BSハイビジョンで先週末放映していた「夢の音楽堂 ~ クラシック音楽・不滅のメロディー ~ 」という番組を観ました。
観たといっても、レコーダーに録画しておいたものを観た訳ですが、この9時間弱の番組の最後の演目が、昨年のザルツブルク音楽祭の目玉と言われていたアーノンクールのフィガロ。
いや、違いました。「ネトレプコのスザンナが聴けるフィガロ」というほうが正確?
冗談はさておき、プレミアがついて何と1枚20万円とも40万とも言われたあの公演です。
昨秋、教育テレビでさわりだけ放映されていましたから、全曲を早く観たいと思っておられた方も多いことでしょう。
実は、昨年12月に販売されたDGのモーツァルトオペラの全集にも含まれていたようですが、何せDVD33枚組という代物。おいそれとは手が出せません。
そんな折、オペラファンには最高の贈り物だったのではないでしょうか。
『ザルツブルク音楽祭2006』
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」
<出演>
■アルマヴィーヴァ伯爵:ボー・スコウフス
■伯爵夫人:ドロテア・レシュマン
■フィガロ:イルデブランド・ダルカンジェロ
■スザンナ:アンナ・ネトレプコ
■ケルビーノ:クリスティーネ・シェーファー
■マルチェリーナ:マリー・マクロクリン
■バルトロ:フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ
■バルバリーナ:エヴァ・リーバウ ほか
<合唱 >:ウィーン国立歌劇場合唱団
<管弦楽>:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮>:ニコラウス・アーノンクール
<演 出>クラウス・グート
<収録>2006年7月 ザルツブルク音楽祭より モーツァルト劇場
前置きが長くなりましたが、さすがに刺激的な上演でした。
私は気がついたら3回位観ていました。
もちろん、食事時間等に1~2幕ずつこま切れで観たものを含んでのことですが、3回も観たということは、それだけ魅力的だったということでしょう。
アーノンクールの序曲は、とにかく遅い!
しかし決して重々しくはなく、不思議な軽さと言うのでしょうか、独特の雰囲気があります。加えて、序曲に限りませんが、ウィーンフィルが本当に柔らかくいい味を出していますね。
歌手も粒ぞろいで、アリアもデュエットもアンサンブルも、まったく穴がありませんでした。
ダルカンジェロのフィガロは、10数年前のザルツブルクで、そして昨年ウィーンでも観ることができましたが、プライ亡き後、当代随一のフィガロかも。
とにかく歌も演技も、まさに機知に飛んだフィガロそのものでした。
そして、ネトレプコ。
スザンナにしては少し深い声のような気もしますが、まあ舞台姿が素晴らしい。フィガロだけではなく、伯爵がころっと彼女の魅力に嵌ってしまうのも頷けます。
また、予想外に知的なスザンナだったと言ったら、あまりに失礼でしょうか。(ファンの方、すみません・・・)
スコウフスとレシュマンの伯爵夫妻も成熟した大人の歌唱を聴かせてくれましたし、スザンナ役で評価の高かったマクロクリンがマルチェリーナを歌うなど、脇役も本当にレベルが高かった。
しかし、私が文句なく素晴らしいと思ったのは、クリスティーネ・シェーファー。
どこか危なっかしい中性的な魅力に溢れた、最高に魅力的なケルビーノでした。モーツァルトのイメージどおりのケルビーノじゃないかなぁ。
しかし、これだけ素晴らしい歌を聴きながら、そして、いたるところで感心しながら、「最高のフィガロだった!」とストレートにいえないところがオペラの難しいところ。
それは、ひとえに演出です。
実演を観た人の間でも、賛否両論あったようです。
このステージでは、台本にはない狂言回しの役を演じる天使が登場します。
名前もケルビム。ケルビーノの分身?
ただし、魔笛の3人の童子のような「幸運の天使」的な存在ではありません。
いたずら好きの運命の女神といった風情です。
その結果、「自分で自分が分からない」という、全員がまさにケルビーノ状態に。
本当に面白いけど、これでよかったのかしら。
第4幕の最後は、伯爵の「コンテッサ、ペルドーノ・・・」の後、どんな演出でも一直線にハッピーエンドに向かうのですが、今回の場合はなにやら一筋縄では行きません。
もう一波乱起こそうとするケルビムの動きが、どうしても気になるのです。
また、今回の演出では、歌手を横になって歌わせるシーンが多かった。
にもかかわらず、破綻なく歌いきる歌手達には、心から脱帽です!
それから、スコウフスもレシュマンも、またダルカンジェロも、普段以上に多く汗をかいているようにみえました。
これも少々、ライトが強すぎたのでは・・・。
何やらネガティブなことを書きましたが、上演自体は「最高に刺激的な舞台であり音楽」であったことは、紛れもない事実です。
演出も、しばらくたってもう一度観たら、すんなり溶け込めるかもしれません。
再チャレンジしてみたいと思います。
P.S
今年のザルツブルク音楽祭では、同じグートの演出で再演が予定されていますが、
指揮はアーノンクールに替わってハーディング。
そして、スザンナ役にはなんとダムラウです。
声質的にはダムラウの方が合うように思うので、きっと素敵な舞台になるだろうなぁ。
観たといっても、レコーダーに録画しておいたものを観た訳ですが、この9時間弱の番組の最後の演目が、昨年のザルツブルク音楽祭の目玉と言われていたアーノンクールのフィガロ。
いや、違いました。「ネトレプコのスザンナが聴けるフィガロ」というほうが正確?
