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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・031『今日からは特任隊員』

2020-11-05 06:44:18 | ボクの妹

・031
『今日からは特任隊員』    


 

 どこで間違えてしまったんだろう?

 百のパーツを組み直したマリアの骨格は二センチほど高くなってしまった。
 ベースのスタッフは「自分たちでやるからいいですよ」と言ってくれたが、自分の代わりに犠牲になったマリアを人任せにするのは忍びなく、まりあはマニュアルに沿って、丸三日かけて復元した。

 で、マリアは背が高くなってしまったのだ。

「ま、いいわよ。伸びた分は腰から下だし」
 鏡に姿を映し、ポーズをとりながらまりあが答える。
「徳川曹長、そんなマジマジ見ないでくれる。あたし、チョ-裸なんだけど」
「スケルトンの状態で言われてもねえ」
 マリアは、長時間高熱で焼かれたためにムーブメントとPC以外は焼け落ちて骸骨同然になってしまっている。
「オホホ(ケタケタ)、これで肉を付けたらナイスボディーになるかもね」
 スケルトンの状態で笑うと、骨同士がぶつかってケタケタという音が混じる。
「パーツが熱膨張したのかもしれない……ま、あとは肉付けだ、マリア、第三ラボに行くぞ」
「ハイハイ~、よっと!……あら?」
 調子に乗ってステップを踏むと頭蓋骨が落ちてしまった。
「頭は拾ってやるから、急げよ」

 マリアを見送ると、まりあは荷解きを始めた。

「自分で詰めてないから、なにがなんだか分からないよ……」
 二つ目の段ボールでまりあは音を上げる。それでも俺の過去帳だけは仏壇の所定の位置に収めてくれた。
「あれ、マッチが無い……」
 線香を立てようとしたまりあの手が止まる。
「ベースの中じゃ火は使えないから」
 ちょうど部屋に入って来たみなみ大尉が注意する。
「わ、びっくりした!」
「片付け手伝ってあげたいけど、忙しくてね。ちょっと腕を出して」
「え、なに?」
「いいから」
 大尉は、マリアの腕を掴み、二の腕までシャツをめくって、スタンプのようなものを勢いよく叩きつけた。
「痛い! なにすんのよ!?」
「まりあもベース住まい。今日からは特務旅団の特任隊員、いちおう階級は少尉だから、士官用の施設は全部使える。あとは、こうやって揉んどこう……」
「い、痛いってば」
「認識チップ埋め込んだから、ちょっとの間ベッドで横になっていて。じゃ、21時には戻ってくるわ」
 それだけ言うと、大尉は足早に行ってしまった。
「あ……眠くなってきた……」
 チップの埋め込みには微妙な麻酔がかかっているようで、まりあはベッドでまどろみ始めた。

 三時間ほど眠ったまりあは、ベッド脇に立つ人の気配で目が覚めた。

「いつまで寝てんの!」
 肉付けの終わったマリアが、偉そうに腕を組んで立っている。
「……あ……え? まりあ?」
「こうやって見ると、まりあってブスよね」
 いきなり失礼なことを言う。
「マリア、微妙に変わっちゃった?」
 微妙ではなく、かなりの美形に変わったマリアは、こう言った。
「マリアの影武者は卒業したの、今日からはガイノイド戦士テレジアよ。よろしくね」
「テレジア?」
「そーよ、ガイノイドってのは機密。書類上はまりあの姉ってことになってる。グレードは上がったけど、まりあと相似形だからね。一個年上の美人お姉さんということになってる。ダミーの姉妹関係は、そこのパソコンにインストールされてるから学習しといてね。あ、一応ガードは継続するから安心して、それじゃ、あたしの部屋は隣だから、入る時はノックしてね(^^♪」
 マリア……いや、テレジアは鼻歌まじりで隣の部屋に行ってしまった。
「あ、あーーーー!?」
 眠っている間に部屋は片づけられていた。

 仏壇こそはそのままだったが、それ以外は、なんというか……。

 まるでキモオタの部屋じゃんよ!

