大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 104『茶姫の制服』

2023-01-23 14:28:42 | ノベル2

ら 信長転生記

104『茶姫の制服』市 

 

 

 突然の茶姫の亡命に扶桑は大慌てだった!

 

 そういう印象が扶桑国内にも、三国志の国々にも広まった。

 双ヶ岡に軍勢を並べたのも、扶桑が大慌てしたための非常呼集だと思われた。その上で、扶桑の緊急動員の凄さも三国志に見せつけてもいる。

 念の入ったことに、茶姫の歓迎会も、ドタバタと二転三転して、未だに行われていない。

 大々的な歓迎晩さん会であっても、一見質素な茶席のそれであっても、段取りよくやってしまえば―― 扶桑はかねてから茶姫の亡命を計っていた ――ということになって、いたずらに三国志を刺激してしまう。さすがだよね。

 

「そんな風にお見通しというのは可愛くないかもよ~(^_^;)」

 

 あっちゃんが頭を掻く。

「あんたが、鎧を選ぶのに手間をとらせたのも、そういうことだったんでしょ!」

「いやいや、いくら神さまといっても、ファッションのことは本人次第だからさぁ。わたしとしては、選択肢を並べてあげるしかできないわけでぇ……あ、いっけな~い、もう寝る時間だわ」

「え?」

 たしかに時計は十時を回っている。

「さっき晩御飯食べたとこなのに」

「楽しいお喋りだったから、時間のたつのも忘れてたのよ。じゃね~」

 そう言うと、あっちゃんは一筋の光になって自分の祠に戻って行った。

 

「ああ、いいお湯だったぁ」

 後ろで声がしたかと思うと、茶姫が髪を拭きながらリビングに入ってきた。

「そうだ、茶姫、お風呂に入ってたんだ!」

「え、ああ、一緒に入るつもりなら待ってたのに」

「いえいえ、ちょっと、ボンヤリしてて忘れてた」

 どうも、あっちゃんに化かされていたみたい。

「忘れてくれるぐらいがいい、居候としては気楽でいいぞ……ん、誰かいたのか?」

 さすがは茶姫、ソファーの微妙な窪みで人が居たのを読み取ってしまう。

 読まれたからには正直に言う。ついこないだまでは、魏の女将軍と近衛の士官という間柄だったんだからね。

「ああ……うん。本人が居るところで紹介しようと思ってたんだけどね、熱田大神って神さまがいたの」

「え、狼の神さま!?」

「いや、大いなる神さまと書いて大神。いちおう兄貴の守り神なんだけどね」

「あ、それでは、一度挨拶しておかねばならないだろう。ちょうど風呂にも入ったところだ、正装してくるぞ」

「いやいや、うちでは『あっちゃん』て呼んでるくらい軽い……いや、気さくな神さまだから、またでいいわよ」

「そうかぁ、シイがそう言うなら言葉に甘えておくが」

「それよりも、ほんとうに生徒の扱いでいいの? 茶姫なら先生どころか、校長だって務まりそうなのに」

「ここは扶桑だ。学ぶことの方が多い。こちらこそ、学院と学園の両属にしてもらって嬉しい限りなんだ。気にしないでくれ」

「そっか、じゃあ、うちの制服は出来てるから、着てみる?」

「ああ、喜んで!」

 

「学院の制服も仕上がってるぞ」

 

「あ、帰ってたんだ」

「茶姫の制服が出来たというので、街まで取りに行っていた」

「いや、すまんなニイも」

「気にすることはない、俺も早く見てみたかったからな。起きていてくれてよかった」

「それでは、着替えてくるぞ!」

「「うん!」」

 

 その夜は遅くまで茶姫のファッションショーになった。

 大人びた茶姫に制服は幼すぎるのではと、ちょっとだけ心配したけど、いやはや、このわたしよりもよく似合っている。

 いつの間にか、ガラス戸の向こうからあっちゃんも覗いていたけど、知らないふりをしておいた。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟

 

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パペッティア・002『そんな妹は俺より一つ年上だ』

2023-01-23 09:36:10 | トモコパラドクス

ペッティア    

002『そんな妹は俺より一つ年上だ』晋三 

 

 


 妹は俺より一歳年上だ。

 名前は舵夏子、都立神楽坂高校の二年生。


 兄である俺が言うのもなんだけど、可愛い奴だ。


 そこらへんで女子高生を百人ほど集めたら一番か二番に入るくらいの可愛さだ。

 百人と言うところがミソだ。この程度の可愛さなら学年で二三人、全校生なら五六人は居る。

 昔の渋谷や原宿を歩いていたら掃いて捨てるほど……ではないけど、五分も突っ立っていればお目にかかれる。

 身長:165cm 体重:48㎏ 3サイズ:82/54/81

 なかなかのスタイルだと思うけど、そのルックスと同じくらいの確率で世の中には存在している女の子だ。
 
「お兄ちゃん、いよいよだよ!」

 ち、近い……けど、仕方ないか。

 夏子は、三十センチという至近距離に迫って俺に誓う。兄妹の仲なのにオカシイ……ま、勘弁してやってくれ(;^_^)、あとで理由は言うからな。

 

