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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

浅川マキがいた頃

2011-02-07 01:16:50 | 想い出を掘り起こす
 友人のBEEさんからお借りした「浅川マキがいた頃」というDVDを観ました。
 肉体労働者の弁当箱ほどもあるエイト・トラックのカセットで、自宅と職場の往復の車の中、繰り返し彼女の歌を聴いていたのはもう40年ほど前でしょうか。
 
 その頃の彼女は専ら寺山修司の詩を歌っていました。幾分、ファドに近い雰囲気があったと思います。それから、次第にジャジィなものになったように思います。
 このDVDは後期の映像が中心で、もう少し彼女の歌をじっくり聴きたいなという欲求不満は多少残りますが、それをバックの演奏のすばらしさがカバーしています。

          
            これはネットから 割合初期の頃の彼女

 いろいろなシーンが出てきますから、次はなんだろうという思っていたらどうも見たことがある男が出てきました。シーン9「夜 見知らぬ男 マキ」です。
 慌ててライナー・ノートを見たら、果たせるかな柄谷行人氏でした。
 正直いって、さほどかっこいいとは思えませんでした。
 ついでですが、このシーンのバックの弦楽四重奏はなかなかのものですし、その後のシーン10のチェロ・ソロも面白く聴けました。
 
 その他のシーンでのカルテットやクインテットの演奏ももちろん素敵です。ワン・フレーズを歌い終えて、演奏者たちの真ん中で煙草をくゆらせながらその演奏を聴く浅川マキの表情は素敵です。

 このDVDには特別映像として生前最後のライブ、2009年12月末の新宿PIT INNでの映像が収録されていますが、厳密に言うとこれは誤りです。
 彼女の最後のライブは明けて2010年1月16日の名古屋の jazz inn LOVELYのものです。このライブは16日、17日の2日間の予定でしたが、17日には会場に現れることなくホテルの一室で亡くなっているのが確認されたのです。

        
        一昨年、1月17日の jazz inn LOVELYの会場にて(六の撮影)

 なぜそんな日時に詳しいのかというと、ちょうどその一年前、2009年の1月17日、同じく名古屋の jazz inn LOVELYでのライブで、私はこのDVDを貸してくれたBEEさんと一緒にその場にいたからです。亡くなったのはちょうどその一年後ということになります。
 その折、私と彼女は割合ステージ近くにいて、彼女がライブ中にたて続けに吸うたばこの煙が流れてくる距離にいました。
 
 近年、煙草は白眼視されていますが、そして私自身がやめてからもう30年以上にもなりますが、浅川マキというと煙草とは切り離すことが出来ないイメージがあり(このDVDでも、彼女を始め登場人物の喫煙シーンが過剰なほどに出てきます。たぶん、意識的にだと思いますが)、そのときはどんなに煙が流れて来ようが構わないと思ったものでした。

 1960年代に始まった一つの時代、それは私の時代でもあるのですが、そこへ一つの区切りが挿入されたように感じました。

コメント
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