大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・302『あの子、来てへん』

2022-04-25 16:15:22 | ノベル

・302

『あの子、来てへん』さくら 

 

 

 酒井さん!

 はひ!

 クスクスクス( ^ิ艸^ิ゚) ププ(Ŏ艸Ŏ) ウフ(❁´ω`❁) アハ( ^ิ艸^ิ゚)

 また笑われてしもた(-_-;)

 これで三回目。

 

 朝、教室に入って見たら、窓側の机が一つ多い。

 ピンときた。ペコちゃん先生が言うてた例の子や。

 安泰中学の隣の中学出身で、なんでか入学が今日からの子。

 たぶん、堺市が発表してた内申の成績間違うて付けられてた子。

 75人も付け間違いがあって、高めに付いてた子もいてるけど、中にはホンマの成績よりも低く目に付けられてた子も居てて、本人が希望したら、その子らは追加合格になるとニュースで言うてた。

 それに違いない。

 なんかの事情で登校が遅れてるだけやったら、定員の中に入ってて、入学の日から名列にあるやろし、席もあるはず。

 それが、今日からやいうことは、やっぱり……そうやねんわ。

 それに、内申のわずかな加点で合格が決まるいうことは、テストの点数は低い『わたしはアホです』言うてんのといっしょ。

 やっぱり、いざ、登校するとなると……抵抗あるやろなあ……自分を、その立場に当てはめてみると、そういう結論になる。

 それに、入学の日から机の右前に貼ってある名前の紙が、その机には貼ったあれへん。

 いや……よう見ると、机の、その場所には、いったん貼って剥がしたようにセロテープの跡がある。

 やっぱり、朝になったら、ようこうへんようになってしもて、朝一番で学校に電話して、ペコちゃん先生が慌てて教室に行って名札を剥がした。

 ペコちゃん先生は、学校の裏手の神社やさかいに、走ったら一分もかからんと学校に来れる。

 そうなんや、ペコちゃん先生が安泰中学辞めて、真理愛学院に来たんは、そういう職業倫理感みたいなもんもあるさかいや。

 直接、うちらには言わへんけど、ようできた先生や。

「こら、さくら!」

「ハヒ!」

 いつのまにか、次のペコちゃん先生の現社になってしもてて、慣れた口調で怒られてしもた。

 (灬º 艸º灬)(灬º 艸º灬)(灬º 艸º灬)(灬º 艸º灬)(灬º 艸º灬)

 教室のクラスメートのみなさんは必至で笑うのん我慢してるし(≧▽≦)。

 

「せんせー!」

 授業が終わると、うちは、廊下に飛び出してペコちゃん先生を掴まえた。

「せんせ、例の子は!?」

「え、あ、ちょっとね……そんなことより、授業中はちゃんと集中しなきゃダメだぞ」

「そら無理です! あんなに前振りされてしもたら気になってしゃあないです!」

「先生、他にも言ったよ」

「はい、分かってます!」

 廊下で説教されてはかなわへんので、すぐに回れ右。

 教室の前で留美ちゃんが二人分の体操服抱えて待ってる。

 せや、次は体育の授業やった!

 一年生の真面目さで、もう、教室に残ってるもんは一人も居てへん。

 日直の○○さんが(まだ名前憶えてへん)困った顔して後ろのドアの前に立ってる。

 せや、日直は戸締りせんと行かれへんねんや!

「ごめん、えと……」

 いちおう謝るけど、名前を付けて謝られへん。

 ああ、なんか横柄に聞こえたやろなあ……。

「伊達さんだよ(-_-;)」

 留美ちゃんが教えてくれるけど、本人は、ちゃっちゃと走って、すでに後姿。

 挨拶とか声かけとかは、タイミングを失うと言われへんもんです。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      頼子のガード
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

銀河太平記・105『西之島市役所の邂逅』

2022-04-25 10:47:00 | 小説4

・105

『西之島市役所の邂逅』越萌マイ(児玉隆三)  

 

 

 西之島市の市長は元国交省の及川軍平だ。

 及川は数年前に、パルスガ鉱の商業採掘が可能になって、発展が見込まれるというので、それまで自治区同然だった西之島を本土並みの管理、つまり、美味しいところは全部国が持っていくための政府責任者として送られてきた。

