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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

鳥を招く 鳥を殺す

2008-03-27 01:46:04 | よしなしごと
 少し前の日記に、キジバトの営巣を誘うためにベランダにクラッカー(賞味期限切れの!)を撒く工作をしたと書きました。
 そして、それがなくなってはいたものの、果たしてどなたが召し上がったのかは分からないと書きました。
 しかし、気長に続けた三日目、その正体が判明致しました。
 それが以下に掲げる写真です。

 
         こんにちは 誰もいませんか


 すぐ分かりますよね。そうです、ヒヨドリだったのです。
 このヒヨドリ、もともとは山野に住み、渡りをする鳥だったのですが、今では都市郊外から都心地まで、どこででも見られるようになりました。
 ただし、一部のものたちは渡りをしているようで、伊良湖岬で渡りに備えているヒヨドリの群に、鷹の仲間が突っ込んで狩りをする映像をTVで見たことがあります。
 このヒヨドリ、私の家の近くの鎮守の森に集団で営巣しているようで、その近くへゆくと姦しく叫びたてます。
 朝夕は近くのTVアンテナなどに陣取り、縄張りを謳歌する美しいさえずりを聞かせてくれます。その他、結構多様な鳴き声の持ち主です。

 
       しめしめ、どうやら誰もいないみたいだな

 しかし、このヒヨドリ、その評判はあまり芳しくはありません。容姿がいまいちなのと、強い自己主張で他の鳥を追っ払ったり、集団で果樹や農作物に被害を与えたりするからです。ところによっては害鳥駆除の対象にもなっているようです。
 私の家でも、桜ん坊や枇杷の実などがやられます。
 それにもかかわらず、私はこの鳥を憎めないのです。
 私の中にはこの鳥をよく知らない頃に刷り込まれた二つのイメージがあります。それらはいずれも半世紀以上前の少年の日に発するものなのですが・・。

 
          では、いただくとするか

 そのひとつは、小学校の高学年から中学時代にかけて少年雑誌への投稿魔であった私が、ある文章で全国での準優秀賞に選ばれ、その時の景品として貰った少年少女小説の六点セットに起因します。そのセットの中にあった、吉川英治の『ひよどり草紙』という物語に痛く感動したのです。
 余談ですがこの小説、後に(1954年)美空ひばりと中村錦之助(後の萬屋錦之介 これが映画初登場)の出演によって映画化されました。。

 もうひとつは、やはり、当時の講談本で読んだ源義経の物語の中で、一ノ谷の合戦における「ひよどり越え」の決断に対し、判官贔屓のわたしはとても共感を覚えたからです。そうです、あの「鹿も四つ足、馬も四つ足」の奇襲攻撃の話です。
 この二つのイメージが、私のヒヨドリに対する原風景・原印象を構成しているのです。

 
     んめぇ!え?賞味期限?そんなこたぁ知らんもんね
 
 長じて、実際のヒヨドリを知るにつけ、しかもそれが、どこにでもいる比較的凡庸な鳥であることを知るにつけ、幾分その好感度は後退したものの、少年期の刷り込みは大きく、今なお判官贔屓ならぬヒヨドリ贔屓なのです。

 写真のヒヨドリ君、味を占めたのか翌日にも現れました。
 ガラス越しですが、わずか2メートル前後のところでそれを観察できるのは楽しいことです。
 そしてその悪評にもかかわらず、そのしぐさは結構可愛いのです。
 
 でも少し心配です。
 このヒヨドリ君が懐いてしまって頻繁に現れるようになったら、やはり桜ん坊や枇杷は相当の被害を覚悟しなければならないでしょう。
 さあ、今から不要なCDなど掻き集めて、それらの樹の回りにぶら下げる準備でもしなければ・・。

 
     アレッ、何だか怪しげな。誰かが見ているような


などということを書いていた折、少し衝撃的なニュースに接した。
 
 「朝日新聞」の26日付夕刊に依れば、東京都内だけで、年間1万2千羽から1万8千羽のカラスが捕獲され処分されているとのことなのだ。
 確かにカラスのゴミ集積場などでのいたずらは目に余るものがある。
 夜の間に出されたゴミは、彼らの格好の朝ご飯になるのだ。しかも彼らのテーブルマナーはあまりよくない。結果として、狭い路地など通行が困難になるほどのゴミが散乱することとなる。

 しかしである、それは彼らだけのせいであろうか。本来、山野にこそふさわしかったカラスを、都市に呼び寄せたのは人間ではないだろうか。呼び寄せておいて殺戮するというこのいたちごっここそが問題なのではなかろうか。

 ゴミの出し方への工夫などによってそれらの被害は防げるであろうし、またそうすれば彼らの異常な繁殖を防ぐことも出来るのではないか。
 なんとかカラスと共存して行ける方法はないのだろうか。

 単純計算として、全国で東京都の10倍のカラスが処分されているとしたら、10万を越えるカラスが処刑されていることになる。
 私がカラスであったら、かのアウシュビッツを想起するだろう。







コメント
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