ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)
第131話《髑髏ものがたり・3》さつき ![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/e2/9c3aa75d5ada7576ca4a506de2541517.jpg)
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さつきぃ……さつきぃ……
わたしを呼ぶ声で目が覚めた。
もう夜が明けはじめ、机の招き猫の招福の文字も仄かに読めて、目玉を巡らすとカーテン越しの外もほんのりと明るい。
え?
その微かな光をバックライトにして帝都の制服が立っている。
一瞬さくらかと思った。だが、さくらがこんなに早く起きて身支度しているわけがないという常識が頭をよぎる。
「あたしよあたし、桜子よ」
「あたしよあたし、桜子よ」
「桜子ぉ……ひいお祖母ちゃん!?」
「大きな声出さないで、さくらが起きてしまう」
「大丈夫、さくらは爆弾でも落ちてこない限り目が覚めないから。ねえ、さくら」
「う~ん……」
プ~~~~~
さくらは寝返りを打ったかと思うと、オナラで返事した。桜子ひい祖母ちゃんがお腹と口を押さえて笑うのを我慢している。
「でも、ひい祖母ちゃん。ひい祖母ちゃんは、さくら専門じゃなかったの?」
プ~~~~~
さくらは寝返りを打ったかと思うと、オナラで返事した。桜子ひい祖母ちゃんがお腹と口を押さえて笑うのを我慢している。
「でも、ひい祖母ちゃん。ひい祖母ちゃんは、さくら専門じゃなかったの?」
「ヒヒヒ (*´艸`*) ……そのひい祖母ちゃんてのは止してくれる。せっかく女学生の時のナリで出てきてるんだから」
「じゃ、なんて?」
「さくらって呼ばれてたけど」
「それじゃ、さくらと区別つかないよ」
「じゃ、桜子。ちょっと呼びにくいけど」
「桜子……さん。御用はなーに? 言っとくけど、あたしに憑りついても、さくらみたいに上手く歌えないからね」
「そうじゃないわ。さつきが車の中に入れてる兵隊さん」
「あ……ああ!」
もしやと、カーテンの隙間からポーチのホンダZを見た。
すると、車の傍に、鉄兜の兵隊さんが立っている。
目が合ったような気がしたので、目礼すると折り目正しい敬礼が返ってきた……鉄兜の下の顔が無かった。
もしやと、カーテンの隙間からポーチのホンダZを見た。
すると、車の傍に、鉄兜の兵隊さんが立っている。
目が合ったような気がしたので、目礼すると折り目正しい敬礼が返ってきた……鉄兜の下の顔が無かった。
でも、不思議に怖さは湧いてはこない。
「恥だっておっしゃって、お顔も見せてくださらないし、名前もおっしゃってくださらないの。あたしが分かるのは、階級章で歩兵の中尉さんだってことぐらい。ご本人は日本に帰れただけで嬉しい。身元なんか探さずに、川の土手にでも埋めてもらえば結構だって……でも、それじゃ、あまりにお可哀想。今は科学が進歩してるんだろ。なんとか元のお顔を復元して身元を確認してご遺族のもとにお返ししてあげられないかしら」
「恥だっておっしゃって、お顔も見せてくださらないし、名前もおっしゃってくださらないの。あたしが分かるのは、階級章で歩兵の中尉さんだってことぐらい。ご本人は日本に帰れただけで嬉しい。身元なんか探さずに、川の土手にでも埋めてもらえば結構だって……でも、それじゃ、あまりにお可哀想。今は科学が進歩してるんだろ。なんとか元のお顔を復元して身元を確認してご遺族のもとにお返ししてあげられないかしら」
「う~ん……そうだ、そうニイに相談してみる。自衛隊だから、なんとか面倒みてくれると思う!」
「ああ、それいいかもよ! あ、夜が明けるわ。名残惜しい、さつきとももっとお話ししたかったんだけど、あたし、あたしね……」
サッシから差し込んできた光を浴びて、ひい……桜子さんは消えてしまった。
そこで目が覚めた。横を向くと、さくらがお尻向けて寝ていた。カマされてはかなわないので、早々に起きる。
「あら、早いのね」
ダイニングに下りるとお母さんに言われた。お父さんが朝ごはんを食べていたので、久々に三人で朝ごはん。
サッシから差し込んできた光を浴びて、ひい……桜子さんは消えてしまった。
そこで目が覚めた。横を向くと、さくらがお尻向けて寝ていた。カマされてはかなわないので、早々に起きる。
「あら、早いのね」
ダイニングに下りるとお母さんに言われた。お父さんが朝ごはんを食べていたので、久々に三人で朝ごはん。
あの話をしようかと思ったけど。車の中に髑髏があるなんて言ったら、お母さん卒倒しちゃう。まあ、あとでそうニイに電話で話そう。
「あ、そうそう、惣一休暇で帰ってくるって」
「ほんと!?」
「あ、そうそう、惣一休暇で帰ってくるって」
「ほんと!?」
「うん、船が急にドッグ入りとかでハンケン上陸だって」
「ハンケン?」
「半舷上陸だよ、乗組員の半分がオフになることだ」
「おお!」
「やっぱり、お兄ちゃんが帰ってくると嬉しい?」
「あはは、まあね(^_^;)」
渡りに船とも言えず、滅多にしない愛想笑いでごまかした。
渡りに船とも言えず、滅多にしない愛想笑いでごまかした。
☆彡 主な登場人物
- 佐倉 さくら 帝都女学院高校1年生
- 佐倉 さつき さくらの姉
- 佐倉 惣次郎 さくらの父
- 佐倉 由紀子 さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
- 佐倉 惣一 さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
- 佐久間 まくさ さくらのクラスメート
- 山口 えりな さくらのクラスメート バレー部のセッター
- 米井 由美 さくらのクラスメート 委員長
- 白石 優奈 帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
- 原 鈴奈 帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
- 坂東 はるか さくらの先輩女優
- 氷室 聡子 さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
- 秋元 さつきのバイト仲間
- 四ノ宮 忠八 道路工事のガードマン
- 四ノ宮 篤子 忠八の妹
- 明菜 惣一の女友達
- 香取 北町警察の巡査
- クロウド Claude Leotard 陸自隊員
- 孫大人(孫文章) 忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
- 孫文桜 孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
- 周恩華 謎の留学生