とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

8 墓地での出来事

2015-01-25 23:02:53 | 日記


著作者 gusdiaz


 鳥が降りてきてから数分後、今度は山陰から二羽の鳥が飛び上がりました。私は、おやっと思いつつ飛んでいく方向を見つめていました。二羽の鳥は瞬く間に反対側の山陰に消えていきました。どうしたことだ。私は少し不安になりました。・・・もしかして。もしかして父親の鳥が娘を連れ去ったのかも知れない。娘を鳥に変えて、有無を言わせず・・・、というかその場のなりゆきというか、ともかく何かのきっかけで二人は意気投合したのかもしれない。父親の思いが娘に伝わり、そこで大変な出来事が起こったに違いない。
 私は、母親の姿を見ました。母親は娘がなかなか帰って来ないので、山に向かって駆け出しました。悲壮な顔つきでした。

 「さやか !! さやか !!」

 えっ、さやか。さやか、さやか。・・・私は何度も頭の中で反芻しました。母親は山陰に隠れても叫びつづけていました。私は念力を集中して、山陰を透視する準備をしました。体中が熱くなってきました。すると、手前の山が消えて、山の裏側が見えるようになりました。滝が見えました。周囲は美しく紅葉していました。
 母親は、滝つぼの前に佇んで、途方に暮れている様子でした。よく観ると、滝つぼの近くに小さなお堂があって、その中に墓らしきものが見えました。恐らく先祖代々のお墓が並んでいるに違いありません。私は、この母親が哀れに思えました。

 「なんとかできないものか」

 私は、しばらく思案していました。しかし、いい考えは浮かんできませんでした。

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7 降下した鳥

2015-01-25 00:18:35 | 日記


 娘が山陰に消えると、それを待っていたかのように上空に鳥が姿を現し、急降下してきました。鳥は山陰を目指していました。

 「お父さんだ !」

 私はすぐに気づきました。何故かというと、クウ、クウ、というくぐもった愛くるしい声を発していたからです。鳥に転生していた父親が娘に会いに行ったに違いないと私は感じました。
そうです、確かにそう感じたのです。再会の場面を見たい。続いてそういう思いになりました。父親は霊的な変身をして娘に前世の姿を現す・・・いや、ただ、病んでいる娘の姿を見て、勇気を与えたいのかも知れません。
 私は、ほの温かいものを感じながら風に吹かれていました。

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