大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 101『陣触れアラート』

2023-01-06 17:05:33 | ノベル2

ら 信長転生記

101『陣触れアラート』信長 

 

 

 スマホで甘味の献策をしている。

 

 扶桑(転生国)に来てけっこうな年月になる。

 信玄や謙信の相手をし、こないだは隣接する南の大国三国志の偵察もやってきた。

 ここいらで、少しばかり好物の甘味……いまはスィーツというのか? それを学校と家事の合間に食べるぐらいいいだろ?

 

 ワッフルサンド……古いのか? 古いものをサンドイッチに? まあ、温故知新ということもある。チェック。

 フルーツ大福……これも古いのか? 大福と言うからには饅頭の類か。温故知新、チェック。

 わらび餅ドリンク……わらび餅は好きだ、でも飲むくらいに緩いのはどうなんだ? ドリンクというのは液体だろ?

 カヌレ……なんだこれは!? 甲冑の装飾に使う菊座のような、べ、別に他の菊座を思い出したわけではないぞ!

 チーズキンパ……海苔巻きにチーズを入れる? シャリが茶色だぞ。まあ、試してもいい。

 トゥンカロン……ビスケットみたいなのの間にクリームやアンコみたいなのが挟んである。まあ、機会ががあれば。

 台湾カステラ……うん、カステラは好物だ! 南国の台湾とある、濃厚な甘さを想像するぞ、ジュルリ。

 

 次の揚げドーナツに目を移そうとすると、急にアラートが鳴った!

 

 ビョォ~ ビョォ~ カンカン ビョォ~ ビョォ~ カンカン

 法螺貝と陣鐘を掛け合わせた陣触れアラートだ。

―― 一級警戒! 一級警戒! 学院・学園の御先手以上の生徒はただちに装備を整え双ヶ岡に集結せよ ――

 軍事上の緊急事態なのでフル装備で双ヶ岡に出張れということだ。

 双ヶ岡というのは、俺と市が二宮忠八の紙飛行機に乗って飛び立った丘だ。

 南からの侵略軍が来た時は、ここに陣を布いて迎え撃つ。その双ヶ岡に終結というのだから、三国志が大挙奇襲を仕掛けてくるということだ。

 アラートの音声が石田三成というのが気に入らんが、城の陣触れよりも早いというのは褒めてやっていいかもな。

「お蘭、具足を持て!」

 習慣で蘭丸を呼んでしまう。

 この家の住人は俺と市だけだ、ドゥー イット ユアセルフ!

 さて、具足はどこだ?

 

 上さま、これに!

 

 見覚えのある黒伊予札の二枚胴、佩楯には金の日輪、紛うかた無き近習頭森蘭丸の装束ではあるが面体が違う。

「なんのコスプレだ」

「ひどいなあ、雰囲気出そうと工夫したのに」

「ずいぶん無沙汰ではないか、神を名乗るなら、もう少し手助けをしろ」

「神が助けるには、いろいろ条件がいるのよ。天佑神助とか自助努力とか言うでしょうが」

「まあ、いい。敦子、さっさと具足を着せろ」

「敦子って、あんたの奥さんじゃないわよ……どれにする? 信長の鎧っていっぱいあるから」

 ガシャガシャガシャ

「全部出す奴があるか!」

 リビングに二十領以上の鎧が出現した。

「トレンドは、この紺糸縅黒伊予札段替胴鎧(こんいとおどしくろいよざねだんがえどうよろい)マント付きだけど……」

「マントは暑いぞ、邪魔だし」

「じゃ、鉄錆地南蛮胴」

「重い」

「じゃあ、信長公記(しんちょうこうき)に出てくる紺糸縅胴丸」

「地味だ」

「これは、どう? NHKの太閤記で高橋浩二が着てた大鎧」

「大鎧は五月人形みたいだ」

「注文きついなあ……」

「だいたい、転生して女の身体なんだから、男用の鎧ってどうなんだ?」

「こういうのはフリーサイズだからさあ……」

「あ、これなんかよさげであるぞ」

「え、ああ……こんなのがあったんだ」

 ウエストのところで絞り込まれていて、胸のところが張り出している。小札の幅が狭く、力強さの中にも繊細なシルエットで雰囲気だ。

「これは、大山祇神社大宮司(おおやまづみじんじゃだいぐうじ)の娘の鶴姫の鎧です……」

「なにをジロジロ見る!?」

「いや、これ、日本一ウエストの細い鎧なんですよ……」

「それにする、着せろ!」

「鎧って着るのも着せるのも大変だから、着てから『やめた』は無しよ」

「分かっておるわ!」

 それでも五分で着終わると、表に用意された馬に跨って双ヶ岡を目指す。ようやく城の法螺貝もビョービョーと鳴り始めて、盛り上がってきた。

 

 待ってよぉぉ! 市はこれから用意するんだからぁぁ!

 

 後ろの方で市の怒鳴り声が聞こえるがムシムシ!

