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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

小悪魔マユの魔法日記・113『三つ葉のクローバー・2』

2019-12-03 06:21:16 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・112
『三つ葉のクローバー・2』    



 ここは、T大学情報工学部の実験室。三人は、司(つかさ)準教授が作った3Dのバーチャルアイドルのプロトタイプを見に来たところである。

「あの曲は歌えるようになってる?」
「ええ、ボ-カロイドとしては完成してます。なんとかミクの十倍はすごいですよ。どうぞ、ここをクリックすると歌います」
「じゃ、わたしが」
 仁和が笑顔でクリックした。

 《ハッピークローバー》

 もったいないほどの青空に誘われて アテもなく乗ったバスは岬めぐり
 白い灯台に心引かれて 降りたバス停 ぼんやり佇む三人娘

 ジュン チイコ モエ 訳もなく走り出した岬の先に白い灯台 その足もとに一面のクロ-バー
 これはシロツメクサって、チイコがしたり顔してご説明

 諸君、クローバーの花言葉は「希望」「信仰」「愛情」の印 
 茎は地面をはっていて所々から根を出し 高さおよそ20cmの茎が立つ草。茎や葉は無毛ですぞ

 なんで、そんなにくわしいの くわしいの

 いいえ 悔しいの だってあいつは それだけ教えて海の彼方よ

 ハッピー ハッピークローバー 四つ葉のクロ-バー
 その花言葉は 幸福 幸福 幸福よ ハッピークローバー

 四枚目のハッピー葉っぱは、傷つくことで生まれるの 
 踏まれて ひしゃげて 傷ついて ムチャクチャになって 生まれるの 生まれるの 生まれるの
  
 そうよ あいつはわたしを傷つけて わたしは生まれたの 生まれ変わったの もう一人のわたしに

 ハッピー ハッピークローバー、奇跡のクローバー 

「とてもいい声だ……元気で艶があって、チャーミングで……」
「それでいて、どこか大人で、奥行きの向こうにペーソスを感じさせる……」
 光会長と黒羽ディレクターは、ため息をついた。
「で、この子は、いつ発表したらいいのかい?」
「それは……まだ分からない。まずは48番目の子自身のことが、なんとかならなきゃ」


「拓美……マユさん、少し疲れてません」

「ハハ、病人に言われちゃ世話無いよね」
 拓美は、限界まで潤にエネルギーをやったこともあるけれど、実際疲れていた。紅白歌合戦への出場が決まったオモクロも神楽坂24もいっしょだ。少女グループの流行と言っても早すぎる。でも仁科香奈の姿をしたマユに言ったら、こう言われた。
――元は、拓美、あんたが頑張りすぎたから。でしょ、拓美が頑張らなきゃ仁科香奈なんて存在もしない。オモクロもあんなにヒットしなかっただろうし、神楽坂だってできてないわ。みんな、あんたのとばっちりよ。
 そのときのマユの鼻が膨らんだのを、拓美はおかしく思い出した。
「レコード大賞……新人賞はもらえますよ」
「さ、どうだろ。オモクロも神楽坂もがんばってるからね」

 そのとき、ドクターが病室に入ってきた。

「結果が出たよ、明後日退院してもいい。それにしても奇跡的な回復ぶりだなあ!」
「あ、ありがとうございます!」
「礼を言うなら、自分の体力と運だね」
 潤は、花が咲いたように明るい笑顔になった。拓美は花を咲かせた喜びを感じた。
――これでいいんだ。
「わたし、復帰したら《GACHI》がんばりますからね!」
「お、オヤジギャグ!」
「ちがいますよ。たまたま、新曲が《GACHI》だし、きもちもガチだし!」
「で、復帰したら、もう一つあるわよ」
「え、なんですか!?」
「それは、復帰してのお楽しみ」
「もう、先輩って意地悪!」
「ハハ、これくらいの楽しみがなきゃ、助けた意味がない!」

 退院間近の病室は、明るい笑い声に満ちた……。
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