 しゃくし定規に本土の制度や法律を導入して、短時日の間に開発の主導権を握ろうとしたが、社長・村長・主席をリーダーとする島民の怒りを買った。

 危うく、ナバホ村のマヌエリト村長に殺されそうになったが、同時に、その不手際を政府から糾弾され西之島開発局長の任を解かれ、あやうく西之島でホームレスになりかけたところを、カンパニー社員食堂のお岩さんに拾われて、一島民として生きていく決心をしたのが五年前の秋。

 紆余曲折はあったが、その行政手腕と総合力を買われて西之島市の初代市長に押されたのだ。

 

「いやあ、さすが及川君だ、敵の尻の毛まで読んでいたなあ」

 髪の毛のことごとくが鼻の下に移動したような頭をピシャピシャやりながら孫大人は面白がった。

「やつらの考えていることは、省益と身の保全です。それを担保にするような提案には乗って来ません」

「これで、三度目の持ち帰りになったな」

「北区の新規事業は総合開発です。採鉱、選鉱、輸送、移民、IR誘致、総合リゾート開発、国防拠点造成、新教育機構の構築、水産事業、宇宙港、それらをいっぺんにやろうというのです。国交省や通産省の官僚の手には負えません」

「まるでレプリケーターのメニューのようだ」

「なにをおっしゃる。孫大人こそ、世界の五本の指に入ろうかというコングロマリットではありませんか」

「コングロマリット……他の奴が言うと別称だが、及川君に言われると誉め言葉に聞こえる」

「いや、じっさい褒めてるんです。我々が目指すのは海のマンチュリア、壮大な志が無ければ実現できません」

「そうさなあ……マンチュリアは良くやっているが、北はロシア、南に漢明中華が地続きだ。そこへ行けば西之島は四方が海。世界の30%の産出力を誇るパルス鉱。氷室カンパニー、ナバホ村、フートンで培われた突破力、団結力。それに、及川君の人脈と行政力だ。儂の方こそ期待しているよ」

「相手は日本政府です、一見与しやすいが、老獪です。背景には皇室の権威と国民の『和を以て貴しとなす』の空気があります」

「そうだな、日本人の『みなさんそうなさってます』根性は侮りがたい……」

「行政的汚れ仕事は全てわたしが引き受けます、その他の汚れ仕事は孫大人が引き受けてください」

「及川の倅も言うようになったもんだ」

 ワハハハハハハハ(^O^)(^Д^)

 

 孫大人と及川市長の高笑いは、ちょっと男前にした越後屋と悪代官のようだ(^_^;)

 

「あははは……(^_^;)」

 さすがのメイも頬が引きつってる。

「どうして、ここまで見せるんですかあ」

「いやあ、越萌姉妹社とは裏表のない付き合いをしたいんでなあ」

「西之島市の行政コンセプトは透明性ですから」

 そう言うと、笑いながら、ホログラムのスイッチを切る市長。

 わたしとメイが訪れる直前まで、国交省と通産省の役人を凹ませていたところだ。

「お待たせしました、それでは西之島北東部開発について……」

「市長、それはホログラムでは無くて、リアルの現場を見てやりましょう」

「それは、いいご提案です。では、担当部署の責任者も同行してもらいます。もしもし、総務課長……」

 総務課長に連絡をとろうとする及川を孫大人が制した。

「市長、越萌さんとも久方ぶりなんで、儂の車で行くよ。いいだろマイさん」

「はい、喜んで」

「お姉ちゃん、わたしは市長と行くわ。担当の人たちの顔早く見たいから」

「そう、じゃあ現地でね」

 

「あらあ、馬なんですか?」

 駐車場に下りると二頭の馬(オートホース)が繋がれている。

「少しの間、北大街の昔を思い出すのもいいでしょう、元帥」

「フフ、元帥はモスボールしましたよ」

「じゃあ、お互い幻になったつもりで……ほら、日も高くなって、道に逃げ水も揺蕩うている」

「そうね……では、行くか」

 ポックリポックリと北区の新開発地区を目指した。

 百メートルも行かないうちに市役所のマークを付けたバンが追い抜いて行く。同乗の役人たちには、コングロマリットの総帥孫大人と越萌姉妹社の越萌社長がいい仲に見えたかもしれない。

 あの満州の野は『北京秋天』の青空が似合ったが、西之島には蒼空に湧き出でる入道雲が似つかわしい。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

乙女先生とゆかいな人たち女神たち・28『は・し・た・な・い』

2022-04-25 06:21:55 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

28『は・し・た・な・い』

 

 

