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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

スーパソコン バグ・6

2019-11-13 06:50:42 | ライトノベルベスト
スーパソコン バグ・6
『兄の病室』        

 
 
 
 麻衣子は、商店街の福引きで、パソコンを当てて大喜び。そこにゲリラ豪雨と共にやってきた雷が直撃。一時は死んだかと思われたが、奇跡的にケガ一つ無し。ダメと思ったパソコンが喋り始めた。不可抗力で、パソコンに「バグ」という名前を付けてしまう。そして生き甲斐のソフトボールができなくなった。でもって、アニキの龍太にもバグの存在を知られてしまい、そのアニキが事故で入院してしまった!


 なにか物言いたげな彼女の気配が気になり、麻衣子はもう一度部屋に戻った。

「なにか言い残してる?」
「あ……お願いしていいかな?」
 1/4サイズのバグは、本体であるパソコンの上に座ってモジモジしている。
「病院の行き帰りで、できることなら」
「病院の複雑ゴミのところに、壊れた『お掃除ロボット』が捨ててあるの。それを拾ってきてくれないかなあ……」
 恥ずかしそうにバグが言った。
「なんに使うの?」
「その子も、雷で故障して捨てられたんだけどね、あ、病院のコンピューターの記録から拾ったの……」
「ははあ……バグのお仲間なんだ。いいよ」
「あ、麻衣子が思ってるようなことじゃないから!」
「いいって、いいって、一人で居るときはバグだって寂しいだろうからね」
 気の良い麻衣子は、手のひらに、メモして忘れないようにした。

 病院は、バグがスマホにリンクしてナビしてくれるので、直ぐに分かった。

 そして、アニキの秘密も直ぐに分かった。
 病院に優奈さんが来てくれていたのである。ドアを開けて直ぐに分かった。明らかにお母さんがオジャマ虫であるが、お母さんは、そのことにちっとも気づいていない。そのもどかしさで、直ぐに優奈さんだと知れた。
「優奈さんですよね? 妹の麻衣子です。兄がお世話かけます。あ、お母さん頼まれた物、このバッグに一式入ってるから」
「ごくろうさん。でね……」
 お母さんの長話を、優奈さんはうまくかわした。
「噂はリョウタからも聞いてたわ。落雷じゃ大変だったのよね」
「奇跡的にピンピンしてます。まあ、普段のこころがけでしょうね、アニキ、どんなぶつかり方したのよ? 当てた車とか分かってるんでしょ、警察とかきてないの?」

「それがね」

 お母さんと優奈さんの言葉が重なった。一瞬間があって、年の功で、お母さんがしゃべり出した。
「停まってる車に自分でぶつかったのよ。スマホ見ながら、で、その拍子に十センチの路肩踏み外して、この通り」 
「アハハ、ばっかじゃネ。ふだん、あたしに歩きスマホ注意してるくせに」
 麻衣子は、つい数時間前オッサンに同じ注意をされたのを棚に上げて笑ってしまった。
「おまえが笑うんじゃねえよ!」
「それがね……こないだ、リョウタに冷たくして、それが気になってスマホとにらめっこしていたって。なんだか申し訳なくて」
「申し訳なんか悪くないですよ。だいたいアニキは、その……バカだから」
 さすがに、コンドームの件は口にはしなかった。龍太も、後ろめたさがあるのだろう、言い返してはこなかった。
 アニキの男としての値打ちはよく分かっているので、優奈の女の値打ちが際だって見えた。
 要するに釣り合わないのだ。
 優奈さんはちょっと崩したフェミニンボブで、細身のジーパンがよく似合う行動派に見えるが、話し方などから、落ち着いてオクユカシイ、イッパシの女性を感じさせた。
 麻衣子はちょこっとだけ雑談して失礼した。お母さんも入院の手続きのために、やっと腰を上げた。
「お母さん、手続き済んだら、さっさと帰るのよ」
「どうして?」
「オジャマ虫なの!」
「あ、そういうこと。じゃ、いっそう居なくっちゃ。ありゃ、基本的に龍太の片思いだからね。こんなことで負担に思ってもらっちゃ、気の毒だからね」
「まあ、そこは年の功に任せるけどね」
「ませたこと言ってんじゃないよ。これでも龍太の親なんだから、責任持たなくちゃね。あ、帰りに晩ご飯買っといて」
「へいへい、メンチカツはやめとくね。もう雷はこりごりだから」
 
 お母さんとは、一階のロビーで別れた。

 さあ、バグの頼まれごとやらなくっちゃ。と、ゴミ置き場に向かう麻衣子であった。




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