3.11以後の日本

混迷する日本のゆくえを多面的に考える

清貧の専業主婦―橋本健二の戦後史の中の主婦

2011-07-23 19:34:22 | 女性の地位
「戦後史のなかの主婦ー特権から清貧へ」『生活経済政策』2011年7月号を読んだ。夫の階層所属に着目し、今日の主婦の経済状態と生活および意識の特徴について分析している。
新中間階級どうしの共働き、新中間階級の夫をもつパート主婦、新中間階級の夫を持つ専業主婦、労働者階級どうしの共働き、労働者階級の夫をもつパート主婦、労働者階級の夫をもつ専業主婦の6つの類型に分けると、新中間階級どうしがいちばん富裕であり、当然といえば当然だが、労働者階級の専業主婦は貧困率がもっとも高いとなっている。これも当然だろう。同じ階級同士で結婚することが多く、富裕で高学歴な新中間階級はますます富裕になるという循環がある。新中間階級の専業主婦の生活満足度が高い。すこし笑ってしまう。社会に出て厳しい環境で働いたことがなければ今の生活に対して高い要求もすることはなく、満足度は高くなるというもの。働かないでこの程度の生活が得られるなら満足ということだろう。

欲を言えば、新中間階級(橋本健二は階級が好きだね)も3類型ぐらいに分けるとよいと思う。コーホート分析する場合、1950年代生まれの大学卒や大学院修了は今とは数も違うし社会的な価値が違う。高学歴を短大卒以上に分類しているようだが、やや乱暴ではないかとおもう。その結果、新中間階級の妻の平均年収が382.1万円となっており、これはちょっと低いと思う。

食料品の購入の節約、外食費用の節約、生活満足度を出しているが、余暇活動の費用との相関を見ないとなんともいえないのではないか。

ともあれ、新中間階級共働きの富裕層率約30%、それに対して、労働者階級の専業主婦の貧困率22.2%をみると、女性の経済的安定性は、高学歴で新中間階級の夫と結婚し仕事を続けることによってもたらされるということだろう。

橋本健二の結びの言葉がシニカルで痛快だ。「清貧であり、将来に大きなリスクを抱えているのが専業主婦である。彼女たちの幸福が、長続きすることを祈らずにはいられない」
私も同じく薄氷を踏むような彼女たちの人生、その後半に経済的困窮という不幸が訪れることがないように願っている。
コメント
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