大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくも・01『崖のお屋敷』

2020-11-17 06:15:07 | ライトノベルセレクト

01『崖のお屋敷』   

 

 

 一丁目と二丁目の境には崖がある。

 

 崖と言っても二メートルほどの高さで、石垣やコンクリで固められていて、難しい言葉では法面というらしい。法面って読める? ノリメンと発音するらしいよ。聞き慣れない言葉だしピンとこない。

 でも、越してきて間がないわたしには、人の行き来を拒み続ける崖という感じ。

 

 一丁目に家があって、三丁目にある学校に通うには、この崖が邪魔だ。

 五十メートルほど迂回すると、崖は数十センチほどに大人しくなって、横断する坂道や段差も現れる。

 だから、そういうわたしでも通れるところまで迂回して学校に行く。

 その一丁目側の崖の縁には百坪ほどのお屋敷が並んでいるんだよ。

「お屋敷だねえ……」

 初めて転入の手続きのために通った時、そう呟いたら「やくもの家だって同じくらいじゃん」と、お母さんは笑った。

 わたしは、まだ家に馴染めていなかったので、こういう広くて大きな家を見るとお屋敷と感じてしまう。

 お母さんは、わたしが新しい環境に物怖じしないように軽く言ったんだ。

 お母さんにとっては生まれ育った家と街だから物怖じなんかしない。わたしを元気づけようとして言ったんだ。けして百坪の家を軽んじて言ったわけじゃない。

「わたしのころはお友だちの家があってね……ええと……ほら、この家」

 それは昭和の初めごろからあったんじゃないかと思うくらいの木造二階建て。瓦が重々しくて、屋根はお城みたい。壁は杉かなにかの木の皮が貼ってあって、窓なんかは木製の雨戸が閉められている。庭は手入れされていない庭木やなにかが猛々しく茂りっぱなしになっている。生け垣の隙間から一階の一部が覗いていて、木製のサッシが見えたので、まだ人は住んでいるんだろうか。聞いてみたい気持ちはあったけど、なんだかはばかられた。

「脇のくぐり戸を通って庭を抜けさせてもらってたの、ほら、お厨子の屋根が見えるでしょ?」

「おずし?」

「神社のミニチュアみたいなの……」

 ピョンとジャンプしたら見えた。会社の庭とか屋上とかにありそうなやつだ。色褪せた小さな鳥居があって、銅の屋根が錆びまくって、そこだけ鮮やかな薄緑。

 

 続きは崖を迂回してからだった。

 

「ここに出てくるのよ」

 お屋敷の裏手はお城のような石垣になっていて、古城のように苔むしている。

 少し窪んだところがあって、お母さんが指差したのは、その窪みにしつらえられた石段だ。

 石段は道路に沿って十段ほどあって、クニっと窪みのところでLの字に折れ曲がり崖の上の裏門に続いている。なるほど、ここを通れば五十メートルの倍で百メートルは近道できる。

 でも……他人様のお屋敷。

 人は住んでるようだけど、お化け屋敷ぢみて見える。お母さんの口ぶりでも、このお屋敷の住人とはとっくに付き合いが無くなっている感じだ。

 

 それから一か月。

 

 わたしは近道することもなく、大きく崖を迂回して学校に通ったのだった。

 今日まではね……。

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まりあ戦記・043『三か所のカメラ 二機のドローン』

2020-11-17 05:24:39 | ボクの妹

・043

『三か所のカメラ 二機のドローン』   

 

 

 イラ立ちの原因は予感だ。

 

 ウズメはパルスという固有兵器を内蔵している。パルスの出力は臨機応変に変えられる。

 肌に密着するコネクトスーツはまりあの筋電や脳波をリアルタイムで拾って、ウズメのアクティビティーを制御している。

 だからこそ、まりあはウズメを意のままに動かせる。

 リアルで喧嘩したとして、相手のパンチを屈んでかわしながら、お返しのフックを炸裂させるとかするのは、ほとんど反射運動だ。

 パルス攻撃も同様で、呼吸するような自然さの中で発揮される。

 しかし、まりあは、その自然さを封じられているのだ。

 カルデラの周辺に配置された携帯兵器をリリースすることを義務付けられている。

 いちいち拾って装着し、攻撃姿勢をとらなければ使えないので、タイムロスが大きいだけではなく、戦いのテンポを崩されて、はなはだ精神衛生に良くない。

「今度のヨミは成熟体ではない、二度ほど装備を替えれば仕留められる」

 司令は、そう言って出現したばかりのヨミが映されているモニターを指さした。

 確かに、体のあちこちがいびつでバランスが取れていない。装甲も均一ではなく、一部はムーブメントが透けて見えるほどに薄い。

 

