大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・12「屋上の天体観測」

2018-01-13 16:21:35 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・12

『屋上の天体観測』

 

 

 イスカの西田さんが誤解を解いてくれた。

 

 と言っても、堕天使の魔力で墜落寸前のジェット機をかわした……とは言っていない。

 片棒担いだオレが、まだ半信半疑なんだから、生活指導の先生たちが信じるわけも無いし、言っていいことでもない。

「宵の明星が見たかったんです……」

 優等生の西田さんが、保健室を抜け出してきてまで言うので先生たちは信じてくれた。

 じっさい、この時期を逃してしまうと見られなくなることを専門的な知識で解説するので理科の先生でもある生指部長が感動した。

「それは感心だ。よし学校の天体望遠鏡を貸してやろう! 俺も立ち会いたいが、あいにく仕事でな。ぜひ週明けに観察レポートを出してくれ!」

 

 ということで、再び屋上。かわりばんこに天体望遠鏡を覗いているオレと西田さんを見ながら階段室の壁に背中を預けて座っている。

 えと……説明。

 西田さんのスイカが二人にそっくりなアバターを出して天体観測をやらせ、オレタチは大事な話をしている。生活指導室の窓からは屋上がよく見えるからだ。

「堕天使が力を発揮するにはジェネレーターが必要なのよ。それで、わたしに適合するのは勇馬、あなただというわけなのよ。候補になった子は他にもいるけど、四年前の適合テストで勇馬が一番適していることが分かった……本来ならジェネレーターが、その器としての寿命を終えるのを待って下僕とするんだけど、ルシファーの侵略が始まった今は悠長なことを言っていられない、それで……」

「えと、話が見えないんだけど」

「呑み込みが悪いわね……悪魔には二系統があるの。わが父サタンの真悪魔の系統と、ルシファーの闇悪魔の系統がね。真悪魔は神のバランサーで、この世を維持しようとしている。ルシファーはそれを覆してこの世を闇にしてしまおうとしている。そのルシファーの侵攻が早くなってきたので、サタンの娘であるわたしが立ち上がらざるを得なくなったというわけなのよ」

「えと……そのルシファーってのは……」

「ほんと鈍いのね、さっきジェット機が墜ちそうになったでしょ。あれルシファーの企みなのよ。こないだ佐伯さんが思い詰めて飛び降りようとしたのもルシファーの影響があるからなのよ。他にも天変地異や事件のいくつかはルシファーの仕業よ。まだ始まったばかりだけど、これからは立て続けにおこるでしょう……むろん全部を解決するわけにはいかない。我が父サタンの力が満ちるまでは、わたしが踏ん張らなきゃいけないの。特に、この学校はサタンの聖地、なにがあっても破られるわけにはいかない。ジェネレーターであるあなたに選択権は無い。もう下僕の契りを結んだのだからね……」

「さっきのキスが……?」

「そうよ、拒否すれば勇馬の明日は無いわよ……ルシファーも勇馬がジェネレーターであることは気づいている……近ごろ身の回りで危険な目に遭ったり、おかしいと思うようなことは無い?」

 オレは、ゆっくりとイスカを指さした。

「フ、そういう面白いところ好きよ。でも、他には?」

 幻想神殿のあいつが思い浮かんだが、アレはなにかのバグだ。

「あ、そうだ。オレの成績を落としている先生たち!」

「それは自業自得というものでしょ。むろん学業不振で退学なんかされたら困るんだけど……って、その真顔は本当にヤバイの?」

「え、あ、ま、なんとかなるんだろうけど」

「なんで目が泳ぐの? マジ退学とかあり得ないんだけど……もう少しで期末テストよ」

「だ、大丈夫だって」

「その大丈夫は信じられない。よし、わたしが直に指導してやろう!」

「え、テスト一週間前から?」

「いや、明日……いや、たった今からだ。勇馬の家に行くぞ!」

「ちょ、ちょ……」

 

 オレの下僕生活は試験勉強から始まった……マジ勘弁してよ!

