ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 



東京証券取引所・本館。中央区日本橋兜町2。1981(昭和56)7月26日(3枚とも)

旧東証の建物というと、鎧橋際(正確には道路1本隔てている)の円筒形の正面の写真をよく目にする。この建物は本館で、この後ろにギリシャの神殿のような市場館があった。市場館は昭和2年に完成していて、本館は市場館が建った後に着工されたらしく昭和6年の完成。設計は横河民輔、施工は横河工務所。
この建物があった頃は兜町の顔であった。『日本近代建築の歴史』(村松貞次郎、NHKブックス、昭和52年)には「軟弱な地盤に独特の方法で建てたその構造には、いかにも合理的な横河の一面がうかがわれるとともに、それ以上にスケールの大きい茫洋とした全体のデザインに、“大人”として信頼と尊敬を集めていた横河の風貌を見ることができる」とある。やぼったい、と言ってしまってもいいかと思う。しかし信頼感とか親しみやすさは確かに感じる。


東証本館の南側

1984(昭和59)年10月には、この建物に代わって現在のビル「新市場館」が建ってしまった。さらに1999年4月30日で、人手による立会取引は廃止され、完全にコンピュータ化された。今、テレビの株式情報のバックに映し出される円形のディスプレイのある大きい空間がもったいないような……。

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