とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

諏訪湖

2012-11-03 23:52:06 | 日記
諏訪湖





 諏訪湖の御神渡
 正確には諏訪大社上社から下社の方向へ向かうものを御神渡という。一説によれば、上社の男神の「建御名方命」(たけみなかたのみこと)が、下社の女神である「八坂刀売命」(やさかとめのみこと)に会いに行った足跡ともミシャグチ神が通った跡ともされており、神が諏訪湖へ降り立ったといわれる諏訪市側を下座(くだりまし)、下諏訪町側の、神が岸へ上がったとされる部分を「上座」(あがりまし)という。(Wiki)


 笙子さんに会ってから数日間、私は原因不明の腹痛と微熱が続きました。医者に診てもらいませんでした。何だか私にも来るべきものが来たような気持ちがしていました。やや気分がよくなってから笙子さんから電話がありました。


 弟さんの写真集どうもありがとうございました。個展が実現しなかったことが残念です。素晴らしい作品ばかりで感動しました。・・・それで私も宍道湖西岸に出かけて朝日を何日か見ました。日によって全く湖の色合いが違いますね。写真集の通りでした。

 そりゃどうも・・・、参考になりましたでしょうか。

 いや、参考というより私は絵に描きたくなりました。焼き物の色にするには微妙で繊細すぎます。いつかきっと描きます。

 そりゃ楽しみです。期待しています。

 実際に湖岸に佇んでいると、何か沖の方から囁きかけてくるような気がしました。

 えっ、どういうことですか。

 弟さんの気持ちが分かるような気分になりました。・・・どう言ったらいいですか、懐かしい声が・・・、母親が私を呼ぶような・・・、思わず湖に入りたくなるような・・・、そんな気分に襲われました。

 母親の声ですか。

 そんな声のような・・・。

 いや、私もそんな気持ちになりました。

 何かが繋がっているんでしょうね、きっと。

 えっ、どういうことですか。

 湖はどこかで繋がっているんでは・・・。

 えっ。

 私は日本画家ですから全国のたくさんの湖を見て回りました。景色は朝と昼と夜では随分違います。一番微妙な色合いを発するのはやはり夜から昼に移る朝方だと思います。

 私もそう思います。

 諏訪湖の御神渡を見たことがあります。これは水面の色の変化の美というより自然の神秘とか恐ろしさを感じさせました。

 えっ、諏訪湖。

 そうです、・・・本当に神様が渡っていかれるような・・・、ものすごい力を感じました。

 で、諏訪湖からはなにか聞こえてきませんでしたか。

 いえ、声というより全身を包み込むような力を感じました。冷たいけれど暖かい・・・、そんな力・・・。

 母の声は・・・。

 いえ、私には・・・。

 そうですか。

 諏訪湖に行かれたことがあるのですか。

 何度も行きました。

 何度も・・・、特別な思いがあるのですね。

 ええ・・・。

 よかったら話していただけませんか。

 私の母の故郷です。

 えっ、お母さんの・・・。

 そうです。私の母は諏訪の生まれです。・・・私を生んですぐに死にました。だから、湖を見ると諏訪を思いだします。
 
 そうですか。そうだったんですか。

 今までそのことはあまり人には話したことはありません。・・・すべてご縁だと思っています。

 ご縁・・・。

 そうです。ご縁には断ち切られてなおかつ蘇るものもあると思います。

東北関東大震災 緊急支援クリック募金←クリック募金にご協力ください。