 えと……夏子の性格を短く言うと、以下のようになる。

 

 反射が早くて言動がいちいち適格なくせに全体がどこか抜けている。オッチョコチョイでどこか残念な少女、でも、そのオッチョコチョイで残念なところが危うくも可愛い……と思ってしまうのは兄妹だからか……あ、シスコンってわけじゃじゃねえからな(^_^;)

「荷物の始末は大家さんに頼んだ。学校から帰ってきたらいっしょに出るからね……あ、お水忘れてる」

 夏子は短いスカートを翻して台所に行くとジョウロに水を汲んでベランダに。プランターに水をやって戻ってくると、再び三十センチ。

「じゃ、行ってくるね!」

 いつもの挨拶をして通学カバンを抱え、パタパタと玄関へ、瞬間迷ってキョロキョロ。

「よし」

 小さく気合いを入れて揃えたローファーに足を伸ばす、履いたと思ったら「あ!」っと思い出して、また上がってきてガスをチェック、窓とベランダの施錠を確認して、まとめた荷物を指さし確認。

「よし!」

 また気合いを入れ、少し乱暴にローファーを履きなおしてノブに手を掛ける。

「あ!」

 またまた戻ってきて、ズッコケながら台所に入って、一杯の水を汲んで俺の前に置いた。

「よおおし!」

 三度目の正直、ローファーの踵を踏みつぶし、ケンケンしながら外に出る。

 ガチャン!

 玄関の閉まる音。


―― あ、おはようございます ――

―― おはよう、なっちゃん ――

 お隣りさんとのくぐもった挨拶の声。

―― オワ! ご、ごめんなさい ――

 はんぱに履いたローファーをきちんとしようとして足をグネってお向かいさんにしがみ付いたようだ。

―― だいじょうぶ、なっちゃん(^_^;)? ――

―― アハハハ、大丈夫です。あ、プランターのお花、お願いしますね。ベランダはイケイケにしときましたから ――

―― うん、うちのといっしょに世話しとくからね ――

―― ありがと、おばさん、じゃ、行ってきます! あいて! ――

―― 気を付けてね! ――

―― はい、あははは ――


 愛想笑いしてビッコの気配が遠のいていった。

 そんな妹は俺より一つ年上だ。さっきも言ったよな。

 え、意味が分からん?

 ええっと……俺は二年前から年を取らない。だから一つ違いの妹にはこの五月に越されてしまった。

 つまりな、俺は二年前に死んだんだ。俺は、いま仏壇の中に居る。

 仏壇には線香と決まったものだが、火の用心を考えて妹は水にしている。プランターに水をやるついでだ。

 横着なのか合理主義なのか分からん奴だ。


「火の用心だし、水は全ての根源だからね、お線香よりもいいんだぞ」

 最初に水にした時に、ちょっとムキになった顔で言った。

 その前日、教室で弁当を食っていると「ナッツ、アロマでも始めた?」と友だちに言われた。

 今どきの女子高生は、線香とアロマの区別もつかない。で、その翌朝には水に変えられた。

 確かに火の用心だし、神棚とかには水だしな、と、アロマがどうとかはさておいて納得してやっている。

 役所とNPOだかの戦災孤児支援でなんとかなってんだけど、夏子は戦災孤児って呼ばれ方が嫌いだ。

 ただ嫌いなだけじゃ意地を張ってるだけみたいだから、新聞配達のバイトをやってる。

 運動神経のいい奴で、特に自転車やスケボーとかやらせると水際立っている。

 昨日も配達のショートカットをやろうとして、爆撃痕の谷底に転落しそうになった。並の運動神経ならオダブツになって俺の横に並んでるんだろうけど、5メートル落ちたとこで踏みとどまって、自転車ごとジャンプさせてバイトモの幸子を感動させた。

―― お兄ちゃん、守ってくれたんだね ――

 幸子と別れてから、ポツンと心の中で呟きやがった(^_^;)。嬉しいんだけど、ホトケさんにそんな力はねえよ。

 

 死んでからは「釋善実(しゃくぜんじつ)」というのが俺の名前なんだけど、この名前は坊さんぐらいしか呼ばない。

 夏子は「お兄ちゃん」と呼ぶ。ときには「晋三」と呼び捨てにされる。

 

 そんな妹の夏子と、ときどき俺の、長い闘いの物語の始まりってわけだ。


 

☆彡 主な登場人物

  • 舵  夏子       高校一年生 自他ともにナッツと呼ぶ。
  • 舵  晋三       夏子の兄
  • 井上 幸子       夏子のバイトともだち
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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・93『解隊式』

2023-01-23 07:22:47 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

93『解隊式』 

 

 

 乃木坂さんの「手助け」もあって、わたしの班は二等賞!

 企業グル-プのみなさんは、お気の毒に又も腕立て伏せ(^_^;)。

 教官の皆さんは拍手してくださったけど、例の教官ドノはいささか首をひねっておられた。どう見てもか弱い女子高生四人(「マリちゃん」はにせ者だけど)が、現役の自衛隊員並の時間で、教則通り……ってか、昔の日本陸軍式の壕を掘ったんだから。

 得意技の女子高生歓喜(ウソー! マジ! ヤダー! キャハハ!)でゴマカシて昼食。

 昼食は、なんと炊事車がやってきた! 