 来客用のお茶をすすりながら、乙女先生は考えをまとめている。
 
 といって、校長室で乙女先生が来客の待遇を受けているわけではない。

 直前まで来ていた来客が口も付けずに飲み残していったお茶がモッタイナイからである。更年期……と言ったら張り倒されそうだが、乙女先生は、よく喉が渇く。昨日栞とさくやを連れて行った『H(アイのてまえ)』でも、コーヒーを二杯、水を三杯も飲んだ。まだ連休前だというのにすぐに汗になる。タオルハンカチで遠慮無く汗を拭く。

 校長は苦笑いした。

 着任当時より乙女先生は飾らない態度をとるようになった。なんせ生まれも育ちも、『ド』付きの河内、岸和田のネエチャンである。仲良くなれば、すぐにメッキが剥がれる。その年齢相応な河内のオバチャンぶりと、見ようによっては20代の後半に見える若々しさのギャップが、楽しくも哀しくもある。亭主も時々言う。

「せめて、脇の下拭くときぐらいは、見えんようにしてくれへんか」
「ええやんか、股の下とちゃうねんから」

 亭主は、見てくれの段階でプロポ-ズしたことを後悔する。

「先生が、職会でおっしゃっていた、改善委員会に地元の方を加える話ですが……」
「今までの町会長は、ありえませんね」
「同感です。学校を見る目がアウェーだ」
「言うときますけど、アウェーやない人なんかめったにいてませんよ」
「その中で、あえて推薦していただけるとしたら、どなたでしょうなあ……」

 校長は、さりげなく窓を開けに行った。乙女先生が考える間をとるためと、さすがにブリトラでは暑いせいだろう。

「確認しときますけど、校長さん、この改革が上手いこといくとは思てはれへんでしょうね」
「は……?」
「梅田はんら三人懲戒にかけて、改善委員会つくって。言うたら、学校が全部被って、府教委は何にもせえへんのでしょ?」

 校長は、空いた湯飲みに水を入れ、観葉植物に水をやった。

「なるほど、言わずもがなでんなあ。水やるフリやいうのんは、とうにご承知」
「いや、これは、単なるわたしの癖です。これでもけっこうゴムの木は育つようです」
「枯れぬよう、伸びぬよう……」
「辛辣だなあ……こいつは、わたしが赴任したころには枯れかけていたんですよ」

 そう言って、校長はゴムの鉢植えの向きをを変えた。植物用の栄養剤が二本刺されている。

「失礼しました。そやけど府教委は、学校を鉢植えのまんま大きい実を付けろいうてるようなもんです」
「ごもっとも、そんなことをしたら鉢植えは枯れるかひっくり返るか……」
「ひっくり返る頃には、エライサンはみんな定年で、関係なし」
「それでも水をやり続けるのが、我々の仕事でしょう」
「それやったら、津久茂屋の恭子さんでしょ」

 

 そのころ、新子とさくやは、第二音楽室を使って、歌とダンスの練習の真っ最中だった。

 君のハート全て ボクのもの~♪ イェイ!

「「キマッタ!!」」

「ああ、汗だくだあ」
「今日、昼から夏日ですからね」

 栞はガラリと窓を開けた。思いがけない涼風が吹いてきた。

「ああ、生き返る……」

 そう言いながら、ポカリを飲みながら体操服の上をパカパカやった。

「先輩、おへそ丸出し」
「いいの、男子いないから」
「でも、こう言っちゃなんですけど、わたしらエエ線いってる思いません?」

 と、不思議に汗もかかない顔で言った。

「自分のことはよく分からないけど、サク、かなりいけてんじゃん」
「先輩のパワーには、負けます」
「今の、チェックしとこうか」

 二人でビデオを再生してみた。

「せんぱ~い、ほんまにイケてますよ。こないだの偉い先生との対談からは、想像できませんよ(^▽^)!」
「わたしって、つい真面目で、真っ直ぐな子だって思われるじゃない」
「昔から?」
「うん、小学校のころから」
「弁護士の子やし」
「ああ、それ言われんの、一番いや!」
「それで、家ではハジケてたんですね」
「ほんとは、賑やか好きのオメデタイ女なの。サクチャンこそ、これだけ踊って、なんで汗かかないの?」
「顔だけです。首から下は汗びちゃ」

 体操服とハーパンをめくってみせた。チラっとイチゴのお揃いの下着の上下が見え、湯気をたてている。
 そのとき、さくやは視線を感じ、窓の下に目を奪われた。

「あ、ああ……お姉ちゃんヾ(◎o◎,,;)ノ!」

 さくやのおねえちゃんは「は・し・た・な・い」という口をして、校舎の玄関に入っていった。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする