴う身体機能(歩行、視力、聴力など)の衰えにより、いずれこれらの支援を必要になるかも知れないのです。

  要するに、表面上障がい者を一般の人と区別して不利に扱わないというだけでは、真の差別の解消にはならない場合が多く、一番大切なことは、「どんな配慮が必要か」を当事者の同意を得ることです。
「聴覚障がいだから◯◯」「知的障がいだから◯◯」というように杓子定規に配慮を決めてしまわないことで、同じ名前の障がいでも一人ひとり、障がいの状況や必要な配慮が違います。
「どんな配慮が必要か」を確認し、これへの対応を考え続けることが合理的配慮でしょう。(まさ)

※この項はWIKIPEDIAや各自治体の関連ホームページなどを参照しました。
※「障がい者」について。私は障がいを持っておられる方の多くが、「障害者」の“害”という文字のイメージが嫌いだということを聞いて、「障がい者」という表現を使いますが、法律などについてはその法律名をそのまま使用しました。

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