大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・267『明神四巫女の決意』

2022-04-10 10:00:15 | 小説

魔法少女マヂカ・267

『明神四巫女の決意語り手:マヂカ  

 

 

 ご無沙汰いたしております、いつぞやは、日光街道の妖退治にご尽力いただき、誠にありがとうございました。

 

「は、はあ……」

 丁寧なあいさつをされて、ちょっと面食らってしまう。

 神田明神は、関東一円の総鎮守で、その歴史は、このわたし、魔法少女マヂカのそれを超える。

 お遣いの巫女とは言え、慇懃に過ぎるし、何よりも……日光街道の件は、令和の時代の話だ。

 この大正時代の神田明神は知るはずがないのだが。

「順序が合わないと思われるのですね?」

「あ、いや……」

「もっともなことですが、将門さまの御業は時空を超えます。大正のこの時代にあっても、令和での御助力を失念するものではありません」

「そうなのか、いや、そうだろうね。このマヂカも時代を遡っているんだからね。将門さまの力なら、不思議がることも無いよね。それで、ご用件は?」

「はい、すでにご存じの通り、虎の門事件は史実よりも半月早く起こります」

「やっぱり」

「実は、マヂカさんたちのお働きで、かなりの方々の命が救われました。それに伴い、時の流れそのものが力を増して、歴史は良い方向に向かおうとしています。しかし、それに背こうという力も育ってしまい、虎ノ門の一件は、史実のそれを超えて大きくこじれようとしています」

「うん、わたしも、そう思う」

「将門さまは、今度の虎ノ門事件では正面に立とうとなされています」

「将門さまが?」

「はい、帝都の総鎮守。摂政の宮様の一大事を人任せにしておくことはできぬと仰せられて」

「それは、天晴れなお覚悟だけど、この大震災で、相当に被害を被られておられるのでは……」

「はい、長年お仕えしてきた我々には、よく分かっております」

 クロ巫女が我々と言って、その姿が四つになった。

 クロ巫女の他に、アカ巫女、シロ巫女、アオ巫女。

 それぞれが太刀や槍や弓矢の得物を手にしてまなじりを上げている。

「失礼だけど、あなたたち、戦った経験は?」

「大丈夫です、元亀天正の昔には、太田道灌や徳川の軍勢に混じって戦ったこともあります!」

 キリ!

「クロ巫女!」「アカ巫女!」「シロ巫女!」「アオ巫女!」

「「「「我ら、明神巫女レンジャー!」」」」

 四人揃って戦隊ものめいた決めポーズをとる……まあ、いいんだけどね(^_^;)。

 

 その夜は、いっしょにお風呂に入って高揚したのか、霧子の部屋でパジャマパーティーのようになった。

 

 三人の中では、いちばん先に風呂からあがった霧子が、わたしの部屋から漏れる声を不信がったが「腹話術で独り言」と苦しい言い訳をしておく。

 

 夜半、一面の星空に満月が上っているというのに、突然風が強くなった。

 バタバタン!

 半端に閉めておいた窓が開いたかと思うと、月の逆行を受けて真っ黒なものが飛び込んできた。

 ムギュ!

 風切丸を実体化させる間もなく、そいつは、わたしの顔の上に落ちてきた!

 ああ、いてててててて……

「痛いのはこっち!」

 怒りに震えて目を開けると、ブリンダがわたしの上で目を回していた。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

  

 

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乙女先生とゆかいな人たち女神たち・12『進行妨害』

2022-04-10 07:56:11 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

12『進行妨害』    

      

 

 生指横のタコ部屋(指導室)からは、罵声が響き渡っていた。校舎中に響き渡り、言葉の内容までは分からないが、そのイントネーションから、聞き慣れた罵詈雑言であることは想像がついた。

