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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・トモコパラドクス・24『水島クンのアドベンチャー・3』

2023-09-21 06:26:48 | 小説7

RE・友子パラドクス

24『水島クンのアドベンチャー・3』 

 


 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺されてしまう。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された!

 


「いいえ、あれは宇宙戦艦キイ。ヤマトの拡大発展系……昭二クンが乗っている」

 ここが海なら、キイは沈没寸前の姿であった……。

 キイは、コントロールを失って不自然に傾いだまま、こちらを向いた。

「なるほど、ヤマトより大型ね。兵装も違うわ」

 紀香が呟いた。ヤマトと違いショックカノン砲が連装五十サンチに強化され、パルスレーザー砲も長射程に変わっていた。しかし、そのほとんどが破壊され、伝家の宝刀である破動砲も。双発の戦闘艇が突っこんで、栓をしてしまっている。艦内に残るエネルギー反応は、昭二の微弱な霊体反応だけであった。

「水島クン、まだ生きてる!」

 友子は、感動のあまり矛盾した感動を口にした。

「ハハ、もともと幽霊だもん」

 マネが、余裕の笑みで答えた。

「でも、霊波動とかあるでしょ」

「それが、あの帝国軍の弱点。やつらは、その宗教概念から、霊の存在を認めないの。だから、わたしたちのように水島クンのことは、奴らには分からない」

「それで、どうしようと言うの? もう、味方は、この艦だけなんでしょ」

「艦だなんて、生ぬるい普通名詞で呼ばないで。この艦はヤマトもムサシも、目の前のキイをさえ凌ぐ、超々々宇宙戦艦オワリなのよ」

「気持ちは分かるけど、あんまりオメデタイ名前じゃないわね(^_^;)」

「この食い違う会話って、いいわね。わたし好きよ。地球人の、そういうとこ(^▽^)」

 マネの笑みが楽しげに変わった。

「オワリは、漢字では尾張。旧日本海軍の大和級後継艦として、概念設計までされた艦よ。ちなみにあのキイは紀伊。でも、今はまさにキイよ。この戦闘の」

「どういうこと?」

「キイの自爆装置が生きている。そのスイッチを水島クンに押してもらう」

「そんなことしたら、この艦まで吹き飛んでしまうわよ」

「だいいち、敵艦隊は、ここから四百万キロも先なのよ!」

「そこで、二人の力を借りたいの……」

 マネは、左右の手で紀香と友子の胸を掴んだ。

 ムギュ

「「きゃ(゚д゚#)!!」」

――三人のコアエネルギーでキイの自爆装置をショートさせ、亜空間に送ったうえで爆沈させるの、我慢して――

 並の状況なら女同士でもセクハラだが、敵に察知されないよう、アナログな手段で情報を送ってきたのだ。

――いくわよ!――

 マネの、ダイレクトサインで、三人の念動力(サイコキネシス)は、一つの力となってキイに送られた。

 

 キイの姿が消えた。

 

 実際は、時速一光年の速度で、敵艦隊のど真ん中に突っこみ、惑星一つを吹き飛ばすほどの力で爆発したのだが、爆発は亜空間に送られてから起こったので、こちらからは消えたようにしか見えないのだ。

 結果は、海王星の陰から出たときに分かった。オワリのレーダーから敵艦隊の姿は消えていた。

 

「これで、よかった?」

 

 水島クンが、見慣れた旧制中学の姿で立っていた。

「水島クン、いつの間に!?」

「幽霊は残留思念だからね。だれかが思い出してくれたら、物理的な距離なんか関係ない」

「そうなんだ……」

 友子は、改めて感心した。

「でも、合図をしないことが合図とは考えたね」

 水島クンは、感心して言った。

「どういうこと?」

 紀香が、好奇心一杯に聞いてきた。

「海王星に来るまでにね、水島クンに伝えておいたの。三パターンのシチュエーションを」

「最悪のシチュエーションでしたけどね」

「でも、アナログな幽霊さんが、そんなデジタルなことできるんですか?」

「義体を与えてあげたの。むろん戦闘で機能の九十九%は失われたけど、自爆装置とのシンクロは最後まで失われなかった。で、予定通りってわけ」

 水島クンが、寂しそうな顔で、思い出に耽っている。

「あの義体、よかったなあ……やっぱ、生きてる体はいいですよ。それにハンサムだったし。女性乗組員からもモテましたよ……もう一回、義体になれませんか?」

「そうねえ……じゃあ」


「「かっわいい(♡ˊωˋ♡)!」」


 紀香と友子の黄色い声が揃った。

「予備の義体はこれしか残ってなくって……(^_^;)」

 水島クンは、なんと女の子の義体をあてがわれた。艦内アテンダントの汎用義体だ。

「こ、これが、僕ですか……!?」

 フェミニンボブにミニのワンピになった水島クンが驚いた。

「これで我慢して。アテンダントだから、この二人のようなスペックはないわよ。空も飛べないし、骨格もただの強化チタン合金。スペシウム光線も、小型破動砲もなし。まあ、並の人間より、ちょいましってとこ。言語サーキットは女性に。居住環境は、サービスで設定。身元は……トモちゃんのクラスメートってことで。わたしじゃ面倒見切れないからねぇ、苗字はマンマで名前は……素体のデフォルトで我慢してね」

 パチン

 マネが指を鳴らすと設定は完了した。

 ミニのワンピは乃木坂学院の制服に、髪は黒のお下げに変わった。

「わたし……水島結衣?」

 水島君の新しい人生が始まってしまった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊

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