冗談はさておき、プレミアがついて何と1枚20万円とも40万とも言われたあの公演です。
昨秋、教育テレビでさわりだけ放映されていましたから、全曲を早く観たいと思っておられた方も多いことでしょう。
実は、昨年12月に販売されたDGのモーツァルトオペラの全集にも含まれていたようですが、何せDVD33枚組という代物。おいそれとは手が出せません。
そんな折、オペラファンには最高の贈り物だったのではないでしょうか。
『ザルツブルク音楽祭2006』
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」
<出演>
■アルマヴィーヴァ伯爵:ボー・スコウフス
■伯爵夫人:ドロテア・レシュマン
■フィガロ:イルデブランド・ダルカンジェロ
■スザンナ:アンナ・ネトレプコ
■ケルビーノ:クリスティーネ・シェーファー
■マルチェリーナ:マリー・マクロクリン
■バルトロ:フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ
■バルバリーナ:エヴァ・リーバウ ほか
<合唱 >:ウィーン国立歌劇場合唱団
<管弦楽>:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮>:ニコラウス・アーノンクール
<演 出>クラウス・グート
<収録>2006年7月 ザルツブルク音楽祭より モーツァルト劇場
前置きが長くなりましたが、さすがに刺激的な上演でした。
私は気がついたら3回位観ていました。
もちろん、食事時間等に1~2幕ずつこま切れで観たものを含んでのことですが、3回も観たということは、それだけ魅力的だったということでしょう。
アーノンクールの序曲は、とにかく遅い!
しかし決して重々しくはなく、不思議な軽さと言うのでしょうか、独特の雰囲気があります。加えて、序曲に限りませんが、ウィーンフィルが本当に柔らかくいい味を出していますね。
歌手も粒ぞろいで、アリアもデュエットもアンサンブルも、まったく穴がありませんでした。
ダルカンジェロのフィガロは、10数年前のザルツブルクで、そして昨年ウィーンでも観ることができましたが、プライ亡き後、当代随一のフィガロかも。
とにかく歌も演技も、まさに機知に飛んだフィガロそのものでした。
そして、ネトレプコ。
スザンナにしては少し深い声のような気もしますが、まあ舞台姿が素晴らしい。フィガロだけではなく、伯爵がころっと彼女の魅力に嵌ってしまうのも頷けます。
また、予想外に知的なスザンナだったと言ったら、あまりに失礼でしょうか。(ファンの方、すみません・・・)
スコウフスとレシュマンの伯爵夫妻も成熟した大人の歌唱を聴かせてくれましたし、スザンナ役で評価の高かったマクロクリンがマルチェリーナを歌うなど、脇役も本当にレベルが高かった。
しかし、私が文句なく素晴らしいと思ったのは、クリスティーネ・シェーファー。
どこか危なっかしい中性的な魅力に溢れた、最高に魅力的なケルビーノでした。モーツァルトのイメージどおりのケルビーノじゃないかなぁ。
しかし、これだけ素晴らしい歌を聴きながら、そして、いたるところで感心しながら、「最高のフィガロだった!」とストレートにいえないところがオペラの難しいところ。
それは、ひとえに演出です。
実演を観た人の間でも、賛否両論あったようです。
このステージでは、台本にはない狂言回しの役を演じる天使が登場します。
名前もケルビム。ケルビーノの分身?
ただし、魔笛の3人の童子のような「幸運の天使」的な存在ではありません。
いたずら好きの運命の女神といった風情です。
その結果、「自分で自分が分からない」という、全員がまさにケルビーノ状態に。
本当に面白いけど、これでよかったのかしら。
第4幕の最後は、伯爵の「コンテッサ、ペルドーノ・・・」の後、どんな演出でも一直線にハッピーエンドに向かうのですが、今回の場合はなにやら一筋縄では行きません。
もう一波乱起こそうとするケルビムの動きが、どうしても気になるのです。
また、今回の演出では、歌手を横になって歌わせるシーンが多かった。
にもかかわらず、破綻なく歌いきる歌手達には、心から脱帽です!