 二トンぐらいのトラックなんだけど、荷台のところに、二百人分一度に作れるというキッチンセットが入ってんの。荷台の壁をはね上げると、そのまま庇になって、荷台の下からは二十人分の食卓と椅子が出てくるという優れもの。

 メニューは、焼きそばの上に焼き肉がドーンと載っかってんの。それに豚汁のセット。昨日のカツ丼といい、うな重定食といい、自衛隊はド-ンと載っけるのが好きなよう。むろんわたし達もね♪

 わたし達は、炊事車の椅子に予備の折りたたみの椅子を出してもらって、全員いっしょに昼食。これが体験入隊最後の食事……たった二日間だったけど、なんだか、とっても仲間って感じがした。教官の人たちも企業グル-プさんたちもね。

 いっしょに走ったり行進したり作業をしたり。西田さんにはずいぶん助けてもらったけど、基本は自分たちでやった。
 わたしは部活の基本と同じだと思った。乃木坂さんは、そんなわたし達を、ちょっと羨ましげに見ていたよ。

 見ていたというと、やはり教官ドノの視線を感じる。これはおっかなかった。

 忠クンのことは気になったけど、アカラサマに見たり話しかけるのははばかられた……って、そんな浮ついたことじゃなくって、昨日からの忠クンの心の揺れに対してはハンパな言葉はかけられなかったんだ。


 食事が終わりかけたころ、演習場の林の中から戦車が二台現れた!


「ワー、戦車だ!」「カッコイイ!」「一台でもセンシャなんちゃって!」

 思えば小学生並みのはしゃぎようでありました。

「あれは、戦車ではない」

 西田さんが呟き、里沙がメモ帳を出した。

「八十九式装甲戦闘車ですよね、通称ライトタイガー。歩兵戦闘車!」

「よく知ってんね」


 西田さんが驚いた。メモ帳を覗き込むと、『陸上自衛隊装備一覧』の縮尺コピーが貼り付けてあった。さすがマニュアルの里沙。


 で、昼からは、そのソウコウセントウシャってのに乗せてもらって、演習場を一周。見かけのイカツサのわりには乗り心地はよかった。ただ外の景色が防弾ガラスの覗き穴みたいな所からしか見えないのには弱りました。

「変速のタイミングが、やや遅い」

 西田さんは、自分で操縦したそうにぼやいておりました。

 宿舎に帰ると、企業グル-プさんの部屋から、悲鳴があがった。


『なんだよ、これは!』『こりゃないだろ!』『たまんねえなあ!』

 続いて教官ドノの罵声。

『おまえ達が、満足に寝床の始末もできんからだ。やり直し!』

「企業グル-プ、ベッドめちゃくちゃにされてた……」

 里沙が偵察報告をした。

「なんとぉ……(゚ロ゚;)」「最後まで自衛隊は容赦がないねえ……(ーー゛)」

 夏鈴と抱き合って廊下に出した首をひっこめた。

「フ……自衛隊だけじゃないぞぉ」

 マリちゃんが呟いた。


 その後、解隊式があって、修了書とパンフの入った封筒をもらった。


 中隊長さんが短いけどキビキビした訓辞をしてくださった。団結力と敢闘精神という言葉を一度だけ挟まれていた。大事な言葉の使い方を知っている人だと感じた。

 忠クンが感激の面持ちで、それを聞いていたのでホッとした。

 私服のジャージに着替えると、宿舎の入り口のところで、教官ドノが怖い顔をして立っていた。

「これを……」

 サッと小さなメモを渡された……これって……だめだよ、わたしには忠クンが……。

「貴崎マリさんに」

 なんだ、わたしをパシリに使おうってか……でも、頬を染めた教官ドノの顔は意外に若かった。ウフフ。

「ウフフ」

 不敵な笑みを浮かべるマリちゃんは異世界系アニメの最後に生き残った魔女みたいだった。

 帰りの西田さんのトラックの中。みんな、ほとんど居眠りしている。わたしは、タイミングを待って、教官ドノのメモを渡した。その結果が、この不敵な笑み。

「ホレ、まどかにも、大空さんから」

―― 演劇部がんばってくださいね。公演とかあったら知らせてください。都合が着いたら観させていただきます。わたしのカラーガードもよかったら見に来てください。 真央 ――

 助手席では運転をお孫さんに任せた西田さんが手紙を読んで神妙な顔。封筒にはA師団の印刷……きっと夕べのことなんだろうと思った。前の空席には乃木坂さんが座っていて、静かにうなづいた。

 見上げると、申し分のない日本晴れ。

 夕べ降った雪は陽炎(かげろう)となって何ものかを昇天させる聖霊の徴のよう。その陽炎の中、トラックは、東京の喧噪の中へと戻っていきました。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 貴崎 サキ       貴崎マリの妹
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • 乃木坂さん       談話室の幽霊
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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