「ちょっと、失礼しまっせ」

 言ったときには、もう失礼して、栞の斜め前の椅子に座った。

「佐藤先生、困りまんなあ、あんたの担当ちゃいまっせ」
「梅田先生、女子の指導を男性教師だけでやるのは、ちょと問題や。それに、この子の制服の乱れよう、膝の怪我、女性の生指が付くべきや思いますけど」

 栞は、初めて気が付いたようで、制服の乱れを直し、膝の傷をティッシュで拭った。ティッシュは直ぐに血と泥を吸った。

「まず保健室に行って診てもらいます。状況から見て、まず、わたしが聞くのが順当やと思いますが」
「こんなもん、ただの擦り傷。あとで消毒したらよろしおまんがな」
「この子の傷は、膝だけとちゃう。顔見たら分かりまっしゃろ」
「手島は、いつも……」
「いつも、こんな顔させてたん。話にならん。手島さん、ウチに付いといで」
「佐藤さん!」
「うっさいんじゃ、オッサンら!」

 呆気にとられた、三人のオッサン……いや、男性教諭を置き去りにして、乙女先生は、栞を保健室に連れて行った。

「手島さん、どないしたん!?」

 養護教諭の出水さんも、栞のただならぬ様子を見て、驚きの声を上げた。

「えと……わたしがゲンチャを停めるのと、梅田先生が話しかけられるタイミングが合わなかったんです」
「えらい持って回った言いようやなあ」
「……傷は、擦り傷だけですね。消毒とサビオでええでしょ」
「先生」
「うん?」

 乙女先生と出水先生が同時に返事をした。栞がクスっと笑った。

「ちょっと落ち着いたか。まあ、先生に話してみい」
「ゲンチャは?」
「真美ちゃん先生に頼んどいた。それより話や」
「お気持ちはありがたいんですけど、あの先生らには直接話せんと、こじれるだけです。タコ部屋に戻ります」

「せやから、指導忌避と、無許可のバイク使用なんじゃ、ボケ!」

 梅田の論点は、この二点だけだった。いろいろエゲツナイ大阪弁が混じるので、整理すると以下のようになる。

 朝、出勤途中の新担任湯浅が、団子屋のゲンチャに乗った栞と出くわした。ゲンチャは希望ヶ丘高校では原則禁止である。そこを制服を着たままゲンチャに乗っている栞を発見したのだから、指導しないわけにはいかない。

「こら栞、止まれ!」
「すみません、配達中なんで、また後で!」

 栞は、近所の姫山小学校の入学式用の紅白饅頭を配達の途中であった。指導されていては間に合わない。

「くそ、指導忌避やぞ!」

 湯浅先生は、スマホで梅田に連絡をとり、駆けつけた梅田と二人で自販機の陰に隠れて待ち伏せした。そして、栞が十メートルほど手前に着たときに、飛び出した。

「今度は逃がせへんぞ!」

 びっくりした栞は急ブレーキを掛けたが、ハンドルがぶれて、横転した。

 で、ここからが両者の話が異なる。

○「なに、わざとらしい転けてんねん!」そう言われ、胸ぐらを掴んで引っ張られた。

○「おい、大丈夫か!?」おたつきながらも、起こしてやった。

 どちらが、どちらの言い分かは、お分かりであろうが、その後の言動ははっきりしている。自販機が置いてある店のオジサンが、動画で記録していた(数日後、SNSに出て問題になる)

「進行妨害です。現状保存をして、警察を呼んでください!」

 栞がヘルメットを脱いで叫んだ。

「違反ばっかりしくさって、何言うとんじゃ。さっさと立って学校来い! 湯浅先生、ゲンチャ持ってきてください」

 栞はすでに抵抗はやめていたが、梅田はセーラーの襟首を掴んで数メートル引っ張った。

 栞は、途中遮られながらも、二度冷静に事実を述べた。あとは、オッサン三人の罵声であった。

 最後に、栞は静かに言った。

「バイト許可願いの付則に、配達のための自動二輪使用願いも書いてあったはずです……」
 

 

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