大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・24「中庭のバトル・1」

2018-01-31 15:18:42 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・24

『中庭のバトル・1』

 

 

 鬼の形相というのは比喩とかデフォルメとかじゃない!

 もう、まるっきりの鬼だ!

 

 薄くなった髪の毛は逆立ち、まるで脳みそが茹って湯気を立てているように見える。目と口は釣り上がり、メリメリと音を立てて裂けている。貧弱な体のくせに肺活量が並の十倍ほどに感じられ、荒い息をするたびにゴジラのようにゴーゴーと音がする、血管が赤や青に浮かび上がり、呼吸の度に膨れ上がりグロテスクなマスクメロンのようだ。

「生徒の分際で教師をコケにしやぐゎって……佐伯いいいい、ちょっとばかり可愛いからって、たてつきやがってえええ……そうだよおおお、おまえの言うとおりだったよ。ネットで調べたら、おまえの言う通りだったさ! オレは驚愕のあまり椅子からずり落ちて、もうちょっとでチビってしまうところだったよ……どこ見てんだあ? こ、これは机の上のお茶をひっくり返したからで、けっしてチビったわけじゃないからなあ……お、おまえら、廊下で笑ってただろう……ささいな間違いを、鬼の首とったみたいに笑ってただろう……可愛い綺麗な顔しながら、そんなクズの劣等生といっしょになってええええええ!」

「そ、そんな、笑ってなんかいません」

「ぐへへ……怯えやがって、怯えても可愛いって反則じゃねーかああああ!!」

 ベキっと音がして、眼鏡が弾け、ブチっと音がしてシャツのボタンが跳んだ。

「こ、怖い」

 佐伯さんが腕にしがみついてくる、オレも怖いんだけど、生意気にも佐伯さんを守らなきゃって気がしてくるぞ。

「ネトゲしかできない面汚しがあ……なんだよ、そんなゲームのモンスター見るような目で見やがってえ……!」

 バリ!

 服が裂けて肌が露出する……それはもう人ではなかった、ムリムリと盛り上がった肉はひび割れて臭くて赤黒い体液をタラタラとこぼしてオレたちに近寄ってくる。

「オレから離れないで……」

 震えながらも、オレは佐伯さんを庇った、庇いながら中庭の奥にジリジリと後ずさる。

「い、いっしょに、く、くくく、食いち……ぎってや……るるる……さ、佐伯ききき、クズといっしょに噛み砕かかかか……かれて……し、し、しまえええええ!」

 グワッ!!

 赤い口を開けて跳躍したそいつは、もはや人間じゃなかった。

 レモンほどの大きさに膨れた瞳は蛇のように縦長で、口からはみ出た舌は腕の長さほどもあって、チロチロ二枚に分かれている。

「危ない!」

 佐伯さんを抱えて遊歩道を転げる。二人の下でシャワシャワと枯れ葉が砕け晩秋の香りが鼻孔に満ちる。

 秋の匂いって枯れ葉の匂いだったんだ……呑気な感動をする。その秋の香りが香ばしくなって……と思ったら、モンスターが火を吐いて、舞い上がった枯れ葉の屑を焼いているのだ!

 グエ!

 奴のかぎ爪が伸びてくる! させるか!

 佐伯さんを抱えたまま身を捩る! ビシュッ! 背中に衝撃!

「キャーーーー!」

「大丈夫、佐伯さんには掠らせもしないから!」

「血……背中から血が」

 オレの背中に伸ばしていた手に血が付いたようだ……どうやら制服の上着ともども背中を切られた。

 グエエエエエ!

 セイ!

 花壇の縁に足を掛け、その反動で転げる! 佐伯さんと俺の頬が密着する。暖かくて柔らかくていい匂いがする……こんな状況に置かれてなお……いや、この余裕なら、まだ大丈夫! ネトゲで鍛えたバトルの感覚はダテじゃねえ!

 と思ったら、中庭の縁にぶち当たって逃げ場所が無くなってしまった!

「北斗君!」

 振り返るまでもなく、奴が迫ってきたことを感じる! 

 セイ!

 佐伯さんを抱えたまま跳躍……できるわけがない、ネトゲの勘は働いても、身体能力はヘタレの高校二年生だ。

 せめて佐伯さんだけでも……思う自分を健気に思う。

 でも、万事休す! 全身を盾にして佐伯さんを強く抱きしめる!

 

 バシッ!!

 

 先ほどとは比べ物にならない衝撃が背中に走った!