 

 

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高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・22『スランプな今日この頃』

2018-01-13 06:21:55 | 小説・2

大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・23
『スランプな今日この頃』 
 
       


☆来るとは思てたんですけど

 台詞はとっくに入りました。ミザンセーヌ(立ち位置、動きのきっかけ) エロキューション(発声とアーチキレーション=滑舌)も文句なしです。音響やってる長曾我部さんが少林寺が休みの日に5人ほど連れてきて試演会みたいなこともやりました。

「すごい!」
「さすがに演劇部!」
 と誉めてくれるんですが、なんか物足りません。勇気を奮って聞いてみました。
「『アナ雪』と比べてどう?」
 五人とも『アナ雪』は観てます。うちらも出たばっかりのDVDで観ました。
「あれはアカデミー賞とったやつやもん。なんちゅうか次元がちゃうよって……」

 うちらも、あれとは勝負にならんと思います。せやけど、あえて聞いてみたんです。
 やっぱりなあ……いうのんが、うちら役者の感想です。

「そら、本も、かけてるお金もグレードちゃうねんさかい、あんまり考えんでもええんちゃう?」
 長曾我部さんは、少林寺の元部長らしくフォーローしてくれます。
「先輩の気持ちは嬉しいんですけど。この『すみれの花さくころ』は完全やと思てるんです。初版が15年前、上演回数は20回ほど。その都度改訂されて、これで五訂版です。やってみて分かるんです。無駄なもんはありません。足らんもんもありません。試しに初版でもやってみましたけど、無駄と無理のある本でした。でけへんとしたら、うちらの力の足らんせいです」
「そう……で、なにが足らんか分かってるのん?」
「……それが分かりません。坂東先輩にも通しのDVD送ったんですけど『自分らで考えなさい』でした」

 しばらく四人、稽古場のプレゼンテーション教室で落ち込み。

「あたし、芝居のことは分からへんけど、少林寺で技に行き詰ったら、しばらく他の技の稽古に切り替えてみたりするよ。ほんなら、躓いてたとこが霧が晴れたみたいに見えてくる」

「……それや!」

 直観でした。同じ作者の違う本をやったら、その本では書ききってなかったものが見えてくるような気がしました。
 例えて言うなら、AKB48のことを知ろうと思たら『フォーチュンクッキー』だけやってても分かりません。『ビギナー』『桜の栞』『前しか向かねえ』『上からマリコ』『下からさしこ』いろいろやって、AKBの、それでも半分ぐらいしか分からへんと思うんです。
 そこでうちらは、作者の他の作品も稽古してみることにしました。

 スランプ克服大作戦です!

☆『クララ ハイジを待ちながら』

 この作品を選んでみました。作者の直近の戯曲です。

 ほとんどクララの一人芝居なんですけど、舞台には登場せえへん「アナタ」とのチャットの会話で話が進んでいきます。女の子二人の葛藤いう点では同じ構造してます。
『すみれ』の場合は、対立軸が、すみれとかおるの中にしかありません。対立は対立だけとちゃいます。互いに全体を通して関係を持ち、影響しあい、相手も自分も変わっていく存在のことです。『すみれ』の中では、それはコミカルに、そして遠慮気味に表現してあります。
『クララ』は、クララがアナタに話しかけることで、自分の隠れた心の中が出てきます。その表現は多弁で、スラプスチックでさえあります。この二つの作品はネガとポジやと言うてもええと思うんです。ネガとしての『クララ』を演ることで、ポジとしての『すみれ』の理解と表現が深まると思たんです。

 で、ほとんどクララの一人芝居なんで、あやめちゃんといっしょにやって、演出しあうことにしました。

☆余計なことかも

 芝居作りは建築物に例えられます。うちらは建物の基礎が弱いんで、地盤の改良からやってます。何回も言うてますけど、役の肉体化いうのは、これほどまでに難しいんです。9月10月になってコンクールの準備に入るクラブは分かりません。
 せやけど批判することは簡単やけど、現実は見てみなら分かりません。夏休みの間に、よその演劇部の訪問もしたいと思います。

文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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