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ポナの季節・85『夏の居場所』

2020-11-05 06:32:52 | 小説6

・85
『夏の居場所』
          



 SEN48は「エスイーエヌ・フォーエイト」と読む。

 SEはポナ・安祐美・由紀・奈菜の世田谷女学院を、Nはみなみの乃木坂学院のイニシャルを現し、48はそれぞれの学校の所番地の四丁目と八丁目からとっている。
 つまり符丁のようなもので、とりたてての意味や意気込みがあってのことではない。
 もともと世田谷女学院に住み着いていた幽霊の安祐美が、ポナたちを言いくるめて作ったユニットで、月に何度か路上ライブができればくらいのノリで始めた。
 
 この二か月でSEN48は変わった。

 東北の被災地や、あらかわ遊園でのライブを重ねることで音楽の力を知った、知ることでメンバーには力が付いた。技量はまだいま一歩だが、歌や演奏に心がこもるようになってきた。

「なっちゃんにはしばらくアシスタントをやってもらう」
 安祐美は夏を見送ると、最初にそう言った。
「いっしょにステージはダメなの?」
「そうよ、あたしたちは最初からステージに立ったじゃん」
「歌や楽器は夢の中で教えてあげればいいじゃない、あたしたちみたいに」
 ポナ以外の三人は、明日からでも夏といっしょにやろうという空気だ。
「みんなは知ってたでしょ、あたしが幽霊で、特殊な能力があること。だから夢の中で特訓やって、いきなり演奏や歌がうたえても不思議だとは思わない。でも、なっちゃんはどうだろ、朝起きていきなり歌えて演奏できたら……混乱するよ」
「なっちゃんにも安祐美が幽霊だって言っちゃえば?」
「これ以上正体知ってる人間増やしたくない。それにね、なんの努力もしないでSEN48の人気の中に入ってきたらまずいんじゃないかな……みんなは最初から歌って演奏はできたけども、お客さんとの交流は一からだったじゃない。そういうとこは他のアーティストと同じ苦労はしてきたと思うんだ」
「ふーん、そっかな……」

 三人が考え始めたとき、校門まで見送ってきたポナが帰ってきた。

「あたし思うんだけど、なっちゃんアシスタントから始めた方がいいんじゃないかな……」
 みんなが笑い出した。
「なによ、人が真剣に言ってるのに!」

 校門を出た夏は思わずスキップしてしまった。スキップなんて小学生の低学年以来だ。

「あ……ハハハ、やだ、あたしか」
 電柱一本分向こうのショウウインドウに素敵な女の子が写り、一瞬たじろいだのでおかしくなった。
「あたしも明日からメンバーなんだ、使いっぱしりのスタッフのそのまた見習いからだろうけど、SEN48は見習いだって可愛くなくっちゃね」
 
 何年かぶりで夏は自分の居場所ができた、夏の名残の蝉に「がんばれ!」と言ってみたりした。


☆ 主な登場人物

父      寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師
母      寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母
平沢夏   未知数の中学二年生

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かの世界この世界:123『対シリンダー戦』

2020-11-05 06:24:25 | 小説5

かの世界この世界:123

『対シリンダー戦』語り手:テル          

 

 

 空を埋め尽くすほどのシリンダーの群れだ。

 

 全てを相手にすることは出来ない、群れの薄いところを集中的に攻めて穴が開いたところから突破するしかない。

 時間をかけていると融合体になってしまって手が付けられなくなる。

――三式弾だ、三時の方向が薄くなっている、撃ったら突撃する――

「三式弾ヨーイ!」

「ラジャー」

 ブリュンヒルデが命じ、ロキが弾を込める。三式弾とは一種のクラスター弾で、目標に最接近したところで炸裂し、打ち上げ花火のように幾百の子弾をまき散らす。シリンダーの群れに穴が開いたところを一気に突き抜けようと言う作戦なのだが簡単ではない。一撃で致命傷を与えられるのは炸裂の中心から半径十メートルほどがせいぜいだ。傷ついたシリンダーは直ぐに融合して、その名も融合体となって難儀なクリーチャーに変異する。これまではなんとかしのいできたが、ヘルムのシリンダーは初めてだ。いや、ヘルムにはこれまでクリーチャーが出現したという記録すら無いのだ。見かけは同じシリンダーでも油断はできない。

 テーーー!!

