大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

REオフステージ(惣堀高校演劇部)148・ミリーの憂鬱

2024-09-11 09:27:14 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
148・ミリーの憂鬱 ミリー 




 ああ……なんやろうねえ……どうでもいいことなんやけど。

 カチャ ガラガラガラ~

 ここのところ部室のカギを開けるのは、わたしの仕事になってる。

 いまの部室は二階の仮部室。

 部室棟が建て替えのために使えんようになって、須磨先輩が使ってるタコ部屋に移ったのが一学期の五月の終わりころ。
 ミッキーが入部して手狭になって、一時期図書室に替わったけど、喋られへんしお茶もでけへんので、本館二階の空き部屋を臨時に使わせてもらってる。

 たいていは啓介が職員室まで鍵をとりにいってるんやけど、ここのところは、わたしの仕事。

 まあ、ええねんけどね。

 ここのとこ、啓介にはカノジョができた。

 一年生の伊藤香里菜とか言うらしい。二学期も終わりに近いというのに、まだ一年生らしい初々しさを残してる、かいらしい子。

「あ、それは恋をしてるからやで(^_^;)」

 セーヤンが言う。

 どうやら、二人が付き合うについては、このセーヤンとトラヤンが後押しというか、多少のきっかけを作った……と睨んでる。

 まあ、ええけど。

 部室に入って、啓介のノーパソを開けてみる。

 カメラを指で隠してエンターキーを押すと、スリープになってるノーパソが点く。

 レイラとかアケミとかいうメイドたちが、思い思いに寛いでるというか準備中。お茶を挽いてるというほどやないけど。

 いっしゅん指をどけたろかと思う。

 指をどけてカメラが活動し始めると、この『グローバルクラブ』は営業中ということになって、カメラの前の人物に気が付いて『お帰りなさいませぇ、ご主人さまぁ♡』とゲームが再開される。で、顔認証でご主人様の啓介やないことが分かると、メイドたちはパニックになって、最悪ゲームオーバーになる。

 ノーパソをそっ閉じしてお茶の用意をしようと思うと、流しの三角コーナーが出がらしのお茶でいっぱい……。

 夏やないから、すぐに臭うということは無いけど、ゴミ箱に出がらしを捨ててゴミ袋の口を結んでゴミ捨て場に持っていく。部室はくつろぎの場やから、きちんとしとかならあかんしね。

 西側の階段を下りて校舎の外に出るとゴミ捨て場への道。西側の階段は渡り廊下の隣で、瞬間、渡り廊下を横切ることになる。

 あ

 視野の端に二つの車いす。

 そうや、このごろ千歳は車いすの男子と話してることがある。相手の車いすは織田とかいう二年生。

 千歳は真面目な子やから、ゴミ袋ぶら下げてるわたしのことに気が付いたら「すみませーん」とか言うて部室に直行しよる。

 階段までは一秒ちょっと。さり気なく歩いて階段を下りる。

 帰りは東の階段を使おう。

 
 ブン!


 ゴミをほる手に勢いがついてしまう。

 あ!

 下手をするとゴミ袋が弾けて悲惨なことになる!……ああ、なんとか無事にゴミ袋は先客の間に収まった。

 やれやれ……部室に戻ってお茶でも淹れようか、須磨先輩もそろそろ姿を現すだろうし。

 踵を返して部室に戻ろうとすると、ポケットでスマホが震える。


 着信ありをクリックして……え!?


 足が震えた。


 田中さんのお婆ちゃんが危篤!!?



 
☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  
  • 沢村留美        千歳の姉
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口 織田信中 伊藤香里菜
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉美乃梨(須磨の元同級生) 大久保(生指部長)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 巡(めぐり)・型落ち魔法少... | トップ | 馬鹿に付ける薬 014・野営の準備 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説7」カテゴリの最新記事