老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

再び、バイアスについて  その① ~正常/確証/現在バイアス~ 

2019年04月13日 19時56分06秒 | その他
 最近「バイアス」という言葉を紙面で良く目にします。

 2017年12月に東海道・山陽新幹線「のぞみ」の台車枠に亀裂が見つかった問題で、この3月28日に運輸安全委員会が調査報告書を公表しましたが、(毎日新聞などの報道によると)この報告書の中で、“正常バイアス”とか“確証バイアス”という言葉が使われていたようです。

 このブログでも以前からこの“バイアス”という言葉を良く使っていますが、今一度纏めておきます。

 バイアス(bias)とは、偏り、かさ上げ、または斜めのことを指す言葉で、洋裁などに親しんでおられる方には、生地を斜めに裁つ「バイアス裁ち」という言葉は馴染みが深いようです。

 これから派生して、心理学用語として認知バイアス(cognitive bias)という言葉があり、人が物事を判断する場合において、個人の常識や周囲の環境などの種々の要因によって非合理的な判断を行ってしまうことを指します。

 判断を下すのが個人であり、影響もその周辺だけに治まるものであれば、起きる問題はさほど深刻なものにはならないでしょうが、それを行う者が一つの集団、一つの組織、果てには一つの国家という大きな枠組みを動かす者だったとすれば、引き起こされる被害は計り知れないものになるでしょう。


 私がこのブログで絶えず取り上げているのは“現在バイアス(あるいは現在志向バイアス)”という認知バイアスで、これは未来の利益よりも目先の利益を優先してしまう心理のことです。

 この現在バイアスにより、歴代の政府が次の選挙での勝利を目的とし、健全な財政運営からかけ離れた垂れ流し財政策を摂り、挙句の果てにこの国の国債などの借金累計が1000兆円を超えたにも拘わらず、まだこの施策を変更への舵取りが見られないことです。
また、国民の多くも、このしわ寄せは子どもや孫たちの世代が負わされることになるというその深刻さを考えないまま、目先のバラマキ策を安易に受け入れていることです。


 このような認知バイアスは、何も“現在バイアス”に限らず、色々な要因で現れます。
今回の運輸安全委員会が調査報告書に記された二つのバイアスは、“正常性バイアス”と“確証バイアス”ということのようですが、この言葉は下記のような意味で使われます。

正常性バイアス(Normalcy bias):
 災害や緊急時に自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう傾向で、「自分は大丈夫」という根拠のない自信を持ってしまうことである。
 今回の新幹線の件でも、関係者が出発直後から異音や異臭に気付きながら、運転を続けた対応について“『大したことにはならないだろう』という正常性バイアスが働いたと考えられる”と指摘されたようです。

確証バイアス(Confirmation bias):
 ある仮説や信念があった場合、それを検証する際に肯定的な意見ばかりを集め、否定的な意見は無視してしまう傾向。

 要するに、このようなバイアス効果により、危険性の正確な把握がされなかったという事です。