大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・132『AKIBA-01発射!』

2022-04-03 11:45:01 | ライトノベルセレクト

やく物語・132

『AKIBA-01発射!』 

 

 

 今度は犬だ!

 

 凛とマナジリを上げるメイド王・アレクサンドラ!

「は、はい……」

 アカアオメイドから聞いてますって言おうと思ったけど、そういうのは許さない雰囲気がみなぎっている。

「これを見てくれ!」

 メイド王が右手を上げると、秋葉原クロスフィールドのディスプレーが、ズビーーーーンて感じで大きくなって、ついに壁面一杯になる。

 大昔の映画みたく、カウントダウンの数字が表れて、5、4、3、2、1……ジャーーーン!!

 ディスプレーいっぱいに3Dのワンコが現れる。

 ワンコは、白いモヤモヤの上に、サーフボードに跨ったみたいに突っ張って、目はらんらんと広場のみんなを睨み据えている。

 オオオオオオオオオオオ(꒪ȏ꒪)

 広場のみんなが、恐れて一歩引きさがる。

 無理もないよ、壁面いっぱいの3D映像で、ワンコはゴジラとでも格闘できそうな大きさだからね。

「こんなにおっきいのと戦うんですか!?」

「これはディスプレーに映しているからだ、じっさいは見ての通りの中型犬。ただし、動きは素早い。心してかかってくれ」

「わ、分かりました…………」

「なにかな?」

「え、いえ、実物はどのあたりにいるのかと……」

 広場の大きな空をキョロキョロするけど、ワンコの姿は見えない。

「今は土星軌道のあたりを周回している」

「ど、土星!?」

「ワープすれば、あっという間に目の前だ。地球の周回軌道に入るまでにやっつけて欲しい。よろしく頼んだぞ」

「ハ、ハヒ……でも、どうやって土星軌道までいけばいいんですか?」

「それは、あの者たちに……」

 メイド王が目配せすると、アカアオメイドを従えて滝夜叉姫のトラッドメイドが進み出る。

 三人は、それぞれ大きさの違う段ボール箱を抱えている。

「その箱は?」

「アキバ子が用意してくれましたものです」

 そろって段ボール箱を回すと、お馴染みのネット通販のニヤついたマークが付いている。

 トラッドメイドのが一番大きく、次にアカメイド、そしてアオメイド。

 ポン ポン ポン

 手際よく積み重ねると、グングン大きくなって、あっと言う間に三段ロケットになった。

「ひょっとして、あれに乗っていくの?」

「ちょっと、用事を思い出し……」「わたしも……」

 パフ!

 ポケットから逃げようとしたチカコと御息所をポケットごと押さえ込む。

 ムギュ!

「えと、どこから乗ればいいのかしら?」

「エスカレーターを上ります」

 トラッドメイドが示すと、アカアオメイドがササッと動いて、エスカレーターの登り口で上を指し示す。

「わ、わかったわ!」

 もう、こうなったら、矢でも鉄砲でも持ってこい!

 今までも、数々のアヤカシをやっつけてきたんだ、なんとかなるさ!

 トラッドメイドに先導されてエスカレーターに足を載せると、アキバマーチングバンドが聴いたことのあるアニソンマーチを演奏。

「わたしたちもお付き合いします」

「ほんと!?」

「「わたしたちもです」」

 アカアオメイドも後ろに付いてくれていて、頼もしいことを言ってくれる。

 う、うれしい!

 ロケットの方を見上げると、ロケットの二段目のところが開いて、ラッタルがスルスルと下りてくる。

 あっと思って見上げると、ハッチの所からアキバ子が身を乗り出して手を振ってくれている。

「やくもさま、わたしもお供いたします!」

 嬉しいことを言ってくれる。

 やっぱり、青龍と共に戦っただけのことはある!

 ガシャン

 ハッチが締められて、みんなでシートに着いてベルトを締める。

「発射します!」

 操縦席のコンソールに秒読みの数字が現れ、モニターには秋葉原クロスフィールドの屋上に据えられたと思えるカメラの映像が映っている。ボディーにはニヤリマークとAKIBA-01のしるし!

