サッカー日誌 / 2010年10月01日


ザック監督就任記者会見から(下)


スポーツメディア論断想

共同記者会見の功罪
(8月31日 東京プリンスホテル)

◇多様なメディアが参加
 サッカーの記者会見は、他の分野に比べて参加者が多様である。新聞では一般紙のほかにスポーツ紙が加わる。出版関係ではサッカーの専門誌がいくつもあり、ふつうの週刊誌も関心を持っている。
 新聞社や出版社に属している記者のほかにサッカーでは「フリーランス」が特に多い。独立して取材活動をし、新聞や雑誌に寄稿しているライターである。官庁などの記者会見ではフリーランスを制限しているところも多いが、サッカーでは比較的自由である。
 テレビの取材も多い。ENG(Electric News Gathering)と呼ばれるニュース取材のカメラが10以上並ぶこともある。
 参加するメディアが多様だから、質問したい項目も多様である。そういうわけで、ザッケローニ監督の就任記者会見は、焦点の定まらないものになった。

◇取材対象が2人
 焦点の定まらなかった原因が、もう一つあった。それは質問すべき相手が2人だったことである。壇上には新監督探しを担当していた原博実・技術委員長も並んだ。つまり、ザッケローニと原博実の2人の記者会見だった。
 これは、取材する側にとっては都合が悪かった。
 たとえば、知りたいことの一つに「契約条件」がある。「何年契約か?」「報酬はいくらか?」「達成目標を要求しているか?」などである。
 これは、雇う側の協会と、雇われる側の監督から、それぞれ別に取材して、つきあわせて探り出したいところである。
 そういう質問に対する答えは原技術委員長が一人で引き取った。「契約の内容については、細部にわたって公表出来ません」とにべもなかった。

◇取材制限の口実にも
 「共同記者会見」は必要である。取材される側は、多くのマスコミの取材を一度でさばくことが出来る。都合の悪いことを突っ込まれるのを、かわすためにも都合がいい。
 一方、マスコミ側は、とりあえず共通に聞きたいことを、速やかに取材することができる。また、その後の取材の手がかりを得ることもできる。
 マスコミ側は、真実を知るために、さらに突っ込んだ取材をしなければならない。そのためには個別のインタビューが必要である。協会は大手の新聞社や有力な専門誌に対しては個別取材の申し込みに応じることが多い。サッカーのPRのためには大手のマスコミの協力は欠かせないからである。
 しかし、フリーランスや一般週刊誌に対しては「共同記者会見をしたから」と、取材機会があったことを口実に断ることがある。共同記者会見は取材制限の手段にもなりやすい。



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