それから、スコウフスもレシュマンも、またダルカンジェロも、普段以上に多く汗をかいているようにみえました。
これも少々、ライトが強すぎたのでは・・・。
何やらネガティブなことを書きましたが、上演自体は「最高に刺激的な舞台であり音楽」であったことは、紛れもない事実です。
演出も、しばらくたってもう一度観たら、すんなり溶け込めるかもしれません。
再チャレンジしてみたいと思います。
P.S
今年のザルツブルク音楽祭では、同じグートの演出で再演が予定されていますが、
指揮はアーノンクールに替わってハーディング。
そして、スザンナ役にはなんとダムラウです。
声質的にはダムラウの方が合うように思うので、きっと素敵な舞台になるだろうなぁ。
アーノンクールのフィガロ、素晴らしい演奏でした。
ダルカンジェロのフィガロが良かったです。プライ亡き後、彼こそ最高のフィガロかなと思いました。
ケルビーノもスザンナも素晴らしい出来で楽しめました。
ただ、おっしゃるように演出が・・・・僕にはピンと来ませんでした。普通にやってくれれば良かったのに・・・・。
音楽としては、本当に大満足のフィガロでした。
黒田恭一さんも仰っていましたが、いいキャストですよね。
とくに、ダルカンジェロは、若々しさはそのままに、ますます円熟したフィガロになってきました。
演出は、ちょっと策に溺れたかなあという気がします。
でも、mozart1889さまが同じご意見をもっておられることを知って、なにかほっとしました。(笑)
ありがとうございました。
同じアーノンクールだったらチューリッヒのDVDのほうが素敵でした。歌手はそれぞれにいいんだけれど。
ただ飛びぬけて良かったのが、シェーファーのケルビーノ。やられました。10代のおませな少年のイメージがこんなに決まってるなんて・・・!
でも、買わないだろうなぁ。ラージの映像、ちょっと不自然ですし、先に述べたとおり演出とネトレプコのスザンナが僕の趣味でないもんで。それと、チューリッヒのほうがアーノンクールのやりたいことを全部出しているようですし。
「フィガロ」、なかなか決定的パフォーマンスに巡りあえないですね。
ザルツブルグのフィガロの演出は好みが分かれるようですね。自分としてはあの小うるさい天使のお陰で好きにはなれませんでしたが、いいろいろと試みがあってもいいのかな?とは思いました。
シェーファーの素晴らしさには誰もが納得ですね。同じザルツの「ジョヴァンニ」では塗りたくった化粧が似合わずがっかりしていたのですが(^^;)、ケルビーノでの柔らかく情感に満ちたアリアにはうっとりです。
TBさせていただきました。これからも宜しくお願い致します。
いつもありがとうございます。
IANISさまもご覧になりましたか。
なんだかんだ言いつつ、私は3回も見ましたので、やはり気になった(=強い刺激を受けた)舞台だったんでしょうね。(笑)
全体的には、IANISさまとほとんど同じ感想を持ちました。
>同じアーノンクールだったらチューリッヒのDVDのほうが素敵・・・
やりたいことがより鮮明に出ているのは、確かに10年前のチューリッヒの方ですね。
私はチューリッヒ盤では、悲しみを内に秘めつつ高貴さを漂わせたエヴァ・メイの伯爵夫人が、とくに素晴らしいと思いました。
>シェーファーのケルビーノ。やられました。
全く同感です。私も完全にノックアウトされました(笑)
>「フィガロ」、なかなか決定的パフォーマンスに巡りあえないですね。
確かにそう思います。私が今まで経験した中では、ウィーンで昨年観たムーティのフィガロ、これが最高でした。
オーソドックスなんだけど、素晴らしく生気に富んだ舞台で、キャストもこのザルツブルクに負けないくらい充実していました。
ひとつだけタイムスリップが可能と言われたら、私はこの公演を選ぶと思います。
ようこそおいで下さいました。
私は演出や舞台のことはあまり詳しくないのですが、架空の登場人物が出てくるようなやり方は、あまり好みません。
今回のケルビムはそれなりに面白かったのですが、本当にそれでいいの?という気持ちが最後まで拭えませんでした。
>シェーファーの素晴らしさには誰もが納得ですね。
まさに同感です。安定した演技と歌唱は想像していましたが、こんなにはまり役だったとは・・・。
恐れ入りました。
こちらこそ、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
ありがとうございました。
たまたま、HMVで購入したDVDがこれでした。
皆さんおっしゃっている様に、演出が邪魔なのと、ネトレプコの声質がスザンナにしては重かったですが、
ダルカンジェロのフィガロは良かったですし、ゼーリヒのバルトロも最高でした。
しかし、何と言っても圧巻はクリスティーネ・シェーファーのケルビーノ!!
今まで、僕にとっての最高のケルビーノはエディト・マティスで彼女を越えるケルビーノは現れないと思っていましたが、シェーファーはそれを完全に凌駕しました!
あの歌唱はもはや神の領域。
来年のシェーファー来日が、今から待ち遠しくてたまりません。
コメントありがとうございます。
この公演は、好き嫌いは別にして、やはり歴史に残る舞台だったと思います。
ダルカンジェロのフィガロは、ウィーンでも実際に見ましたが、やはり当代随一でしょうね。
それと、お書き頂いたシェーファー。まさヤンさまのご意見に賛同します。
ただ、私の場合、マティス様の熱狂的な信者なので、並び一位ということでご勘弁ください(笑)
それからまったく余談ですが、この頃のネトレプコは、今と比べると二回りくらいほっそりしていますね。
驚きました。
BS録画をDVD化して何回も視聴したため再生不良になってしまいました。HDDに保存しておけば良かったのですが失念してしまいました。どなたかお持ちでしたらDVDダビングして頂けないでしょうか?
mail: aka-tyan2183@hotmail.co.jp
090-9513-8245