小悪魔マユの魔法日記・112
『三つ葉のクローバー・2』
ここは、T大学情報工学部の実験室。三人は、司(つかさ)準教授が作った3Dのバーチャルアイドルのプロトタイプを見に来たところである。
「あの曲は歌えるようになってる?」
「ええ、ボ-カロイドとしては完成してます。なんとかミクの十倍はすごいですよ。どうぞ、ここをクリックすると歌います」
「じゃ、わたしが」
仁和が笑顔でクリックした。
『三つ葉のクローバー・2』

ここは、T大学情報工学部の実験室。三人は、司(つかさ)準教授が作った3Dのバーチャルアイドルのプロトタイプを見に来たところである。
「あの曲は歌えるようになってる?」
「ええ、ボ-カロイドとしては完成してます。なんとかミクの十倍はすごいですよ。どうぞ、ここをクリックすると歌います」
「じゃ、わたしが」
仁和が笑顔でクリックした。
《ハッピークローバー》
もったいないほどの青空に誘われて アテもなく乗ったバスは岬めぐり
白い灯台に心引かれて 降りたバス停 ぼんやり佇む三人娘
ジュン チイコ モエ 訳もなく走り出した岬の先に白い灯台 その足もとに一面のクロ-バー
これはシロツメクサって、チイコがしたり顔してご説明
諸君、クローバーの花言葉は「希望」「信仰」「愛情」の印
茎は地面をはっていて所々から根を出し 高さおよそ20cmの茎が立つ草。茎や葉は無毛ですぞ
なんで、そんなにくわしいの くわしいの
いいえ 悔しいの だってあいつは それだけ教えて海の彼方よ
ハッピー ハッピークローバー 四つ葉のクロ-バー
その花言葉は 幸福 幸福 幸福よ ハッピークローバー
四枚目のハッピー葉っぱは、傷つくことで生まれるの
踏まれて ひしゃげて 傷ついて ムチャクチャになって 生まれるの 生まれるの 生まれるの
そうよ あいつはわたしを傷つけて わたしは生まれたの 生まれ変わったの もう一人のわたしに
ハッピー ハッピークローバー、奇跡のクローバー
もったいないほどの青空に誘われて アテもなく乗ったバスは岬めぐり
白い灯台に心引かれて 降りたバス停 ぼんやり佇む三人娘
ジュン チイコ モエ 訳もなく走り出した岬の先に白い灯台 その足もとに一面のクロ-バー
これはシロツメクサって、チイコがしたり顔してご説明
諸君、クローバーの花言葉は「希望」「信仰」「愛情」の印
茎は地面をはっていて所々から根を出し 高さおよそ20cmの茎が立つ草。茎や葉は無毛ですぞ
なんで、そんなにくわしいの くわしいの
いいえ 悔しいの だってあいつは それだけ教えて海の彼方よ
ハッピー ハッピークローバー 四つ葉のクロ-バー
その花言葉は 幸福 幸福 幸福よ ハッピークローバー
四枚目のハッピー葉っぱは、傷つくことで生まれるの
踏まれて ひしゃげて 傷ついて ムチャクチャになって 生まれるの 生まれるの 生まれるの
そうよ あいつはわたしを傷つけて わたしは生まれたの 生まれ変わったの もう一人のわたしに
ハッピー ハッピークローバー、奇跡のクローバー
「とてもいい声だ……元気で艶があって、チャーミングで……」
「それでいて、どこか大人で、奥行きの向こうにペーソスを感じさせる……」
光会長と黒羽ディレクターは、ため息をついた。
「で、この子は、いつ発表したらいいのかい?」
「それは……まだ分からない。まずは48番目の子自身のことが、なんとかならなきゃ」
「拓美……マユさん、少し疲れてません」
「ハハ、病人に言われちゃ世話無いよね」
「それでいて、どこか大人で、奥行きの向こうにペーソスを感じさせる……」
光会長と黒羽ディレクターは、ため息をついた。
「で、この子は、いつ発表したらいいのかい?」
「それは……まだ分からない。まずは48番目の子自身のことが、なんとかならなきゃ」
「拓美……マユさん、少し疲れてません」
「ハハ、病人に言われちゃ世話無いよね」
拓美は、限界まで潤にエネルギーをやったこともあるけれど、実際疲れていた。紅白歌合戦への出場が決まったオモクロも神楽坂24もいっしょだ。少女グループの流行と言っても早すぎる。でも仁科香奈の姿をしたマユに言ったら、こう言われた。
――元は、拓美、あんたが頑張りすぎたから。でしょ、拓美が頑張らなきゃ仁科香奈なんて存在もしない。オモクロもあんなにヒットしなかっただろうし、神楽坂だってできてないわ。みんな、あんたのとばっちりよ。
そのときのマユの鼻が膨らんだのを、拓美はおかしく思い出した。
「レコード大賞……新人賞はもらえますよ」
「さ、どうだろ。オモクロも神楽坂もがんばってるからね」
そのとき、ドクターが病室に入ってきた。
「結果が出たよ、明後日退院してもいい。それにしても奇跡的な回復ぶりだなあ!」
「あ、ありがとうございます!」
「礼を言うなら、自分の体力と運だね」
潤は、花が咲いたように明るい笑顔になった。拓美は花を咲かせた喜びを感じた。
――これでいいんだ。
「わたし、復帰したら《GACHI》がんばりますからね!」
「お、オヤジギャグ!」
「ちがいますよ。たまたま、新曲が《GACHI》だし、きもちもガチだし!」
「で、復帰したら、もう一つあるわよ」
「え、なんですか!?」
「それは、復帰してのお楽しみ」
「もう、先輩って意地悪!」
「ハハ、これくらいの楽しみがなきゃ、助けた意味がない!」
退院間近の病室は、明るい笑い声に満ちた……。
――元は、拓美、あんたが頑張りすぎたから。でしょ、拓美が頑張らなきゃ仁科香奈なんて存在もしない。オモクロもあんなにヒットしなかっただろうし、神楽坂だってできてないわ。みんな、あんたのとばっちりよ。
そのときのマユの鼻が膨らんだのを、拓美はおかしく思い出した。
「レコード大賞……新人賞はもらえますよ」
「さ、どうだろ。オモクロも神楽坂もがんばってるからね」
そのとき、ドクターが病室に入ってきた。
「結果が出たよ、明後日退院してもいい。それにしても奇跡的な回復ぶりだなあ!」
「あ、ありがとうございます!」
「礼を言うなら、自分の体力と運だね」
潤は、花が咲いたように明るい笑顔になった。拓美は花を咲かせた喜びを感じた。
――これでいいんだ。
「わたし、復帰したら《GACHI》がんばりますからね!」
「お、オヤジギャグ!」
「ちがいますよ。たまたま、新曲が《GACHI》だし、きもちもガチだし!」
「で、復帰したら、もう一つあるわよ」
「え、なんですか!?」
「それは、復帰してのお楽しみ」
「もう、先輩って意地悪!」
「ハハ、これくらいの楽しみがなきゃ、助けた意味がない!」
退院間近の病室は、明るい笑い声に満ちた……。