 号令と変速機が四速に切り替わるのが同時だ。

 飛んでいる状態でシフトチェンジが有効なのかは一瞬疑問……だが杞憂だった。

 ズガーーン!!

 ギュィーン!

 三式弾の炸裂! 四号の増速!

 シリンダーの壁には四メートルほどの穴が開いているが不完全で、境界には胡麻斑のようにブチギレても生きているシリンダーがいる。

 ビチャ ビチャ ビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャ!

 破片になっても生きているシリンダーが粘液をまき散らしながら四号の車体に貼り付いていく!

「くそ、粘っこいやつらだ!」

 貼り付いたシリンダーが四号の行き脚を鈍らせる、タングリスは負けじとアクセルを踏み込むがエンジンは息絶え絶えになり、速度計の針は急速にゼロに近くなる。

 えい! えい! えいえいえい!

 可愛い気合いが聞こえる。

「ポチが一人がんばってるぞ!」

 ペリスコープから覗くと密集したシリンダーの砕けの中でポチが戦っている。

「ケイト、行くぞ!」

「おお!」

 ハッチの隙間から剣と弓を出し、邪魔になるシリンダーをぶちのめしつつ外に出る。

 出た途端に貼り付くシリンダーの砕け、左手で顔に貼り付かれるのを防ぎながら剣を振り回す。ケイトも同じように弓を振り回している。ケイトの弓も進化していてライトセーバーのように光って、振り回す旅にブンブンと頼もしい音がしている。

「げ、限界だ……高度が保てん!」

 ブリュンヒルデが唸る、ハッチの縁を掴む手がブルブルと震えはじめた。

 グィーーーン ズザザザザザザザ! ザーーー!

 四号は墜落と降下の間ぐらいの勢いで着地していった。

 

 見上げる空にはシリンダーの群れがわだかまっているが、降りてくる気配は無く、大きく旋回すると北に向かって方向を変える、変えた先には胡麻粒ほどの大きさになってなお北進していくユーリアが視界没になっていく。

 視線を落とすと、身の丈ほどの灌木林。所々に獣道なのだろうか下草が疎らになっているところがあるきりで、日ごろ人の出入りが無いことが偲ばれる。鳥か獣か、はたまたクリーチャーか分からぬものの気配と鳴き声。砲塔の上に身を乗り出すと灌木林の木の間隠れに鬱蒼としたジャングル、さらに向こうには急峻な山岳が見えて、この先の進撃が困難なことが伺える。

 ん?

 分からぬものたちの鳴き声が止んだ。灌木林からは幾百の鳥たちが一斉に飛び立つ、いや何かを恐れて飛び立っていく。

 なにか来る……。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーー!!

 

 地響きがしたかと思うと、大地が鳴動して、目の前の灌木林がユサユサと揺れる。

 ギシ ギシ ギシ

 四号のサスペンションが軋んで車体が揺れる。

 ゴゴゴゴゴゴゴーードドドーーーーン!!!

 地震だ! 震度7はある!

 25トンある四号の車体がオモチャのように揺れる揺れる!

 さすがに乗り慣れた乗員たちなので、車内のフックや取っ手に掴まって揺れをしのぐ、悲鳴を上げる者もいない。

 十数秒だったろうか、揺れが収まって四方を見渡す。

「みんな、後ろを見ろ」

 ブリュンヒルデの差す四号の後方を見ると、地面が陥没して海の水が流れ込んでくる。

 四号の背後数メートルのところから地面が無くなって、ヘルムの島は二つに分裂してしまっていた!

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・80 マップ:9 金の針:5 所持金:1500ギル(リポ払い残高20000ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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