大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE滅鬼の刃・17『作ることが好きなお祖父ちゃん』

2021-03-07 08:57:56 | エッセー

RE滅 エッセーノベル    

17・『作ることが好きなお祖父ちゃん』    

 

 

 お祖父ちゃんは学校の先生をやっていましたが、わたしの勉強をうるさく言ったりはしませんでした。

 

 テストでいい点数がとれると「よかったね」とか「がんばったね」とか言ってくれましたが、悪い点をとっても「こんなこともあるさ」「また、がんばったらいい」と軽く優しく頭を撫でておしまいでした。

 テストの点数や学校の成績が人の将来に、それほど大きな影響がないことを良く知っていたんです。

 お祖父ちゃん自身、勉強が苦手で、高校を四年大学を五年かかって卒業しています。

 定期考査で爆睡してしまい、名前を書いただけでお終いになったことがあって、生まれて初めて0点をとってしまったことがありました。

 お祖父ちゃんの事ではなくてわたしの事です(^_^;)。

 この時も「これは記念に取っておこう!」と残してしまいました。

「俺の0点は捨ててしまったからなあ」とニコニコしていました。

 そんなお祖父ちゃんが、目の色を変えてわたしの宿題を取り上げ、自分でやってしまったものがあります。

 

 夏休みの工作の宿題です。

 

 なんでもいいから、自由な発想と工夫で作りましょう!

 そういう意味の事が宿題の一覧に書いてあって、工作の苦手なわたしは「あしたやろう」と言い訳して、とうとう来週から新学期という日になってため息をついていました。

「お、自由工作か!?」

 そう言うと、お祖父ちゃんはリビングのゴミ箱を漁って、薬の空き瓶やティッシュの空き箱を持ってきて作業を始めます。

「なにしてんの?」

「途中までやったげるから、仕上げは栞がやりな」

「おお、ラッキー(^▽^)/」

 甲斐甲斐しくお茶などを入れて、横で見ていると、あっという間にミッキーの貯金箱を作ってしまいました。

「……お祖父ちゃんの作品になっちゃったよ(^_^;)」

「あ……」

 けっきょく、塗装だけわたしがやって、辛うじてわたしの作品にして提出しました。

 

 とにかく、物を作ることが大好きなお祖父ちゃんです。

 プラモデルは完成品だけでも100ほどもあって、クローゼットの中には箱に入った未組み立てのが200ほどもあります。

 自分でも書いていましたが、還暦になって目覚めたペーパークラフト(紙模型とかカードモデルとかも言うらしいですが、わたしには区別がつきません(^_^;))

 近ごろ視力が落ちてきて、細かい作業がやりにくくなってきたとこぼしています。

 それでも紙模型やプラモデルの船の手すりや張線をやっているのを見ると、まだまだ大丈夫と孫娘としては嬉しく思います。手摺なんて、0.4ミリの真鍮線を3ミリの長さに切って1ミリを埋め込むなんて作業らしいです。

 いつまでも、元気でやってくださいね、お祖父ちゃん(o^―^o)。

 

http://wwc:sumire:shiori○○//do.com

 Sのドクロブログ☠!

 

 ちょっと……パラノイアですわ(-_-;)

 同じ血が流れているのかと思うと、落ち込むことがあるぜ。

 前号で出してた紙の軍艦、信じられないけど、部品点数15000だよ。

 図面通りに作ると8000くらいらしいんだけども、あれこれ自作のパーツやら補強をやってると、それくらいになるらしい。

 こないだ、開きっぱのクローゼット見たら、未組み立ての紙模型が50冊(たいてい本の体裁になってる)ほどもある。

 他にもプラモとかいろいろあって、ほんと、どーすんだよ!?って感じ。

 プラモとかペ-パークラフトとかやる奴はキモオタだからね。エンガチョものなんだからね。

 クソジジイは「栞、たまには友だち連れておいでよ」って言うけど、とても人は呼べないよ。

 キモイもんが家中にあるんだからね。

 プラモって、軍艦とか戦車とか飛行機だって思うっしょ?

 ちがうんだよ。

 人体模型なんてのもある。

 クソジジイの部屋には、1/1サイズって人の首のプラモがある。皮は透明プラスチックなんだけど、その下に筋肉やら血管やら骨やら目玉とかもあって、もう、アブないんだ。

「いやいや、脳みそだってあるんだ」

 いや、開けなくていいから……。

「栞も、やってみりゃいいのに」

 奥から出してきたのは、スケールこそ1/5だけども、全身の人体模型のプラモ。

 それも女の体!

「これは、なかなか手に入らなくてなあ、中華製じゃなくてアメリカのキットでな……」

 中華でもアメリカでもキショク悪いから!

