おおっ !! 地蔵さま、いや、六地像さま、あの、あの女は何者ですか !!
私は、すらりとした美しい女が夜明けの野原を山に向かって歩いてゆくの姿を見つけるや、そう叫びました。叫びながら全身が震えていました。
「ありがたい。ありがたい」
「ありがたい ?」
「そうじゃ、あのお方は、あの大鳥じゃ」
「あの大鳥 ?」
「そうじゃ、ここの地に降りられたのじゃ。・・・これから山に帰って行かれる」
「山に ?」
「そうじゃ、あの娘の父親の霊も住んでいるあの山じゃ」
「鳥になった父親も、恐らくあの姫神さまにお仕えしているに違いない」
「姫神さま ?」
「そうじゃ、私もこうして姿を変えていただいた。ここの地をお守りになっている女神さまじゃ。私は、これからは、姫神さまのご加護によって布施行を続けていくことになった」
「では、ここの私のように転生したもの、いや、まだのもの、すべてを守ってくださる・・・」
「そうじゃ。・・・ただ、もうこれからはよほどのことが起きないかぎり、お姿を見ることはできないだろう」
「そうですか。分かりました。これからは六地像さまとともにあの女神さまも拝みたいと思います」
「それがいい。お前の前世の悪業もすべて清められる」
「悪業・・・ですか。ははっ、数えきれないほどありました」
「生まれ変わりたいだろう、本心は」
「一旦電信柱に転生したものが、わがままは言えません。これでいいのかも知れません」
「はははっ、根性が歪んでいる。本音は透けて見えている」
「いや、いや、六地像さま、これでいいのです」
「ははっ、まあ、今はそれでいいとしよう」
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