 ハイッ

 馬腹を蹴るが、やっぱりウエストが……きつい(-_-;)。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟

 

   

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せやさかい・378『今日から三学期!』

2023-01-06 13:28:30 | ノベル

・378

『今日から三学期!』さくら    

 

 

 今年もよろしくお願いしま~す。

 

 三日の日に挨拶に伺ったとはいえ、三学期最初の登校日、きちんとお店のドアを開けてご挨拶しとく。

「こないだはありがとう、また遊びに来てくださいねぇ(^_^;)、モーニング二つ、アメリカンでございます、そちらさまは……」

 トレーを二つも持って、それでも半身を捻って挨拶してくれはる瑞穂さん。片手で挨拶のマスターはドリップから目を離せません。

 ペコリと頭を下げて駅に急ぎます。

 

「未成年て感じやないねえ」

 

 信号待ちで思わず感想が口をつく。

「うん、十個は上に見える」

 マスターが「あ、瑞穂はまだ未成年だから(n*´ω`*n)」なんて言うもんやさかい、うちらは気になってた。

 今どきの未成年はあいまいや。十八で選挙権あるし、なにか契約するにしても親の同意もいらんようになるし。

「いったい、いくつやねんやろか?」

 未成年には昔ながらの十八歳未満ちゅうのと二十歳未満がある、もし、十八歳未満いうことやったら、うちらとの年齢差は一つか二つ、頼子さんと同い年。

「ちょっと、それはねえ……」

 あれへんやろと留美ちゃん。

 二十歳未満にしても、十九歳。

 マスターはテイ兄ちゃんと大学の同窓やさかいにニ十七か八……ありえんことやないけど、テイ兄ちゃんがショック受ける程度には珍しい。

 ま、そういう興味もあってご挨拶、ちなみに提案したのは留美ちゃん。

 留美ちゃんも、かなりアグレッシブなキャラになってきたぜぃ( ⑉¯ 皿¯⑉ )。

「あ、青になった」

 揃って横断歩道に足を踏み出して、婦警さんが目につく。

「あ、あの婦警さん」

 クリスマスの日に見かけた小柄な婦警さん(369『留美ちゃんが立ち止まるわけ』)。

「フフ、やっぱ、かわいい」

 婦警さんの制服制帽は体にあったサイズやねんやろけど、ベルトやら拳銃やらはフリーサイズ。

 なんか、中学生がコスプレしてるみたいで可愛い。

 ピピピピピ!

 激しくホイッスルを吹いて自転車のオバチャンを制止。信号無視は見逃してません。

「あの感じは、五年はやってるねえ……」

 気負いもためらいもない職務執行、思いのほかのベテランなんかもしれません(^_^;)。

 

 明けましておめでとうございます。

 

 ペコちゃん先生が言うと、ほんまに「おめでとう!」いう感じがする。

 ペコちゃん先生は、学校の近所の神社の娘さん。

 子どもの頃から巫女服に身を固めて、正月やらお祭りやら神社の手伝いしてきたから決まります。

 返すうちらは「おめでとうございます」が2/3、「おはようございます」が1/3。

 メグリンは「おは、めでとうございます」と微妙に」とちってる。

 ウフ(* ´艸`)。

 留美ちゃんが口を押える。見るとソニーは舌を噛んで、ポーカーフェイスにはしてるけど、痛そう。

 せやけど、神社の娘がミッションスクールで先生やってるというのは、なんや寛容の精神を地で行ってるいう感じで、ほんまに目出度いです。

 政治家も宗教家も、こんな感じでやってくれたら、世界は平和になると思う。

 

 新年の挨拶をして提出物を出して、講堂に集合して始業式。

 

 いつもは、始業式が先やねんけども、暖房の効きが悪いので温めるのに時間をとったということらしい。

 中学では、そもそも講堂(体育館兼用)に暖房なんか無かったさかい、暖房にまで気を配る学校にビックリ。

 せやけど、暖房がめちゃくちゃ気持ちええさかい、半分以上寝てしまう(ごめんなさい)。

 フワァ~~(´Д`)。

「ちょっと」

 留美ちゃんに小突かれる……ヤバイ、演壇の院長先生と目が合うてしもた!

『ということで、三学期も気を緩めることなく、しっかりと頑張っていきましょう!』

 そんな、うちの顔見んといてください。みんなクスクス笑てるし(*゚O゚*)。

 

 始業式で笑われた以外には、大きなドジもせんと帰りの昇降口。

 

 ローファーに履き替えて、上履きをロッカーにしまおとしたら殺気を感じた!

 ドタドタドタ!

 前生徒会長の百武真鈴が血相を変えて駆け下りてくる。そんで、その美しくも怖い瞳は、しっかりうちの顔を見てる!

「よかった! 間に合ったぁ!」

「うわ!?」

 最後の三段は飛び降りて、うちのことをガッチリと掴まえた! 掴まえられた!

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

 

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・76『男子生徒の姿』

2023-01-06 07:39:01 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

76『男子生徒の姿』 

 


「「「うわー(*゚◇゚*)」」」

 

 三人そろって歓声をあげた!

 一瞬、談話室がセピア色に輝いて『英国王のスピーチ』の時代のようになった。秩序と気品と知性、品格、そしてちょっとウィットに満ちた空間に。

 チ……チチ……チチ……チチ……プチン

 でも、そのシャンデリアは数回点滅して切れてしまった。

「やっぱ、ボロ」

 夏鈴がニベもなく言った。

 最後に点滅したとき……それが見えた。


 一瞬。

 ピアノに半身を預けるようにして立っている男子生徒の姿が。


「あ……」

「どうかした?」

「え、ああ……ううん」

「へんなの。まどか、閉めるよ」

 夏鈴と頷いて、里沙が電気を落としてドアを閉じた。


 すると、微かに聞こえた……タイトルは思い出せない。

 だけど、優しく、懐かしいメロディーが。


 あの子が、あの男子生徒が唄っている……切れ切れに聞こえる歌。歌詞は文語調でよく分からない。

 里沙と夏鈴には言わなかった。

 言っても信じてもらえないだろう……二人に聞こえている様子がないもの。
 
 それにね、あの男子生徒の制服は今のじゃない。

 ……玄関のロビーに色あせて飾ってある旧制中学の時代のそれだったよ。

 頭の中で、そのメロディーを忘れないように反芻(はんすう)しながら部室に戻った。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 貴崎 サキ       貴崎マリの妹
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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