「ほら、お腹のパーツは二種類あって、なんと妊娠バージョンにも作れるんだ」

 か、勘弁してくれええええええええ!!

 

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真凡プレジデント・14《ひっくりかえった!》

2021-03-07 06:25:03 | 小説3

プレジデント・14

《ひっくりかえった!》   

 

 朝から学校はひっくりかえっていた。

 なんたって生徒が逮捕されてしまったんだ。

 列車往来危険罪並びに動物愛護法違反という禍々しい罪状での緊急逮捕。

 それも、学校一番のイケメン・秀才・天才の誉れも高き柳沢琢磨!

 模擬とはいえ司法試験を高校生で合格、それも、現役弁護士であり元国務大臣であった○○氏に大差をつけて!

 そして、なによりも、今期生徒会選挙、当選間違いなしの会長候補!

 彼がいなければ大列車事故が起こっていた!

 居合わせたテッチャンたちは彼のとった行動を口々に弁護したが、その他大勢の目撃者は橋の上から犬を投げ落としたことを非難していた。犬の飼い主などは、まるで虐殺者を見るように非難した。

「い、犬殺し! 人殺し! 国民の敵! 人類の敵!」

「とにかく、署まで同行してもらおうか」

 間を取った警察官に諭すように、柳沢はつぶやいた。

「ここは緊急逮捕が相当です、とりあえずの任意同行ではテッチャン以外は納得しませんよ」

「そ、そうか(#'∀'#)!」

 容疑者の方から逮捕を促されるという事態に直面し、お巡りさんは頭のてっぺんから声を張り上げて逮捕した。

 

「ちょっと前例がない……(;゚Д゚)」

 

 廊下で出くわした藤田先生はオタオタしながら緊急職員会議が行われる視聴覚教室へ向かった。

 かつて、候補者が緊急入院して立会演説に出られなかったことがあった。その時は、本人の演説は割愛して投票だけが行われたらしい。しかし、今度は隠れも無き列車往来危険罪並びに動物愛護法違反違反なのだ。

 立候補は無効だ! いや、起訴されるまでは何とも言えない! いや、辞退させよう!

 臨時職員会議は授業開始時間になっても結論が出なかった。

「ちょっと電話してみる」

 こめかみに青筋を浮き出させた北白川さんが決然と席を立って廊下に出た。

「どこに電話するんだろう……?」

 なつきが首をひねる。

 柳沢は拘留中だから電話連絡なんかつかないはずなのに。

「連絡ついたわ」

 一言言うと、彼女は視聴覚教室に向かった。心配で階下の視聴覚教室に向かうと、防音扉を小さく開けて藤田先生が顔を出して北白川さんと話している。

 数秒経って、藤田先生の顔がホッとしたように見えた。北白川さんは、わたしたちに微笑むと廊下の突き当りから外に出てしまった。

 北白川さんが、どう連絡を付けたのか、柳沢は立候補を取り下げたということだった。

 

 そして選挙は、わたしへの信任投票になった。

 

「ええと……わたしは、生徒手帳の最初に書かれている徳目、自主・独立・敬愛……みなさんはご存知ですか? ご存じないですよね。わたしも演説の原稿を書くために生徒手帳を開くまでは知りませんでした。知らないことを、とくに恥ずかしいとも思いませんでした。それほど、本校の見学理念は現実から乖離しています。わたしたちの言葉で言えばイミフ! あ、意味不明って意味です、先生方。イミフの心を持って、知ったかぶりや慣例に流されず、わたしたちの学校生活を見つめ直すことから始めていきたいと思います……とにかくですね……」

 もっと具体的な内容もあったはずなんだけど、柳沢が立候補したために、わたしは演説原稿の掘り下げを怠ってしまった。

 だから、なんとも抽象的な語り掛けのように、持ち時間の三分が過ぎて行った。

 途中からは何を喋ったか、もう、シッチャカメッチャカ!

 

 一礼して演壇の舞台を下りる。

 一応の拍手、意識がどうにかなったわたしには、割れんばかりの拍手にも、おざなりの終わってよかった拍手なのかも分からない。

 手のひらが汗でびっちょり、何年かぶりで下着が肌に貼りつく不快感を感じる。

 わずか数分で一か月分くらいの汗をかいたわたしは、このまま溶けてしまうんじゃないかと思った。

  瞬間、天地がひっくり返った。

 ノワーー!

 ドッシン!

 ゲフッ!!

 わたしは、階段の最後の一段を踏み外してカエルのようにひっくり返ってしまった。

 瞬間、全生徒の笑い声。それだけが、立会演説会唯一の確かさだった。

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨    急に現れた対立候補
  •  北白川 綾乃   モテカワ美少女の同級生
  •  橘 なつき    入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
  •  橘 健二      なつきの弟
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問
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