大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・296『校内探検・購買と食堂』

2022-04-14 10:45:04 | ノベル

・296

『校内探検・購買と食堂』さくら 

 

 

 おっきい!

 

 入学式も終わって、生徒としての日常生活が始まると、いっそう感じる学校の大きさ!

 敷地は中学の倍ほどもある。体育館と講堂も別々やし。

「講堂じゃなくて、チャペルね」

 真面目にチェックする留美ちゃん。

「校舎も七階まであるし!」

「うん、ホテルみたいね」

「エレベーターも付いてるし!」

「あ、ダメだよ、生徒は利用禁止」

「コンビニあるし!」

「ダメ、寄ってたら授業間に合わないよ」

「うん、分かってる」

 いや、分かってへん。

 返事とは逆に、うちは店の中に入ってしまう。

 品ぞろえは街のコンビニほどやないけど、そこそこのもんが並べてある。

 学校のロゴの入ったノートやらルーズリーフ。体操服に制服のリボン、芸術で使う絵具やら筆やら墨汁やら、校章のバッジやら……さすがにコンビニ・イン・スクール!

「せやけど、パンとかお弁当少ないねえ!」

「あ、ほんと」

 留美ちゃんが食いついてきた。

 うちらのお昼対策は、まだ決まってへん。

 お弁当  食堂  購買部のパン

 選択肢は三つやねんけど、じっさいにやってみな分からへんしね。留美ちゃんも関心を持つわけですよ。

「お昼はね、テーブル出して、ドカって売り出してるよ(^▽^)」

 カウンターの向こうから声がかかる。

 コンビニの制服やねんけど、ちょっと歳のオバチャン。

「え、そうなんオバチャン!?」

「うん、販売の人数も増やすし、まあ、それでも調理パンなんかは早い者勝ちっぽいかなあ」

「そうなんや………」

「ちょっと、目が怖いよ(^_^;)」

 早い者勝ちとかになると、闘志が湧いてくる。

「でも、品ぞろえすごいですねえ」

「うん、校門の外に店があって、ここは出張所」

「ああ!」

 そう言えば、正門の向かいに、そんなんあった。

「『マイドマート』いうローカルな店やけど、まあ、ご贔屓にね。あ、そろそろチャイム鳴るよ」

「さくら」

「せやね、オバチャンまたね!」

「まいど!」

 休み時間に『購買部』で検索してみたけど、うちの『マイドマート』ほどのとこは見当たれへんかった。

 ちょっとラッキー。

 

「行くよ!」

 起立・礼が終わると同時に、留美ちゃんに声を掛けてダッシュ!

「ちょ、さくら!」

 ドタドタドタドタ

 必死で廊下を走って食堂へ!

「どっひゃー!」

 すでに券売機の前は十人ほど並んでる。

 横から顔出してメニューをチェック!

 ウ……A定食に赤ランプ。

 しゃあない、B定食に狙いを変更して順番を待つ。

 ウィーン

 券売機に千円札を呑み込ませて『2枚』のボタンを押してから『B定食』のボタンを押す。

「B定ゲット!」

 入り口のとこでキョロキョロしてる留美ちゃんに食券を高々と示して『定食・ご飯もの』と表示のある列に並ぶ。

「おばちゃん、B定食!」

「はいな!」

 おばちゃんも元気よく返事してくれて、トレーのB定食をいそいそとテーブルに。

「なかなかのメニューだね」

 たっぷり野菜の上にハンバーグ、マカロニサラダの付け合わせにお味噌汁とご飯。

 四百十円の定食にしては充実のメニュー。

 チラ見すると、A定食はハンバーグと違ってトンカツらしい揚げ物に野菜の炒め物。四十円の違いは、ちょっと大きい。

「毎日食堂だと、月に八千円ほどかかっちゃうね」

「うん、半分はお弁当主体かなあ……明日は、購買のパンにチャレンジするぜ!」

「ちょ、声大きい(-_-;)」

「めんごめんご(^_^;)」

「もう……(;´д`)」

 

 とりあえず、校内探検から、うちらの高校生活が始まりました。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら   この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌     さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観    さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念    さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一    さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩     さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保    さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美    さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子    さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー     頼子のガード
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乙女先生とゆかいな人たち女神たち・17『ドッキリ入学式』

2022-04-14 06:29:00 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

17『ドッキリ入学式』    

    


 真美ちゃん先生から、三分おきに電話がかかってくる。

 乙女先生は、嫌がらずにきちんと対応した。

「もうちょっとやからね」

 乙女先生は入学式の警備担当の責任者になっている。一番式場から遠いE組の時間を計っておいたので、それを逆算すれば、入場のタイミングを間違えることは無い。

 会場に『威風堂々』が静かに流れ始めた。

 前奏が1分57秒あるので、1分たったところで、A組出発の合図を出すことにしていた。そして45秒おきに各クラスを入場させれば、ラストのE組が着席し、10秒の最終章で、ぐっと雰囲気が盛り上がり、順調に教頭の開式宣言にもっていけるのである。