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・国つ神の末裔 一言ヒトコ・5『尖閣諸島沖空中戦』

2018-01-31 06:12:35 | 小説5

国つ神の末裔 一言ヒトコ・5
『尖閣諸島沖空中戦』



 昔、雄略天皇が葛城山へ狩に行った時、山中で、自分たちと同じ身なりをした一行に出会った「何者だそなたたちは!?」そう尋ねると、天皇そっくりの者が、こう言った「吾は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神。葛城の一言主の大神なり」 これは、その一言主の末裔の物語である。 



 陳少佐は、尖閣諸島の領空を三十分にわたって侵犯し帰隊する予定で、J-10を低空速度ギリギリのマッハ1.2で飛行していた。

 那覇基地ではスクランブルの司令を受け、F15Jが二機飛び立ったところであろう。那覇基地から尖閣諸島までは三十分ほどかかる。尖閣の領空で出くわしても、ほんの十分ほど、自衛隊機をオチョクレば任務達成である。
 自衛隊は領空を侵犯されても、警告。あとはせいぜい並走してくるだけで、間違っても火器管制レーダーを照射してきたり、アタックポイントに機体を飛ばしたりはしない。

 楽な嫌がらせ飛行のはずであった。

 北西から回り込んで、レーダーに尖閣を捉え始めた時、単発のレシプロと思われる機をレーダーに捉えた。速度は二百ノットそこそこで、無謀にも、陳少佐のJ-10に接近しつつあった。

 目視できる距離にまで近づいたとき、陳少佐は、わが目を疑った。教習生のころに何度か見せられた七十年前の日本のゼロ式艦上戦闘機だった。

 陳少佐の知識では、日本に飛行可能なゼロ戦はいない。ロシアがレプリカを作って売っているという話を覚えていた。
 日本は自由すぎて、時に予測もつかないことがおきる。今日も元総理がクリミアに行って、ロシア寄りの発言をして、中国国内でも笑いものになったところだ。

「ここは、いっちょう脅かしてやるか……」

 陳少佐は、三百ノットまで減速して、ゼロの横に付けた。三百ノットはゼロの最高速度だ。横に付けたらバシバシ写真も動画も撮りまくり、十メートルぐらいに接近して、脅かしてやろうと思った。
 
 信じられなかった。

 横に付けた途端、ゼロは視界から消えた。慌ててレーダーを見ると、真後ろやや上の、絶好のアタックポイントに付けていた。

「ちくしょー!」

 陳少佐は、スロットルを上げて、このポイントから逃げ出そうとした。
 寸前に、ゼロは増速し陳少佐の前に出た。
 ちょっと頭にきた陳少佐は火器管制レーダーを照射した。しかし、相手が本物のゼロなら、レーダー照射を受けたことさえ分からない。ゼロは、悠然と撃てるものなら撃ってみろと距離四十メートルほどに詰めてきた。

「ちょっと怖い目にあってもらうぜ……」

 J-10の23ミリ機銃が火を噴いた。ゼロは、それを予見していたように、寸前で急上昇、陳少佐は戦闘機乗りの性で後を追ってしまった。上昇したゼロは空中に描いたループの頂点で捻りこみをかけ、あっと言う間に、後ろを取られてしまった。急旋回をしているので、スロットルを上げることができない。三百ノットに近い速度でドッグファイトになった。
 マッハを超える急旋回にも耐えられる陳少佐と、中国の主力戦闘機だったが、三百ノットで、三十分やられては体も神経ももたない。
 この間、陳少佐は、一度も後ろを取れていない。相手にその気があれば、いつでも撃ち落される状況だ。

 ついに、陳少佐はブラックアウトしてしまった。長時間の急旋回の連続で血が下半身に集中し、脳の血流が悪くなり、視力を失ってしまうのだ。陳少佐の機体は斜め下に失速しかけた。

 その時、右翼に衝撃を感じた。

 なんとゼロが真横に来て、左翼でJ-10のウイングを叩いたのである。一歩間違えば空中衝突という曲芸である。
 ゼロのキャノピーが開いた。
 白いマフラーをたなびかせ、パイロットが白い歯を見せた。
 陳少佐は、やっとの思いで、映像だけは撮った。

 一時間後、陳少佐の機体はスクラップ寸前の状態で帰隊してきた。

 中国が流した映像には、信じられない人物が写っていた。坂井三郎少尉であった。
 
 ヒトコは、アキバのプラモデル専門店のウインドウに飾ってあるゼロ戦を見続けていた。そして、イメージだけでも自分の能力が発揮できることを確認した……。

「パイロットはポルコ・ロッソの方が面白かったかな……」

 この件について、ヒトコがもらしたたった一言の言葉であった。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする