大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・017『修学旅行・17・陛下』

2020-11-09 14:32:42 | 小説4

・017

『修学旅行・17・陛下』大石一   

 

 

 

 扶桑人以外の火星人が見ても「これは橋だろう?」と言う。

 

 なにがって言うと『皇居』だよ。

 皇居前広場に車が入って二重橋が見えた時は、四人とも感動で「ふわああ」とか「おほおお」とかしか出てこない。

 子どものころから写真で見る皇居と言えば、この二重橋だ。扶桑の千代田城も扶桑人にとっては神聖なものだけど、東京の皇居には及ばない。

 日本は扶桑人のルーツであるし、日本の中心は皇居だ。教科書に載っている『日本』のとびら絵は二重橋だし、社会見学で行った千代田城にも歴代将軍と並んで二重橋の油絵が掛けてあった。

 なんと言っても扶桑の元首は正式名称『征夷大将軍』の将軍で、五代前の扶桑宮さまに征夷大将軍の称号を与えたのが天皇陛下なのだ。今では独立国になったとは言え、扶桑人の皇室への畏敬の念はルーツの日本よりも大きいかもしれない。

 千代田城に見学に行った時、アメリアとかフランクからの交換留学生は「これが地球の皇居だよ」と先生が油絵を示しても「え、橋じゃないか?」とオレに聞いてきた。

 二重橋を見て皇居と感じる感性はいいもんだと思う。日本人や扶桑人はそういう感性なんだと思うと、ちょっと得意だったことを感動と共に思い出した。

 で、二重橋に感動しすぎて、そこから後は、どんなふうに車が進んで、どこをどんなふうに歩いたかも忘れて、気が付いたら「ここでお待ちください」と侍従さんに言われ「聞かれたことにお返事する以外は喋っちゃだめだぞ」と元帥に注意され、四人ともカチコチだ。

「お出ましでございます」

 控えの女官さんが告げて「軽く頭を下げるだけでいいからな」と元帥に倣う。

 衣擦れの音がして、きれいな足が視界の先の方に現れる。

「畏まらずに頭を上げてください」

 元帥を上品にしたような声がして顔を上げると、白いワンピースの陛下が目に入った。靖国神社での軍服姿も素敵だったけど、カジュアルなお姿もとってもいい。

 ふわわ~

 テルが素直な感動の声をあげてしまうと、陛下はソヨソヨと微笑まれた。

「今日はあぶないところを助けていただいてありがとうございました。みなさんにはお怪我はなかったと伺っていましたが、こうして御無事な様子を見ることができて安堵するとともに嬉しく思います」

「ご紹介いたします。こちらから扶桑第三高校の大石一(おおいしいち)君、緒方未来(おがたみく)さん、穴山彦(あなやまひこ)君、平賀照(ひらがてる)さんです。共に扶桑第三高校の二年生で、修学旅行の途中に靖国神社に寄ったところ、あの事態に遭遇いたしました」

「そうだったのですね、ほんとうにありがとうございました」

 陛下が頭を下げられる、オタオタして最敬礼(;^_^A

 ウイーンと小さな音がしたかと思うと、椅子が六脚せり出してきて、元帥に促され陛下が座られれてから着席。

 そのあと、侍従さんと女官さんがお茶を運んできてくださった……ところまでは憶えているが、あとのことは……ちょっと整理するから待ってくれよな(^_^;)。

 

 

 ※ この章の主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

 ※ 事項

扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

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まりあ戦記・035『大尉は司令を追いかけた』

2020-11-09 06:15:40 | ボクの妹

戦記・035
『大尉は司令を追いかけた』    



 舵司令は拒否権を持っている。

 2033年、未確認攻撃体ヨミが出現するまでは、どこの国でも軍の指揮権や作戦の決定権は人間が握っていた。
 しかし、どこの国でもヨミの出現と、その攻撃の凄惨さを予見できなかったため、コンピューターのAIがとって替わった。
 日本の防衛軍も例外ではなく、政府のマザーコンピューターであるアマテラスがその任に当たっている。
 
 アマテラスは独立したコンピューターではなく、日本各地に分散されている七つのコンピューターの総称である。

 ダイコク ビシャモン エビス ジュロウ ベンザイ ホテイ フクロクの七機のコンピューターは相互に並列化されており、国家の重大案件に関して演算を繰り返し、国家の意思決定時には多数決で結論を出す。問題ごとにホストコンピューターが決まっていて、軍事に関してはビシャモンが受け持っている。
 その決定は絶対的であり、総理大臣といえ拒否することはできない。むろん、このことは一般国民はおろか、政府や軍の指導者しか知らない。

 で、舵司令一人だけが、ヨミとの闘いに関して拒否権を持っている。

「大尉、義足のミサイルは外したらどうだ」
 作戦会議の後片付けに入って来たみなみ大尉に、司令は聞いてみた。
「あら、ビシャモンと同じことをおっしゃるんですね」
 四十七ある会議用シートを一つ一つ目視で確認しながら大尉は返事をする。
「あいかわらず、最後は自分の目で確認するんだな」
「ええ、理屈じゃないんです。ビシャモンも目視確認してはいけないとは言いませんから」
「ビシャモンはミサイルが不測の事態で爆発してしまうことを恐れている。確率は1/123000000000だがね、ハレー彗星が地球に激突する確率よりも高いんだそうだ」
「それって、世界の終わりまで起こらないってことじゃないんですか?」
「ヨミ出現の確率より一ケタ小さい」
「ビシャモンも心配性なんですね」
「わたしとビシャモンは結論は同じだが動機が違う。ミサイルとか物騒なものを搭載しなければ、有機義体に乗り換えられる」
「ええ、有機義体なら限りなく人体に近いですけど、やはり人工の義体であることに違いはありませんでしょ。任務に精励するには、やっぱ、これで……これがいいと思います」
「新しい有機義体を開発したんだ、軍の技研にも届けていないんだがね。一年使用すれば残ったDNAをコピーして完全に本人に同化する。もし脳細胞まで作れたら、人工的に人間を創作できるレベルのものなんだよ」
「……それって倫理規定に反しませんか、人間を作ることは禁じられています」
「君を完全に回復させることが、君のお父さんとの約束だからね」

 大尉の手が止まってしまった。

「ありがとうございます……でも、このミサイルも、どこかで役に立つときがある……アハハ、勘ですけどね」

 司令は小さく頷くと、端末を確認して会議室を出て行った。
 大尉は黙々と作業を続ける。

「あ、肝心の話を忘れてた!」

 手早く作業を終えると、大尉は司令を追いかけた。

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ポナの季節・89『ワッチが終わって』

2020-11-09 06:05:02 | 小説6

・89
『ワッチが終わって』
        

 

「砲雷長、艦長がお呼びだよ」
 
 ワッチ(当直)が終わって自室に戻ろうとしたら船務長に声を掛けられた。

「艦長、お呼びでしょうか」
 艦長は、士官室奥の談話スペースに居た。
「すまんな、ワッチ明けに」
「いえ、三時間もすれば上陸ですから」
「そのまま家かい?」
「ええ、両親の誕生日以来ですから」
「ちょうどいい、妹さんに頼んでもらえないかな」
 そう言われてポナの顔が浮かんだのは、二月前の『中国ドローン事件』で艦長も達幸もポナに世話になったからだろう。
「ドローン事件がらみですか?」
「あの件では世話になったな……」
 艦長はきまり悪そうに頭を掻いた。あの件でポナが関わってくれなかったら、達幸も艦長も『ひとなみ』には乗っていられなかっただろう。
「別件ですか?」
「実は……」

 艦長が切り出そうとすると、隣の士官室から聞きなれた歌が聞こえてきた。

「……妹のユニットですね」
「艦内じゃ、ちょっとしたブームだよ」
「いや、知りませんでしたね……」
「航海中はきみに遠慮してチマチマ聞いてたようだけどね、今朝入港してからは科員食堂や士官室でも大っぴらだ」
「ワッチに立っているうちに浦島太郎だ……」
「そこで、どうだろ、来月の一般公開の日にSEN48に来てもらえないだろか?」
「え、妹たちをですか?」
「うん、参観者のみなさんに喜んでもらえるだろうし、乗組員の士気も上がると思うんだ」
「……しかし、『なりゆき』の甲板じゃ狭すぎますね。ライブじゃ千や二千はいつも集めてますからね」
「やってもらえるんなら、『かが』の甲板だよ。あそこならラグビーコート二面分はゆうにあるからね」
「『かが』ですか!?」
 達幸はワッチしながら視界に入っていた新鋭空母型護衛艦の雄姿を思い浮かべた。あそこなら二回公演でなんとかいけるだろう。
「これはわたしの発案だが、企画は地方隊広報部がやることになる。君に異存がなければ正式に隊の広報から申し入れる」
「じゃ、家に着いたら下話しておきます」
「よろしく頼むよ、念のため艦を下りたら基地の広報に寄ってくれ、わたしの説明に漏れがあっちゃいけないからな」
「承知しました」

 士官室を出るとすれ違う乗組員から「頼みますよ砲雷長!」「寺沢、ぜひSEN48をな!」などと声をかけられる。

――どうも艦長も乗組員もグルだな……――

 広報に寄ってみると乗組員どころではなかった、基地司令の署名入りの出演依頼書までもらってしまった。

 

☆ 主な登場人物

父      寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師
母      寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母
平沢夏   未知数の中学二年生

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かの世界この世界:127『ポチのデジカメ』

2020-11-09 05:55:46 | 小説5

かの世界この世界:127

『ポチのデジカメ語り手:テル         

 

 

 なるべく早く帰ってきてくださいよ(~o~)。

 

 お手上げというジェスチャーをして荒れ地の万屋はあきらめた。

「ペギーさん困らせるんじゃないぞ」

「「分かってる!」」

 これ以上ないというふくれっ面でロキとケイトの声が揃った。

 転送販売に来て帰れなくなったペギーは、我々がヤマタの神をやっつけてユーリアを連れ戻すまで子守をしてもらうことになったのだ。

「あんな顔の二人は初めてだね」

 体と精神年齢では二人以上に子どもなのだが、空を飛べるポチは偵察と連絡役のために連れてきている。

「どうだ、上から見て、この道があってるかどうか分かるか?」

 タングリスが聞くと、上空五メートルくらいのところでキョロキョロする。

「分かんないよ、灌木の葉が茂って見当がつかない」

「ち、使えないやつだ」

「あ、いま舌打ちしたね! たとえ王女様だって、舌打ちはゆるさないぞ!」

「だったら、役に立ってみろ!」

「姫、罵倒されて発奮するものではありませんよ。いちど下りてこい、ちょっと考えてから進もう」

「らじゃー」

「打ち合わせなら出発する前にしておくべきではないのか」

「すみません」

 タングリスは謝るが、わたしには分かる。ロキとケイトの前で相談すれば二人の疎外感を強くするばかりだ。

 ここらへんで体制を整えるのが上策だろう。

「なにか使えそうなアイテムはないだろうか……」

「同じことを考えていたな」

 目の高さの空間をクリックしてウィンドウを出す。アイテムをクリックするとペギーから買ったばかりの福袋のフォルダーが目についた。三人共用のフォルダーになっているので献策がしやすい。

「種類も量もハンパじゃないぞ」

 ブリュンヒルデがぼやく。ぼやくのも無理はない、スクロールしてもきりがないほど続いているのだ。

「十キロの純金と交換したんだ、これくらいには……」

「ジャンクじゃないのか……」

「とりあえず、系統別に分けましょう」

「そうだな、回復系、補助系、白魔法、黒魔法……」

 三人で忙しく指を動かす。

「分けても、それぞれ千以上あるし……」

「追尾アイテムはないだろうか……それをポチに持たせれば……」

「『しるべ虫の粉』がある」

「ああ、モンハンの必須アイテム!」

「でも、これってモンスターにしか効かないのでは?」

「ポチはもともとシリンダーの変異体だ。シリンダーならモンスターだろ」

 三人の目線がポチに向く。

「し、失礼な! いまのあたしは妖精だもん!」

「いや、悪かった(;^_^A」「すまんすまん(^_^;)」「もっと探そ」

 ゴソゴソ ガサゴソ

 やがて、本来の目的を忘れて整理することに夢中になってしまい、ヘンテコなアイテムを見つけてはヘーとかホーとか声をあげているだけになった。

 ポチの方が偉かった。

「見つけたよ! 正解のルート!」

 我々が整理に没頭している間に、ポチは地上スレスレに獣道を飛んで調べてきたのである。

「これ、見てよ!」

「おまえ、デジカメなんか持ってたのか!?」

「ブリュンヒルデのフォルダーからこぼれたのを拾った」

「ああ、画素が百万しかない三世代前のジャンク」

 ブリュンヒルデはバカにするが、問題が解決すればノープロブレムだ!

 ポチのデジカメには『ヤマタ神方面』と表示の付いた洞窟が映っていた……。

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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