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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・71』

2019-07-20 05:52:42 | はるか 真田山学院高校演劇部物語

はるか 真田山学院高校演劇部物語・71



『第七章 ヘビーローテーション 9』

 しかし、わたしのカオルと、タマちゃん先輩のスミレの絡みは難産だった。
 
 最初は、通じた喜び(利用できる人間として)。 スミレは、ただ薄気味悪く嫌っている。それが互いの違いに気づき、関心を持ち、価値観の違いからケンカをしたり、おもしろく思ったり、そして友情が生まれ、お別れの時がやってくる。その別れの痛みと切なさ……。
 字で書くと簡単そうなんですけどねぇ……。


 その翌週の木曜に、秀美さんは病院に来た。

 正確には、来ていた。
 九月に入り、短縮授業。部活の無い日だったので、学校から直行したんだけど、秀美さんの方が先に来ていたのだ。
「お父さん……」
 ノックもせずに病室に入った。

 ほんの一瞬、フリ-ズした……三人とも。

 秀美さんは、ベッドの脇に腰掛けて、お父さんと話していた。
 仕事の話らしいことは、その場の空気でわかった。
 ただ、距離の取り方が、二人の心の近さとして、チクッとした痛みをともなって、わたしには感じられた。

 距離には人間関係が反映される。かねがね大橋先生から言われていることだ。
 物理的距離が心理的距離を超えると、人は落ち着かなくなる。
 
「新しい商品、はるかちゃんも見てくれる」

 わたしがホンワカ顔をつくろう前に、秀美さんに先を越された。
「うわー、かわいい!」
 女子高生の常套句しか出てこなかった。
 しかし、その商品見本たちは、ほんとうにイイ線いってた。
 シュシュ(ポニーテールみたく髪をまとめるときの飾りみたいなの)のシリーズだ。
「次の春ものにね、ちょっとチャレンジしてみようと思って」
 水玉、花柄、ハート、チェック柄、といろいろ。
「今の子って、はるかちゃんみたいにセミロングとかが多いじゃない。それって、表情隠れちゃうのよね。あ、悪いってことじゃないのよ。時にはオープンマインドなイメチェンしてもいいんじゃないかって、そういうネライ」
「わたしも、ヒッツメにすることもあるんですよ。稽古のある日はお下げにしてますし」
「そうなんだ。でもさ、そういうのをさ、もっとポジティブにさ……」

 あっという間にポニーテールにされた。

 シュシュは群青に紙ヒコーキのチェック柄。
「お、いけてるじゃないか。実際身につけてもらうとよく分かるなあ」
「このシュシュ……」
「そう、あのポロシャツがヒント。商標登録されてないの確認できたから作ってみたの。そうだ、はるかちゃんモニターになってくれないかなあ」

 というわけで、二十個ほどのシュシュをもらった。もちろんモニターとして。

 ポニーテールというと、あの二人だ……。

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