ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ブラームス 「ハイドンの主題による変奏曲」 聴き比べ

2005-06-09 | CDの試聴記
今日は、お客さまの官庁折衝をサポートするため大阪へ日帰り出張しました。
結論は出ませんでしたが、何とかまとまりそうで、内心ほっとしています。
ところで、今日の大阪は死ぬほど暑かった。梅雨を通り越して、「もう夏?」って言いたくなるような蒸し暑さ。いったい何度だったんだろう?
さて、最近無性にブラームスのハイドンバリエーションが聴きたかったので、いいチャンスとばかり4種類ほどIpodに詰め込んでいざ出張へ。

・セル&クリーブランド管弦楽団
・フルトベングラー&ベルリンフィル(1950年)
・ケルテス&ウィーンフィル
・アバド&ベルリンフィル

私の中で、この曲の横綱は長い間セルと決まっていました。
したがって、今日もセル盤で聴こうかとも思ったのですが、いい機会だから他の演奏もいくつか聴いてみようと思った次第です。

<セル盤>
テーマからまるで室内楽かと思わせるような透明度の高い響き。全曲とおしてあいまいな表現や響きはどこにも見当たりません。個別の表現では特に第6変奏が見事。まさにヴィヴァーチェというテンポで爽快に演奏されますが、このテンポで破綻しないホルンはまさに超絶技巧だと思います。
アーティキュレーションも楽譜どおりで完璧に再現されています。しかし何と言ってもこの演奏の最大の素晴らしさは終曲のパッサカリアです。まず主題がチェロとコンバスで奏されますが、1小節遅れで第2ヴァイオリンとヴィオラが登場するときの鮮やかさを聴いてください。極論するとこの2小節だけでセルの偉大さが分かります。そのあと展開される各変奏の表現も見事のひとこと。そして、最後に各テーマが重なって出てくる部分の見通しのよさは、ブルックナーの8番のフィナーレで聴かせてくれたあの名演と一脈通ずるものがあります。
もし不満があるとすれば、録音が今いちなことと、第4変奏や第7変奏の表現がややそっけないと感じることくらいでしょうか。

<アバド盤>
久しぶりに聴きましたが素晴らしい演奏です。セル盤と同様のよさを持ちながら、フレーズひとつひとつがよりしっとり歌いこまれており「ああ、いい音楽だなぁ」と実感させてくれます。
セル盤で少し不満のあった第4変奏・第7変奏も、実に見事に表現されています。音がいいことも魅力です。こんな良い演奏をどうしていままで気にとめなかったんだろう。
世評もいまいちですよね。
でも、たいへんな名演ですよ、これは。セルの横綱も危うしです。

<フルトベングラー盤>
たいへんロマンティックな演奏です。良くも悪しくもフルトベングラーの表現ですね。テーマの終わりの部分は「消え入るように」という楽譜の記載どおりのデリケートな表現ですが、彼は最後の4分休符はいつまでも延ばしたかったのではないでしょうか。私が感銘を受けたのは第4変奏です。テンポをぐっと落として歌わせますが、本当に心にしみわたる素晴らしさです。中間部で、一小節ごとにチェロ・コンバスが下降音型をヴァイオリン・ヴィオラが上昇音型を繰り返す部分がありますが、ここでヴァイオリンとヴィオラが奏でる「ファミソファミレド」の見事なこと。こんな素晴らしい表現は聴いたことがありません。やっぱりフルトベングラーです。
ただ、フィナーレでテンポを大きく変化させるのは、少しやりすぎのようにも感じました。

<ケルテス盤>
本当に瑞々しい演奏です。ケルテス&VPOはきっとお互いに尊敬しあっていたんでしょうね。
とにかく力ずくの部分がないのが素晴らしい。
それとこの演奏はケルテスの最後の録音ですが、終曲パッサカリアが未収録のままケルテスが亡くなってしまったため、パッサカリアは指揮者なしで演奏されています。
驚かされるのは、いわばこのようにつぎはぎで作られたにもかかわらず、改めて聴いてみてパッサカリアがそれまでの部分と全く違和感が感じられないことです。いかにケルテスの音楽がウィーンフィルと一体化していたかという証しですね。
これも私にとって忘れることのできない演奏です。

というわけで、横綱のセル以外にも素晴らしい演奏を再認識できました。
とくに、アバド盤は大発見でした。
でも、何だか最近ブラームスを聴くことが多くなったなぁ。


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8 コメント

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かわいい桂曲ですね (yurikamome122)
2005-06-10 07:58:35
ETUDEさんのエントリーの中では私もセルが良いですねぇ~。私もちょっと聴いてみよう。
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Unknown (リベラ33)
2005-06-10 09:50:41
僕はハイドン変奏曲はあまりいい演奏に出会った印象がなかったのですが先日投稿する為に聴いたサヴァリッシュ/フィラデルフィアoに感銘を受けました。サヴァリッシュという指揮者は実演にも接しているにもかかわらず僕にはイマイチ印象に残らない人だったのですがこの演奏で初めて彼の薫り高い表現を理解できたように思います。ケルテス盤が最後指揮者無しで演奏していたとは知りませんでした。ぜひ聴いてみたいですね。
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TBさせていただきました (よし)
2005-06-10 12:35:18
こんにちは、はじめまして。

私も「ハイドンヴァリエーション」超大好きです。最初に買ったCDです。いわゆる無人島の1曲ですね。アバドの他にベームもなかなかいいですよ。またお邪魔しますね。
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セルのハイドンバリエーション (romani)
2005-06-10 22:29:56
yurikamomeさま

いつもありがとうございます。

セルのバリエーションの扱いは、本当に上手だと思います。ただ、昨日聴いてみてこの演奏音がいまいちでした。もう少し良い音だと思っていたのですが・・・。

この演奏を、もう少し中低音が分厚い音で聴いてみたいです。SACDしかないかなぁ。
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サヴァリッシュ (romani)
2005-06-10 22:41:54
リベラ33さま

いつもありがとうございます。

サバリッシュ盤は未聴ですが、きっとバランスのとれた演奏なんでしょうね。私がクラシック音楽が好きになるキッカケを作ってくれたのは、実は中学の音楽の先生なんです。その先生が授業中に「自分でFMからオープンリールテープに録音したんだ」といってサバリッシュ&N響の未完成を聴かせてくれました。先生の熱い解説とともに聴いたその演奏が、今も忘れられません。
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はじめまして (romani)
2005-06-10 22:56:14
よしさま

ご訪問ありがとうございます。

またTBありがとうございました。

よしさまのブログで、同じ曲・同じ演奏を推薦されていてびっくり致しました。でもお仲間がいてうれしかったです。また、よしさんのブログ、とても楽しく拝見させて頂きました。オーディオのお話なんかも楽しみにしております。今後ともよろしくお願い致します。
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TBありがとうございました (桜桃)
2005-06-10 23:15:56
TBありがとうございました。



でもでも、私のはアホな記事なので、高尚な皆さんのご意見に対してとっても恥ずかしいです。ううう、ついていけないわ(^_^;)

まあ、演奏する側のそれもちょっとしたこぼれ話的な・・・こんなのもありって感じでご容赦を。
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桜桃さん ありがとうございました (romani)
2005-06-10 23:49:26
桜桃さん 

いつもありがとうございます。

>演奏する側のそれもちょっとしたこぼれ話的な・・・こんなのもありって感じ・・・

それがとっても楽しみなんです。是非これからも聞かせてくださいね。よろしくお願い致します。
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