 それが、なぜか『威風堂々』が流れると同時にA組が教室を出発し、前奏の30秒目のところでは、入場しはじめた。

「宮里先生、ちょっとタイミングが早いです」

 乙女先生は、なるべく穏やかに注意しにいった。

「ここは、わたしの持ち場所です。わたしが指示します」
「そやかて、わたしが警備誘導の責任者です。わたしが……」
「先生は、転勤早々。それは書類上の名誉職です……はい、B組出してください」

 めでたい入学式、事を荒立ててはと、乙女先生は大人の判断で引き下がった。

 式場に戻ってびっくりした。

 天井の蛍光灯は点いているが、舞台上の照明が何もついていない。ギャラリーのスポットライトには人も付いていない。乙女先生はゆっくり慌てて、体育館の上手袖の分電盤までいって、天井のボーダーライトのスイッチを入れた。スポットライトのスイッチを入れたが、点く気配がない。再びゆっくり慌てて、ギャラリーに上がり、あまりのほこりっぽさに呆れながら、スポットのスイッチを入れ、演壇と国旗、校旗にシュートを決めようとしたが、上手の、スポットライトが点かない。

「チ、球切れかいな!」

 あきらめて降りようとしたところに、真美ちゃん先生から電話がかかってきた。

「どないした、真美ちゃん?」
「宮里先生が、もう出せて言わはるんです。予定より1分早いですう!」
「ウチらはお飾りらしいわ、宮里先生の指示で動いて!」

 ギャラリーから降りると、式場から、C組の前あたりまで、ダンゴになっているのが分かった。前任校なら、もう暴動ものである。
 E組が着席したのは『威風堂々』の終楽章の途中で、それもカットアウトされてしまった。テレビ番組なら放送事故である。

 ポンポンと大きな音がした。教頭がマイクの頭を叩いたのである。バカタレが、マイク壊す気か!?

 ピーーーーーーーン!

 おまけに、ごっついハウリングさせよって、思わず耳を塞ぐ者もいてる。

「えー、それでは、オホン。令和○年度、大阪府立希望ヶ丘青春高校の入学式を挙行いたします。国歌斉唱、一同起立!」

 ここはご立派に間髪入れずに、国歌が流れた。乙女先生は、ちょっとしたイタズラを思いついた。スマホを出して、式場の撮影を始めた。むろん職員席が写る。

――根性無しめが、みんなクチパクか――そう思っていると、組合の分会長を兼ねている中谷と目があった。

 気づくと、他にも何人もの教師や来賓、保護者がギャラリーの乙女先生を見上げていた。一瞬訳が分からなかったが、すぐにメゾソプラノの自分の歌声が、式場中に鳴り響いていることに気が付いた。直ぐ横では、学校お出入りの写真屋さんが笑っていたが、ここで止めては失敗ととられるので、最後まで堂々と歌いきった。

 つづく校長の祝辞はさすがに、「よく学びなさい」をテーマに話をまとめていた。

「さっきのピンクのス-ツの先生は、転任の……あとで正式にご紹介しますが、一年の生指主担の佐藤先生です。先生は、転任早々、式の有り様を勉強するために、式場を走り回っておられました。諸君、勉強するのはいつでしょう……今でしょう!」

 たった今起こったことと、流行の言葉を結びつけ、笑いと共に、話のテーマをキチンと伝えていた。他の教師の話はほとんど平板な話ぶりで、なんのインパクトも無かった。

「生徒指導部長の梅田です。君らの直接の担当は、佐藤先生です。以下、佐藤先生に引き継ぎます」
 
 やっぱり丸投げか……まあ、予告してただけマシか。乙女先生は演壇に上がった。

「さっき、ドジして校長先生の話の種にされた佐藤です。わたしは、もういくつかこの学校にきて学びました。この体育館で一番声が響くのは、正面のギャラリーです。文化祭のときはステージにしてもええでしょうね。東京ドームかヨコアリぐらいの迫力があります(みなの笑い) さて、みんなに言うことは、今日は二つだけです。学校の決まりは守ってください。何を守らなあかんかというと、この生徒手帳に書いてあります。お家の人とも、よう読んどいてください。分からんことがあったら、わたしのとこに聞きにきてください。それから、保護者のみなさんにお願いです。学校にご不満や、疑問に思われることがありましたら、お子さんにぶつけるのではなく、学校に直接おっしゃってください。至らないところもあると思いますが、我々教職員と保護者のみなさまといっしょに学校を作ってまいります。PTAというのは、ピーマンとトマトはあかんの略ではありません。ピアレンツ アンド ティーチャーズアソシエーション。つまり、教師と保護者の会という意味です。どうぞよろしく」

 我ながら、コンパクトにまとめられたと思った。揚げ足を取られるようなことも言っていないっと……。

 無事に入学式は終わった。さすがにくたびれた乙女先生は、生指のソファーに靴を脱いで横になった。ウツラウツラしかけたころに、保健室から電話がかかってきた。

「乙女先生、手が空いてたら、ちょっと保健室来てもらえますか」

 出水先生が、真剣な声でお願い。

 いったい何が起こったんだろう……。

 

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