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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・17『最新の鞄やろー!・1』

2019-01-23 06:36:28 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

17『最新の鞄やろー!・1』  


「だから、これは違うんだって……」

 何度言っても通じない。
 仕方がない、夕方の人気のない校舎。その廊下で意味ありげなゴミ袋とブラジャーを持っていたら変質者と思われる。
 だから桜子は逃げた。で、駆け下りた一階でつまづいて、追いかけたオレもつまづいて、倒れた桜子を襲うような格好で覆いかぶさってしまった。
 桜子一人の誤解を解くのも大変なのに、通りがかった八瀬にも見られて、大誤解されてしまう。
 やっと撚りが戻りかけている彼女と親友を一度に失うところだ。

「とにかく! とにかく! とにかく! 現場を見てくれよ!!」

 目玉が飛び出しそうに、喉がひっくりかりそうなぐらいに叫んで、なんとか階段下の旧演劇部の部室まで、二人を連れて行く。
「ほら、こんな状態なんだ!」
「そうだったのか………」
「そうだったのね………」
 期待していた反応だが、トーンが違う。
「重症だぜ、百戸……」
 桜子は、ショックで声も出ないようだ。
「下着泥棒やって、こんなところに隠していたのか……」
 親友の目は、もう怒ってはいなかったが、覚せい剤使用の現場を見たような情けなさだった。
「違うって、これは、昔の演劇部の……」
 そこまで言って気が付いた。押し花のようにペッタンコになった下着は、どれも新品だ。
「新品フェチなの…………?」
「違うって!」
「ちょっと様子が変だ……」
 八瀬は、やっとおかしいと思い始め、自分で下着の地層を発掘しだした。
「これは……」
 段ボールに貼られたメモに気づいた。

――第48回コンクール用小道具・山のようなインナー(取り扱い注意)――と書かれている。

 さらに発掘すると、袋に入った写真が出てきた。
「舞台いっぱいに下着を吊るしてる……」
「おお……タイトルそのものが『山のようなインナー(取り扱い注意)』なんだ」
「変なタイトル」
「……でも、これって県大会で優勝してるんだ……」
 写真の一枚は、優勝のトロフィーと賞状を持った三人の演劇部員。三人とも女子だということを除けば、デブとホドホドとヤセッポチという点で、オレたちと似ている。
「このおデブさん、主役だったんだ……」
 桜子が写真を繰っていて結論付けた。確かに、どの写真にも下着の山の中で熱演するデブ子が写っている。
「……おい、これ」
 八瀬が、折りたたんだ模造紙を取り上げた。

 模造紙は会場の一言コーナーに貼られたもののようで、カラフルなマジックでいろんな感想が書かれている。

「評判よかったみたいね、誉め言葉ばっかり」
 自分の事のように、桜子の目が優しくなった。こういう桜子が好きだ。
「感想のところどころに、赤丸がしてあるなあ……」
「ほんとだ……」
 赤丸は、言葉ではなく、文字に付けてある。
「普通、重要な言葉にアンダーラインとかするわよね……」
 数分眺めていて、気が付いた。赤丸の字を繋げると、こう読める。

 さ・い・し・ん・の・か・ば・ん・や・ろ・ー!

「最新の鞄やろー!」ってなんだろう?……三人は顔を見合わせた。 
 


🍑・主な登場人物

  百戸  桃斗……体重110キロの高校生

  百戸  佐江……桃斗の母、桃斗を連れて十六年前に信二と再婚

  百戸  信二……桃斗の父、母とは再婚なので、桃斗と血の繋がりは無い

  百戸  桃 ……信二と佐江の間に生まれた、桃斗の妹 去年の春に死んでいる

  百戸  信子……桃斗の祖母 信二の母

  八瀬  竜馬……桃斗の親友

  外村  桜子……桃斗の元カノ 桃斗が90キロを超えた時に絶交を言い渡した


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