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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

乃木坂学院高校演劇部物語・86『時間厳守!』

2020-01-04 06:56:02 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・86   
『時間厳守!』  


 
「じゃ、発車します」

 と「自衛隊」のおじさんが言うまでの五分間の間にマリ先生は秘密のほとんどを話してくれた。
 マリ先生は木崎産業の社長のお嬢さん。で、会長のお孫さん。でもって、先生自体は会社を継ぐ気などサラサラなくって、好きなように生きてるってこと。
 残りは、動き出したトラックの荷台の向かい合わせになった席で聞かされた。
 正直驚いた。でも、これも先生なりのピリオドの打ち方だと理解した。これも乃木坂さんの影響かなあ……と、心の中でくり返してみた。

「え、これ自衛隊のトラックじゃないんですか!?」
「オレも驚いたよ」
 と、峰岸先輩も言った。これがスットボケであると分かるのは、この長い物語が終わってからのこと。この時は、地下鉄の駅を降りたら、このトラックに出くわし乗せてもらったという説明になっていた。
 運転してんのは、先生のお祖父さまの運転手さんで、西田さんといい、元は本物の自衛官。で、トラックはその西田さんが趣味で持ってる自家用車。「女性自衛官」の人は、西田さんのお孫さんで、わたしたちの先輩にあたること。むろん本物の自衛官ではなく、西田さんの趣味につき合って、わたしたちをA駐屯地まで送ったあと、空になったトラックを運転して帰る……ってことは?

「……で、先生達もいっしょなんですか!?」

「元陸曹長、西田敏夫。体験入隊者、自分を含め七名を引率してまいりました。なお六五式作業服を着用しております者は、自分の孫で、五六式輸送車の後送要員であります」
 書類を見せられた門衛の隊員さんは、二昔前の自衛隊のトラックに目を白黒させていたけど、駐車場を教えてくれて、あっさり通してくれた。むろんこの人数以外にもう一人便乗者がいることは、わたし以外知らないことだった。

 トラックを降りると、ちょっとしたグラウンドに集められた。
 わたし達の他に、どこかの企業の十人ばかりの若いグループが来ていた。新入社員の研修にしては少し早い。
 六人の迷彩服を着た隊員さん達が待っていてくれていた。きっと入隊式かなんかあるんだろうと思ったけど、なかなか始まらない。企業グル-プの二人が遅れて走ってきた。トイレにでも行っていたのだろうか。
 六人の迷彩服が気を付けをして、偉そうな人が朝礼台の上に上がった。
「時間厳守!」
 という言葉から始まり、励ましてんのか怒っているのか分からない訓辞のあと、それぞれ担当の教官と助教さんが自己紹介になった。助教さんが女の人だったのでビックリした。それまでは小柄な男の隊員さんだと思っていた。
 名前は大空真央さん。なんだか宝塚の女優みたいな人。

 それから、六人の迷彩服に連れられて、体験入隊専用の宿舎に連れていかれた。ちょっと田舎の小学校の校舎みたい。
「靴は、あの連中とは離して脱いで置くように。置き方は、わたしの真似をして」
 西田さんが小声で言った。
 部屋は四人部屋だ。
 女子四人と男子三人……乃木坂さんは、男部屋を指差して行ってしまった。
 大空さんが来て、荷物の置き場所を教えてくれ、すぐに奥の突き当たりの部屋に行くように言われた。
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