ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 





長谷観音前交差点と三橋。神奈川県鎌倉市長谷2-13
2010(平成22)年5月14日
左の地図は『鎌倉市及近傍明細地図』(有限会社横須賀書籍共立社、昭和16年8月10日発行、部分)

由比ヶ浜大通りの西端、長谷観音前交差点に小さな橋が架かっている。鎌倉らしい和風の意匠で2本の親柱にそれぞれ「三橋(みつはし?)」「大正十五年四月成」と彫られている。関東大震災の復興期に架けられた橋だが、当時のままではなく、記念碑のように残されたものかもしれない。川はごく細いもので下水溝のように見えるが「稲瀬川」という万葉集にも歌われ、吾妻鑑にも出てくるという由緒ある川である。住宅街を曲流して由比ヶ浜に注ぐ。
上左写真では橋があるようには見えない。大仏記念煎餅の「恵比寿屋」の左手の電柱の左下が「三橋」の親柱で、欄干は工事用の看板で隠れてしまっている。
稲瀬川が姿を現すのは長谷観音前交差点の南側からで、その上流は埋められるか側溝か下水管に替わるかして、流路は地形から推定するしかない。ただ、交差点の北に「鎌倉ジェラート」という店があるが、この店の建物の形から店の裏を川が流れていたと分かる。水面が表れている部分もあるようだ。
三橋から下流は狭い堀川に成形されてはいるが、流路の曲がり具合や、戦前に架けられた橋が残されていることで、昔の流路のままの状態が残っているのだと思う。『鎌倉市及近傍明細地図』(昭和16年)の記載とも割と一致する。



左:三橋の下流(奥が上流、手前で東へ曲がる)。中:新宿橋上流側。
右:新宿橋(しんじゅくばし)。新宿橋は江ノ電長谷駅のすぐ東の踏切のすぐ北にある。平成5年3月に架けなおされたが旧親柱が1基残されている。



左:栄橋の上流。中・右:栄橋。由比ヶ浜大通りと国道134号を結んでいる路地に架かる橋。江ノ電の線路を南へ超えたところ。親柱の一つに「昭和三年十月」と彫られている。




左:下流の三橋から上流を見る。右:下流の三橋。長谷観音前交差点の橋と同名の橋がある。かってに「下流の」を冠して区別した。この橋の下流は国道134号に架かる「美奈能瀬橋」で、国道の海岸側に大正12年建立の「稲瀬川」の石碑が立っている。

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