せやさかい・296
おっきい!
入学式も終わって、生徒としての日常生活が始まると、いっそう感じる学校の大きさ!
敷地は中学の倍ほどもある。体育館と講堂も別々やし。
「講堂じゃなくて、チャペルね」
真面目にチェックする留美ちゃん。
「校舎も七階まであるし!」
「うん、ホテルみたいね」
「エレベーターも付いてるし!」
「あ、ダメだよ、生徒は利用禁止」
「コンビニあるし!」
「ダメ、寄ってたら授業間に合わないよ」
「うん、分かってる」
いや、分かってへん。
返事とは逆に、うちは店の中に入ってしまう。
品ぞろえは街のコンビニほどやないけど、そこそこのもんが並べてある。
学校のロゴの入ったノートやらルーズリーフ。体操服に制服のリボン、芸術で使う絵具やら筆やら墨汁やら、校章のバッジやら……さすがにコンビニ・イン・スクール!
「せやけど、パンとかお弁当少ないねえ!」
「あ、ほんと」
留美ちゃんが食いついてきた。
うちらのお昼対策は、まだ決まってへん。
お弁当 食堂 購買部のパン
選択肢は三つやねんけど、じっさいにやってみな分からへんしね。留美ちゃんも関心を持つわけですよ。
「お昼はね、テーブル出して、ドカって売り出してるよ(^▽^)」
カウンターの向こうから声がかかる。
コンビニの制服やねんけど、ちょっと歳のオバチャン。
「え、そうなんオバチャン!?」
「うん、販売の人数も増やすし、まあ、それでも調理パンなんかは早い者勝ちっぽいかなあ」
「そうなんや………」
「ちょっと、目が怖いよ(^_^;)」
早い者勝ちとかになると、闘志が湧いてくる。
「でも、品ぞろえすごいですねえ」
「うん、校門の外に店があって、ここは出張所」
「ああ!」
そう言えば、正門の向かいに、そんなんあった。
「『マイドマート』いうローカルな店やけど、まあ、ご贔屓にね。あ、そろそろチャイム鳴るよ」
「さくら」
「せやね、オバチャンまたね!」
「まいど!」
休み時間に『購買部』で検索してみたけど、うちの『マイドマート』ほどのとこは見当たれへんかった。
ちょっとラッキー。
「行くよ!」
起立・礼が終わると同時に、留美ちゃんに声を掛けてダッシュ!
「ちょ、さくら!」
ドタドタドタドタ
必死で廊下を走って食堂へ!
「どっひゃー!」
すでに券売機の前は十人ほど並んでる。
横から顔出してメニューをチェック!
ウ……A定食に赤ランプ。
しゃあない、B定食に狙いを変更して順番を待つ。
ウィーン
券売機に千円札を呑み込ませて『2枚』のボタンを押してから『B定食』のボタンを押す。
「B定ゲット!」
入り口のとこでキョロキョロしてる留美ちゃんに食券を高々と示して『定食・ご飯もの』と表示のある列に並ぶ。
「おばちゃん、B定食!」
「はいな!」
おばちゃんも元気よく返事してくれて、トレーのB定食をいそいそとテーブルに。
「なかなかのメニューだね」
たっぷり野菜の上にハンバーグ、マカロニサラダの付け合わせにお味噌汁とご飯。
四百十円の定食にしては充実のメニュー。
チラ見すると、A定食はハンバーグと違ってトンカツらしい揚げ物に野菜の炒め物。四十円の違いは、ちょっと大きい。
「毎日食堂だと、月に八千円ほどかかっちゃうね」
「うん、半分はお弁当主体かなあ……明日は、購買のパンにチャレンジするぜ!」
「ちょ、声大きい(-_-;)」
「めんごめんご(^_^;)」
「もう……(;´д`)」
とりあえず、校内探検から、うちらの高校生活が始まりました。
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩 さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
- ソフィー 頼子のガード