ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

小菅優&ヴェロ/仙台フィル モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595

2007-03-04 | コンサートの感想
昨日、小菅さんのK.595を聴いてきました。
会場は、すみだトリフォニーホール。
「地方都市オーケストラフェスティバル2007」と題するのコンサートの一環で、この日は仙台フィルとの共演でした。
一番安い席だったので、視覚的にはもう一つでしたが、音はなかなか良かった。


演奏前にプレ・コンサート・トークがあって、指揮者のパスカル・ヴェロさんが話をしてくれましたが、とても面白かったです。
まず、冒頭、日本語で「おはようございます・・・」
これは大いに受けました。彼はその日に仕事を始めるときは、時間に関わらず「おはようございます」で通しているとか・・・(笑)
また、「素晴らしい音楽を演奏したあとは、素晴らしい食事で締めくくる」がモットーのようで、親日家のヴェロさんは、ラーメンや鮨もよく食べに行かれるそうです。
私も客席で大きく頷いてしまいました。

さて、最初の曲は「牧神の午後への前奏曲」。
久しぶりにこの曲聴きましたが、やっぱりいい曲ですね。
初めて聴く仙台フィルも素敵なサウンドで演奏してくれましたが、この曲独特の「いつ変わったのか分からないような、微妙な色彩の変化」が、もう少し表にでてくればなお良かったかなぁ。

2曲目が、小菅さんのソロで、モーツァルトのピアノ協奏曲第27番。
モーツァルト最後のピアノ協奏曲にして、死の年にかかれた名作。
華麗なパッセージも、センチメンタルなメロディもありません。
ひたすら「純」な音楽。
全曲を支配するのは、「ド-ミ-ソ-」という、あまりに基本的な和音。
それを埋めるように、浮かんでは消える魅力的なモティーフたち。

ベートーヴェン、ラフマニノフ、チャイコフスキー、モーツァルトの9番・21番といった名コンチェルトで圧倒的な成功を収めてきた小菅さんが、秋の可憐な花にも似たこのK.575で、果たしてどんなアプローチを見せてくれるのか。
大きな期待を持って、演奏を待ちました。

第1楽章冒頭は、ふくよかなバスに支えられてなかなか心地よいスタート。
しかし、直後の合いの手が大きすぎる。もう少しデリケートな表現を聴きたかったところです。
小菅さんのピアノが入ってくると、少し音楽が華やかになります。華やかというよりも、「音楽する喜び」が色濃く出てくるというべきでしょうか。
しかし、21番や9番「ジュノーム」のときとは、音色の使い方も含めて明らかに異なる表現。
彼女の様式感の素晴らしさに、脱帽でした。

第2楽章は、少し早めの表現。
私の好みとしては、もう少し「呟き」のような感じがあっても良かったかも。
しかし、繊細で美しい音楽でした。

フィナーレは、まさに伸びやかで、瑞々しい音楽。
また、眼差しが何か遠くの方を見つめているような印象を受けました。
K.596の「春への憧れ」、あの感じです。
オケでは、とくに弦の音が柔らかくて美しかった。
この楽章が、オケ・ピアノ一体となっていて、最も素晴らしかったなぁ。


やはり小菅さんのコンチェルトは格別のものがあります。
確信が、この日の演奏でさらに深まりました。
後半のサン・サーンスは、残念ながら所用があったので聴けませんでしたが、小菅さんのK.595が聴けたので、とても満足しています。

<日時>2007年3月3日(土)午後6時開演
<会場>すみだトリフォニーホール
<曲目>
■ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
■モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K595
■サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 OP78「オルガン付」
(残念ながら聴けませんでした)
<演奏>
■ピアノ:小菅 優
■指 揮:パスカル・ヴェロ
■管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団


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2 コメント

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27番  (emi)
2007-03-04 21:13:46
こんばんは。
>ひたすら「純」・・。そうですね。
シンプル イズ ベスト のモーツアルトの究極、殺ぎ落との美しさ 惜別の曲。旋律を想像するだけで、涙が出そうになる曲です。若き小菅さんの27番。暗闇に差す希望のようなものをどう表現されたのか。27番は「特別のモーツアルト」だと思っています。ジュノムと小菅さんはベストマッチなので、対極にある27番はいかに・・・?と思っていましたら、回答が・・・(笑)
romaniさんのご期待に応える演奏のようで、よかったです。
今年中に彼女の生演奏を聴きたいと思っています。

楽隊の挨拶というのは、(たぶん芸能界の人たちも)夜中に会っても「おはようございます」らしいです。
この指揮者の場合は日本語は達者なのでしょうか?
>emiさま (romani)
2007-03-04 23:35:23
こんばんは。

いつもありがとうございます。

>27番は「特別のモーツアルト」だと思っています。
まったく同感です。このシンプルでデリケートな音楽をどう彼女が表現してくれるのか、それが一番楽しみでした。

聴いてみると、やはり、彼女のセンスは抜群なんだと思い知らされました。

小菅さんは、4月にソロのリサイタルをするようですし、それ以外にもライスターと共演したりで、なかなか忙しそうです。
私は、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで2回彼女の室内楽を聴きます。
絶対、アタリだと確信しているのですが、果たしてどうなるでしょうか・・・。

>楽隊の挨拶というのは、(たぶん芸能界の人たちも)夜中に会っても「おはようございます」らしいです
えっ、そうなんですか。
なるほど。納得です。
ちなみにヴェロさんの日本語は、「オハヨウゴザイマス」と最後のことば(忘れてしまいました・・・)の二言だけでした。
あまり堪能ではないような気がします。

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