――アサルトライフル装着!――

 

 指令が届くと同時にカルデラ南端のポッドからライフルが射出された。

 ライフルが高度二百メートルに達し、上昇速度を失う寸前にキャッチし、セーフティーを解除すると同時に初弾を装填する。

 反動をつけて高度をとろうとすると指令が入る。

――もう一つリリースする、二丁拳銃でやってくれ――

 

 チ!

 

 舌打ちはしたが、分かってる。

 地上のポッド周辺に三か所カメラの反応がある。ドローンも二機待機していて映像を撮っている。

 ライフルを製造している四菱工業がPR映像を撮っているのだ。

 たぶん司令の横にはディレクターが居て「二丁拳銃でいきましょう!」とか言い出したんだろう。

 

 じゃ、サービスしてあげる! 

 セイ!

 

 背筋を伸ばすとウズメは跳躍して二丁のライフルを放り上げ、新体操のバトントワリングのように旋回を加えた前転でキャッチして決めポーズ!

 周囲のカメラが撮りやすいように、それぞれのカメラに向かって三度決めてやった。

 地上でカメラマンが親指を立てるのが分かった。

 まりあも親指を立てて応えたが、このまま親指でカメラマンをダニのように潰してやりたい衝動に駆られるのであった。

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かの世界のこの世界:135『ヘルム島のイメージ』

2020-11-17 05:09:01 | 小説5

かの世界この世界:135

『ヘルム島のイメージタングリス     

 

 

 例えばこれなのです。

 

 ヘルムの頭上に郵便ポストほどの大きさの懐中電灯が現れた。

「懐中電灯というのは、機能別に表現すると、こうなります」

 懐中電灯は、三つに分かれた。

 

 ボディー  電球   電池

 

「ほかにスイッチや配線やレンズ等がありますが、それをボディーに含めると、この三つです」

 ボディーと電球と電池は、いったん元の懐中電灯に戻ってから、また三つに分離した。小学生に説明するように分かりやすく、こういう授業めいたことが苦手なわたしでもよく分かる。

「ボディーにあたるものがヘルムの島です」

 ボディーの下にヘルム島のイメージCGが現れた。

「電球がわたしです」

 分かりやすく神という文字が現れた。

「そして、電池が女の子です」

 電池が女の子の姿になった。

 もう一度、三つのものが合体し、懐中電灯が点滅し、やがて、電球の輝きが弱くなって消えてしまった。

「電池が切れました……切れた電池は廃棄されて、新しい電池が入れられます」

 懐中電灯のお尻の蓋が開いて、電池が入れ替えられる。電池は別の女の子の姿をしている。

 

 これって……?

 

「そう、生贄の少女たちは、この電池なのです。だが、誤解しないでください。神は電球のエネルギーを少女の姿でお遣わしになるのです。電池は十七年かかって島の人たちに愛しまれることによってフル充電されます。そして、いま入れ替えようとされている電池が……」

 またも電池が入れ替わって、ユーリアの姿になった。

 しかし、電球は、一度灯ったきりで消えてしまった。

「……お分かりになったでしょうか」

 姫が、感に打たれたように立ち上がると、かすれた声でおっしゃった。

「それって、電球に寿命がきたってことだよね」

「はい、灯りが灯らない懐中電灯に存在理由はありません」

「それって……懐中電灯を辞めてしまうと言うことなんだよね」

「はい、ですので、電池はお返ししますね」

 

 エメラルドの上のヘルム神の姿がダブったかと思うと、一つがハッキリとユーリアの姿になって我々の前に降り立った……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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