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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

小悪魔マユの魔法日記・104『オモクロ居残りグミ・4』

2019-11-24 06:40:51 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・104
『オモクロ居残りグミ・4』     



「そう、あなたは高峯純一さんの、娘さんなのね」

「はい……オモクロ始めるときは母の苗字使ってました」

 ロケの撤収の間、旧保健室を借りて仁和さんと加奈子と香奈の三人で話していた。
 教室の撮影で、ライトが倒れて、危うく加奈子が下敷きになりそうになった。
 それは、複合的な霊障で、廃校になった学校のダンス部の子たちの残留思念と、加奈子の父の高峯純一の生き霊のせいだと分かった。で、仁和さんは、香奈(マユのアバター)だけを同席させて、加奈子から事情を聞いていたのだ。

「父が、この世界に入ることに反対していたことは、なんとなく分かっていました。最初は、むろん反対だったし、わたしが押し切ったあとも、積極的には賛成してはくれませんでした。わたしも親の七光りだって言われるのやだったから……でも、お父さん、あんなに心配してくれていたんだ」
「カナちゃんには悪いけど、それは違うわ」
「え……でも父は、あのエキストラの子の口を借りて、心配してくれていました」
「心配な我が子に、ケガをさせようとするかしら」
「あれは、ダンス部の子たちの残留思念じゃ……」
「そういうことにしておけば、高峯さん自身は傷つかずにすむでしょう?」
「じゃ、あれは……」
「お父さんは、あなたに嫉妬してるのよ」

 一瞬、保健室がグラリと揺れた。

「図星のようね、カナちゃん……」
「「はい」」
 加奈子と香奈が一度に返事した。
「ああ、二人ともカナちゃんだったわね。仁科さん、カーテン閉めてくれる。カナちゃんはスマホを出して」
 二人とも言われたとおりにし、仁和さんは、ロッカーから白衣を取りだして着た。
「カーテンは結界……」
 香奈が独り言のように言った。
「で、この白衣が浄衣のかわり」
 仁和も独り言のように言うと、なにやら呪文を唱え、印を結んだ。加奈子は緊張してきたが、香奈(マユ)にはよく分かった。仁和さんの霊能力は、見抜くという点ではマユよりも優れているが、霊障を取り除くのは、マユの方が上手い。しかし、仁和さんの真摯なやり方にマユは任せてみようと思った。

「……えい!……これでいいわ、カナちゃん。お父さんに電話してごらんなさい」

「はい……でも、なにを話したら……お父さんとは、あまり話したことがないんです」
「ホホ、それがいけないの。正直に今度のこと自慢すればいいわ。お父さんは捌け口がないの。だから無意識に、こんな霊障をおこすのよ。正直に嫉妬させてあげれば収まる。いえ、収まるどころか、カナちゃんのいいアドバイザーになってもらえるわ」

 加奈子は言われるままに電話をした。父の高峯は、朝方から熱が出て、寝込んでいたようだった。
 電話の向こうで、こう言った。
――なんだか夢をみていた。
「どんな夢?」
――くそなまいきな女優が、へたくそな芝居をしやがるんで、意見をしようとしたら、無視しやがる。そこで、カッとしてスポットライトを蹴倒すんだ。
「ほんと……!?」
――そしたら、顔は分からないけど、監督みたいなのが出てきて意見しやがる。なんだか分が悪くなって、逃げ出したら、意識がとんじまって。なんだか胸苦しくって、冷や汗かいていたら、お前からの電話だ。で、なんだ。加奈子から電話してくるなんて、雨が……ほんとに降ってきたぞ。おい母さん、洗濯物とりこめよ!

 それから、加奈子は、ここ最近の自慢話をしてやった。
 
 すると高峯は、なにかとケチをつけはじめた。仕事のことで父と話などしたことのなかった加奈子には、とても新鮮だった。最後の方では、涙を流しながら父を罵っていた。
 むろん憎さからではない。初めて父と、心が通い合ったのである。
「そんなに文句あるんなら、東京出てきて、わたしの仕事っぷり観てからにしてよ!」
――そんなこと言ったって、こんな体じゃなあ。
「今は、いい電動車椅子がある。それ送ってあげるから来なさいよ!」

 そう、加奈子の父、高峯純一は、撮影中の事故で下半身マヒになり、引きこもりっぱなしだったようだ。
 加奈子の電話は、その父の心を開かせ、火を付けたようだ。
 仁和さんは、そんな電話の遣り取りを、ニンマリ笑って聞いていた。
 
 マユは、また一つ勉強できたことを嬉しく感じていた……。
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