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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・里奈の物語・56『ビターラプソディー・3』

2019-08-15 06:51:16 | 小説5
里奈の物語・56
『ビターラプソディー・3』        



 一を聞いて十を知る。

 実乃里さんは、まさにそうだ。
 岸和田風お好み焼き『岸自慢』で岸和田風焼きそばについてウンチクを語り、みんなの反応に接したことで、ガラリと変わった。

「それって、駿の悪いクセだよ!」

 第一声から違った。
 
 それまでは元気なハイティーンではあったけど類型的、エヴァンゲリオンのアスカ・ラングレーそっくりだった。
 それが、午後のテストでは『横須賀のドブ板通りを闊歩しているJK』風になってきた。
――学校サボってうろついていた彼を引き戻すためにドブ板に来た彼女。で、地元のヤサグレJKと関わっちゃって、その子たちの面倒も見ているうちに、ドブ板で顔になっちゃった……家は鉄工所。ナヨっとした兄貴が居て、お祖父ちゃんが大好き。お祖父ちゃんは、若いころに横須賀とか横浜でヤンチャしていたかな? キムチ入りもんじゃ焼きが好き。これって岸和田の焼きそばに通じるなあ、で、これはタイマンの果てに仲良くなった川崎の在日三世のJKに教えてもらった。関西風の薄い出汁は大っ嫌い! そんな感じ?――
 監督の田嶋さんが聞くと、立て板に水で実乃里さんは答えた。

 収録は、その日の夕方に終わった。

 あたしは主人公の妹の他、喫茶店のオネーサン、地元の小学生、OLさん、クラスメートの声をやった。
 五役もやってスゴイ!……と思われるかもしれないけど、要はその他大勢のモブ子さん。

「ありがとう、里奈ちゃんが居たから、開き直らずにイメージ膨らませられたわ」
 OKサインが出ると、実乃里さんは駆け寄ってきて、いきなりハグ!
「あ、ども……」
 いきなりだったことと、接触した実乃里さんの胸が大きいのに圧倒されて二音節の声しか出ない。
 それと……最後に録ったHシーンの声が、その……スゴイ。
 エクスタシーの絶頂でOKサイン。で、そのまま振り返ってハグ。すごい切り替え!

「絶対買う!」

 あくる日、拓馬に会うと、第一声がこれだった。
「でも、あたしってモブ子だよ」
「でも、秋野実乃里を開眼させたんやろ! それに五役もやったんやろ! 里奈って、エロゲ声優として前途有望やねんで!」
「そんな……でも、秋野実乃里さんて、すごいよね。それは確か!」
「確かも何も、秋野実乃里いうたらエロゲ声優のプリンセスやで!」
「え、そうなんだ……!」
 すごい人だとは思ったけど、エロゲマニアの拓馬が絶賛するほどの有名人だとは思わなかった。
「いやあ、エロゲの世界が一段と面白なってきたな!」
「ちょっと、声が大っきいよ……!」

 ナースステーションの看護婦さんに怖い目で睨まれた……。
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