 白い煙がもうもうとあがる。

 ロケットのボディーに描かれたニヤリマークが縦になって……ニヤリが真っ直ぐに伸びて……矢印に……いや、これってロケットが飛んでいく姿だ!

 ドドドドドドーーーーーーーーーーーン

 AKIBA-01は、はるか土星軌道を目指して飛び立った!

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド アキバ子 青龍 メイド王

 

 

 

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乙女先生とゆかいな人たち女神たち・5『鳥居をくぐって』

2022-04-03 09:16:13 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

5『鳥居をくぐって』     

   

 

 鳥居をくぐり、境内に足を踏み入れると別世界であった。

 伊邪那美神社は、この地の産土神(うぶすながみ)である。

 旧集落そのものが、古い摂津の村の佇まいを残しているが、こんもりとした森の中の神域に入ってみて、乙女先生は息を呑んだ。
 一の鳥居をくぐって石畳の道が「く」の字に曲がって、五メーターほどの石段を登って、二の鳥居。それをくぐったところから見える境内は、一面の玉砂利で、ちょっとした野球場ほどもあった。

 正面彼方に拝殿、手前上手に御手洗所(みたらしどころ)。

 そこで口をすすぎ、手を清めて振り向くと、拝殿の前で二人の若い巫女さんが境内を掃いている。

「あのう……ご祈祷をお願いしたいんですけど」

 背の高い方の巫女さんに声をかける。

「そこの社務所の窓口の鈴を……鳴らしておくれやす」

 京都弁に近い摂津言葉で巫女さんが答えた。岸和田の神社に慣れた乙女先生は、少しドギマギした。

「ほう、それはご奇特なことですなあ」

 神主は、拝殿の板の間で感心した。

「青春高校の前のS高校のころから、先生が来はったことなんか初めてですわ。お若いのに、よう気いまわらはりましたなあ」
「岸城神社には、しょっちゅう行ってましたから」
「ほう、岸和田の……」
「はい、だんじりの引き回しが生き甲斐です。それと、わたしそんな若いことありませんよって」

 正直に答えた年齢に、神主は目を丸くした。

「わたしより、四つ若いだけですか……いや、それにしても……ご立派なことです」

 神主は「ご立派」に敬意といろんな意味の興味をこめてため息混じりに言った。その素直な反応に、乙女先生は思わず笑って、いい神主さんだと思った。

「そこいくと、うちのカミサンは……」

 神主は、廊下続きの社務所に目をやった。
 
 吉本のベテラン女優によく似た奥さんが、横顔でパソコンと睨めっこしていた。

「あ、えと、ご祈祷は、なんでしたかいなあ?」
「青春高校の生徒の学業成就と、すこやかな成長を……」
「は、はあ、そうでしたな。ほんならさっそく」

 神主はCDのスイッチを入れ、大幣(おおぬさ=お祓いに使うハタキみたいなの)を構えた。

「すんませんなあ、貧乏神社やさかいに、巫女もおりませんのでなあ。若い頃はカミサンが巫女もやりよったんですがな。まあ、こんなとこで堪忍してください」
「は、はあ」

「オホン」

 神主は居住まいを正した。

「かけまくも~かしこき伊邪那美の尊に~かしこみかしこみ申さく……」

 祝詞は五分ほどで終わり、玉串料をご神前に供えると、神主は笑顔で振り返った。

「ほな、お茶でも持ってきますさかいに、お楽になさってください」
「あの……」
「は?」
「この神社には、巫女さんがいらっしゃらない?」
「ええ、さっきも申し上げましたが、カミサンの巫女姿は氏子さんからも不評で。本人も、今はネットで、御札やらお守り売るのに一生懸命。いや、シャレで始めたんですけど、このネット通販がバカにならん稼ぎになりましてな。いやはや……あ、正月なんかは、アルバイトの子に巫女さんやらせてますけどな。どないです、先生も正月にバイトで……」

 社務所のほうで、奥さんの咳払いがして神主はいそいでお茶を淹れにいった。

 ご神前に目を向けると、そこにいた……。

 アルカイックスマイルで、さっき境内を掃いていた二人の若い巫女さんが座っている……。

 

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