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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・200『今日から万博』

2025-04-13 10:25:28 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
200『今日から万博』   




「ああ……やっと戻ってきたぁ……」


 学校から帰ると、顔も見ないでしみじみ言うお祖母ちゃん。だから「ただいま」も引っ込んでしまって口ごたえっぽくなる。

「いつもどおりだよぉ」

「え、ああ、おかえり。いや、そうじゃなくてね、右手の調子がね、やっと戻ってきたんだよ」

「え、あ、ああ……って、明くる朝には戻るって言ってなかった?」

 先週の日曜、花見に出かけたら、岬の灯台でユリアに襲われ、お祖母ちゃんは右手を切り落とされたんだ。だけど、カタチ的にはその場で回復、機能的にも「朝には戻るよ」と言ってその通りになっていた。

「ヘヘ、魔法で補助してたんだ。それが、やっと普通に動かせるようにね……なんだよ、その顔」

「ちゃんと言ってよね、家のこととか、いくらでもメグリがやるんだから!」

「アハハ、お祖母ちゃんにも意地ってもんがあるからね、うん、もう大丈夫なんだから。そんなに怖い顔しないの」

「だって……」

 お祖母ちゃんは何百年生きて来たのか分からないくらい長生きの魔法少女だけど、エルフの魔法使いほどじゃない、やっぱり少しずつ衰えてるんだ。少し鼻の奥がツンとしてきた。

「ところでさ、あのソ連の魔法少女、変だとは思わなかったかい?」

「なにが」

 照れ隠しに話題を変えたんだと思って、ツッケンドンな返事になる。

「あいつの本性は下半身だっただろう」

「あ、うん、腰と足だけで逃げて行ってびっくりした」

「あれもフェイクだったんじゃないかと思えてきたのよ」

「ええ?」

「いや、本性が下半身ということに間違いはないんだけどね。ただ逃げるだけなら、あれだけの魔法少女なんだ、やりようはいくらでもある」

「そうなのぉ……」

 自然に向かいのソファーに腰掛ける。

「剣が残っていなかっただろ?」

「あ」

 そうだ、千切れた上半身は剣を握ってはいなかった。

「仮にも特級魔法少女の右腕を切り落としたんだ。奴の技量も相当なんだろうけど、あの剣の力はその上をいくのかもしれない」

 それって……(^_^;)

「負け惜しみじゃないよ」

 よ、読まれてる。

「メグリ、おまえも気をお付け、ナースチャのことはみんな気を付けてるけど万全じゃないからね」

 そうだった、ペコさんなんか片付いた後にやってきたもんね……。


 昨日は、あたしもお祖母ちゃんも、それっきりユリアのことには触れなかった。


 翌朝って今朝のことなんだけど、リビングに下りると、お祖母ちゃんは居なくて、テレビが点けっぱなし。

 あたしはテレビなんか見ないんだけど、お祖母ちゃんは昭和のクセというか習慣が残っていて、どうかすると一日中テレビが点いている。

『いつから並んでいらっしゃるんですか?』

 レポーターが先頭の人にマイクを向けた。

『あはは、昨日の午前十時からです(^○^;)』

 照れたように関東の〇〇県からやってきた人は答える。

「そうか、万博は今日からなんだ……」

 去年、安倍晴天に拉致られるようにして建設途中の万博会場に行ったことを思いだす。一周2キロの外壁回廊を歩いて妖たちの侵入を警戒していたんだ。

 そうだ、アキラどうしてるかなあ。

 大屋根の上で出会った白いワンピースの女の子(119『妖退治・5・アキラ 夏の思い出』)。正体を聞くと昔の潜水艦の船霊、イタリア、ドイツ、日本と三回も国籍変わって、それでも万博の大屋根で妖たちの見張り番をやっていた。

 そう言えば、岬で大砲を撃って助太刀してくれたのも船霊の戦艦石見。彼女も、ロシアと日本と所属が変わっていた。

 寄るべのない魂とかに親和性があるのかもしれないね、わたしは。

 なんて思ってしまったせいか、目の前に安倍晴天が現れた!

「あ、もう、びっくりするなあ! 今日はまだ窓も開けてないよ!」

「いやいや、グッチとも仲良くなれたから、窓が開いてなくても来られるようになったんだよ。いやあ、目出度い目出度い(^▽^)!」

「目出度くないわよ、うちは女だけの家なんだよ、それに絣の着物だし!」

 晴天は口の上手い奴で、その力の根源は、変に似合ってる『言いくるめ絣』の着流しだ。油断がならない。

「これは晴天のユニホームだ他意はないよ」

「どうだかぁ」

「そうじゃなくて、今日は情報を伝えに来たんだ」

「情報?」

「ユリアが持っていた剣は、高松塚古墳の青さんが言っていた宝剣だ」

「ええ!?」

「ああ、そうなんだ。盗掘者から巻き上げたか、あるいは時空を超えてあいつ自身が盗んできたものなのか。とにかく、あれが始皇帝の宝剣に間違いはない」

「ええと……それで……」

「取り返すんだろ?」

「あ、ああ……」

 そうだ、青さんと約束したんだった(;'∀')。

「ということで、がんばれ(^▽^)」

 ドロン

 言いくるめ絣は笑顔の残像を残して消えてしまった。

 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  


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